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決意

「アンリ!沸騰してる!」

「え!?」


気がつくと、鍋が勢いよく蓋を押し上げている。慌てて火を止めた。


「アンリ、何かあった?帰って来てから、ずっとぼうっとしてるよ」


ダニエルが心配そうに聞いてきた。ロクさんの笑顔を見てから、なぜか急に上司の事を思い出し、帰宅してからもずっと上司の事を考えていた。


「意外とロクさんの宿まで距離あってね。何だか疲れたのかも」

「明日、湖行くんだろ、早く寝た方がいいよ」

「ダニエルも行ったらいいのに」

「アンリのデートだろ?何で付いてくの?」

「デートだなんて、そんなんじゃないし」

「いいじゃんデートで。泊まって帰っても、俺は何も言わないよ」

「やめてよ」


デートじゃないと自分の心にいい聞かすが、無理がある。ロクさんは俺の事が好きだ。俺も…。


俺は気づいた。俺は上司にキスされて本当は嫌じゃなかった。本当に嫌なら、食事なんていくらでも断れたはずだ。残業だって、どこかで上司と食事に行くのをわかっていて、心の奥で期待していから文句も言わずにしていた。俺も寂しかったから、上司に寂しさをうめて欲しかった。上司と抱きあっても嫌じゃなかった。男の体なのに求めてくれて嬉しかった。愛だったのか聞かれたらわからない。お互い、ただの性欲の発散だったのかもしれない。前の人生で、流されるまま自分の気持ちに蓋をして見て見ぬふりしていたから、今回はやり直しをさせられているんだろうか。性欲から始まる恋愛もありだと今は思う。スザンナの事だって、女同士なのと、明らかにこちらに気がないのがわかっていたから一歩引いていたが、もしスザンナが俺に気があったなら、前の人生みたいに同性だからと自分の気持ちを無視していたんだろうか?

俺は誰の人生を生きてるんだろう。自分の人生なのに他人事?俺は何がしたい?恋愛だろ。俺は自分の人生を生きないと…そうしないと人生意外と短い。やりたいことやれずに死ぬのはもう嫌だ。

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