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2/6

女の子だった

「あれえ?アンリ、今日1日中寝てた?大丈夫?ご飯食べた?朝の残りのパンがあるから食べる?」


夕方近く、気がつくと、ダニエルが俺の顔を覗き込んで聞いてきた。


「大丈夫。何か疲れがたまってたみたいで」

俺は、ダニエルに微笑んで言う。


あれから、アンリの記憶がよみがえってきた。俺はアンリとして生まれて、18年の記憶もある。でも男だった時の記憶もある。

もしかしたら、タクシー事故で死んだ俺はアンリとして生まれ変わっていたのかもしれないし、並行世界のアンリとして生きていた自分になったのかもしれない。ただ、考えても何かが変わるわけでない。


「あっ!」

ダニエルが急に叫ぶ。


「ヤバい、帽子忘れた!どうしよう。ミカちゃんと公園で話してて、暑いから脱いで置きっぱなしだった!どうしよう。」


アホラシ。帽子くらい取りに行けよ。どうもこうもないだろう。


「パパが買ってくれたやつなのに…とられてないかな…」


「…ダニエル、まず公園に行ってきなさい。それでもなかったら、警備隊に行きなさい」


俺は少しイラつきながら言う。


「うん。行ってくる!」


ダニエルは慌てながら家を飛び出して行った。


それにしても、ミカちゃんはダニエルでいいのか?確かにダニエルは背も16にしては高めだし、顔も優男だし、見た目的にはいいけど昔から「アンリ~、どうしよう~」って俺に泣きついてくるような頼りない男だぜ。俺の方がいい男なのにな。

ダニエルの学校の友達の方がよほどしっかりした感じのイケメンいたのにな。ミカちゃん、よっぽど出会いなかったんかな。


ベッドから起き、簡単に着替えて夕食の準備も終わり、ダニエルを待つが、帰って来ない。迎えに行こうか考えていると、ダニエルが帰って来た。


「アンリ~遅くなってごめんね。公園に行って帽子あったから帰ろうとしたら、友達に会って話してた。そしたら遅くなった。本当にごめんね。」


「いいよ。帽子あって良かったね。友達って誰?」


「オリバーだよ。花祭りの話してたら遅くなった。」


「そうだ。ダニエル、店に友達連れて来ないでよ。店先で騒がしいって、若旦那にも注意されたんだから」


「えー、だってえ、皆がダニエルの姉ちゃん見たいって言い出したから。」


そうなのだ。勤め先の商店に、ダニエルが友達5人くらいと冷やかしで来たついでに、友達達が、代わる代わる俺に色々話しかけてきて、仕事の手も止められるわ、若旦那にも睨まれて、後から注意されて困ったのだ。


「でも皆、アンリの事、可愛い~って言ってたよ。オリバーが一番言ってたよ」


男に好かれても嬉しくねえよ。まあでも、嫌われるよりはいいかもしれないが。


両親が亡くなって一年。俺と、ダニエルは両親と暮らした家を引き払って、ダニエルの通う学校近くのアパートの二階を、借りて暮らしている。両親が残してくれた蓄えもあり、2人ならこうして質素には暮らしていけている。俺は父親の弟が仕事で付き合いのあった商店に紹介してもらい、働かせてもらっている。

ダニエルは、抜けている性格だが、そのおかげか友達が出来やすいようで、友達と楽しそうにしている。


夕食後、湯浴みを済ませ、壁の鏡を見る。くすんではいるが、金髪で、茶色い目。そうだった。アンリって、こんな顔してたわ。

美人でないけど、可愛いい感じで、多分刺さる奴には刺さる顔だよなと冷静に分析する。若くて、可愛い子がいるのに、それが自分自身なんて、ついてない。


俺もいつか結婚しなきゃいけないんだろか。

相手は男だよな。いくら芸能人クラスのイケメンでも男は無理だわ~。ないわ~。

ミカちゃんと付き合えるダニエルがうらやましい。

俺は鏡に向かってため息をついた。

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