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それからの私

空が明るい。今何時だろう。時計を見ると昼が近い。体を起こすと腰のあたりに太い腕が巻き付いてきて、再びベッドに戻される。


「どこへ行くんだ?」

「もう昼が近いわ。起きなきゃ」


私は、夫の頬から顎のラインに生えている無精髭をさする。チクチクしている感触がおもしろい。男だった時代の私も生やしてたのかしら?今じゃ全く思い出せないけど。


「今日は休みだからゆっくりしようって決めたろ」

「十分ゆっくり寝たわ。お腹空いたでしょ。ご飯の支度するわね」

「ご飯よりアンリがいい、アンリをもっと味わいたい」


そういって、さらに夫が強く抱きしめてくる。昨日は、お互いに裸のまま寝たので、夫の固い胸板から、心臓の鼓動が直に伝わる。


結局いつもこうなる。平日は、言葉が慣れるまで一人で出掛けない方がいいと言われているので、休日に一緒に出掛けようとしても、結局2人でベッドにいる時間が長くなり、出掛けるような時間や体力がなくなってしまうのだ。

買い物も、夫の実家が懇意にしている商店から御用聞きにきてくれるので、買いに行かなくて済むし、夫も要るものがあればすぐに買いにいってくれるので困らず、日中は語学の勉強や、夫の勧めで始め、趣味になった手芸に費やしている。


来たばかりの頃は、語学学校に入ろうと夫と見学に行った事があったが、驚いた事に、そこにオリバーがいたのだ。聞くと、語学留学に来ていると言う。

帰宅後、夫は口数が少なくなり、その後も、学校の申し込みの話をする度に、待つように言われるだけだった。

見学から半月程たった頃、私の語学の家庭教師だと言って、夫が年配の女性を連れて来た。夫が言うには、語学学校のカリキュラムを調べたら、初心者には難しそうだから、家庭教師がいいだろうとの事。家庭教師なら、今後私が妊娠や出産をしても、色々融通が効くだろうから安心だとも言っていた。

そうこうしているから、私は隣国の町をまだよく知らないままでいる。


※※


「今寝たところよ」


語学の上達を披露する場所もないまま、私は母になった。母がいない私は、産前から夫の実家にお世話になっている。週末になると、夫が泊まりに来てくいるので、息子に会う時間が増えて、お義母さんも嬉しそうだ。

ベビーベットに眠る我が子を夫と2人で眺める。


「この子がずっとお腹に入っていたなんてな。そうだ、アンリ、今のうちに寝ておいで」

「ありがとう。そうするわ」


そうして、私はベットに横になり、眠りにつく。


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