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乗り合い馬車に乗り、俺とロクさんは湖に向かう。並んで座ると、やっぱり上司の事ばかり思い出す。こうして2人でタクシーに乗っていた時に事故したはずだ。俺の魂がここにあるのなら、俺は死んだんだろう。じゃあ上司は?どうなったんだろう。俺みたいに、ロクさんの中身が上司とかはないんだろうか?

そう思い、ロクさんの顔を見上げると、俺の視線に気づいたのか、ニコッと笑顔を向けてくれる。ロクさんの笑顔が素敵過ぎて、つい、俺はうつむいてしまった。


事故の時も、こうして2人で並んで座っていたら、上司が俺の手を急に握ってきた。上司の方を見ると、顔はずっと窓の方を向けていた。でも手だけは俺の手をずっと握っていた。


今度は俺から…


ロクさんがビクッとする気配を感じたが、俺は顔を下に向けたままだ。ロクさんも何も言わないが、繋いだ手を指に絡ませるような繋ぎかたに変えてくる。俺たちは、湖に着くまで、ずっと指を絡ませていた。


湖についてからも、ロクさんは何も言わない。2人で手を繋いで歩く。家族連れも多く、人々の喋り声で、賑やかなはずなのに、俺にはロクさんと2人きりの環境に思えてくる。どうしてなんだろう。緊張している。


「アンリ、あそこに座らない?」


ロクさんが、木を指さす。俺達は木の下にに行き、持参した布を敷く。


「天気が良いから、気持ちいいな」


ロクさんが、布の上に仰向けに寝転がる。俺もその橫で同じように寝転がる。目をつむると、風の気持ち良さを感じる。目を開け、顔だけロクさんに向けると、ロクさんはこちらをずっと見ていた。


私だけを見てくれて、逃がそうとはしないようなこの目…あの時もあの人はこんな目をしてた…

気がつくと、私は自分からロクさんに口づけしていた。触れるだけの口づけ。すると今度はロクさんの方から口づけをしてくる。角度を変えて何度も何度も何度も。口づけが好きなのは変わらないのね。目をつむって、ロクさんの唇の感触を感じ幸せな気分に浸っていると、頭の中に男の人が出てくる。誰?愛?愛でしょ?愛の上に体が浮かんでいるような男の人がいて、愛を上に引っ張りあげようとしている。愛もその人が好きなんだってすぐわかった。2人は一緒に上に浮かび上がる。ああ良かったね、これからもずっと一緒で。すると2人は私に笑って手を振り、消えていった。


「あっ」

「どうした?」


私は起き上がり、湖を見つめる。


「うん、…ちょっと人目もあるしね」

「そうだな。続きはいつでもできるしな」


ロクさんも起き上がり、乱れた前髪を片手でかき上げてから湖を見つめる。


「そうだ、アンリ。馬車の時から気になっていたんだが、この指輪は?」


ロクさんが私の小指の指輪をなぞりながら聞いてくる。


「もらったのよ。おまじないの力があるらしいの」

「誰にもらったんだ?」

「弟の友達よ。その子もしてたわ。恋のおまじないなんだって。もう叶ったから効き目が早いのね」


私の小指からロクさんが指輪をはずす。表情が険しい。


「叶ったなら、もう処分した方がいい。いいね。俺にもっといいのをプレゼントさせて。」


ロクさんの圧に驚きながら、私はうなづくしかできなかった。ロクさんは、湖に向けて、外した指輪を投げていた。

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