堅苦しい男
「だからあ、ロクさんの喋り方、堅苦しいんですよ」
「それはランスにも言われる。この国の言葉を教えてくれた人がどうも堅物で、今だにその影響が大きいようだ」
「じゃあ、私がくだけて話すんで、ロクさんもくだけて下さいね。堅苦しい男はモテませんからね。上手くいけばロクさんがこの国で恋人つくるチャンスになりますよ。ランスさんに負けないよう頑張って下さいね!」
「それは頑張らねば」
「ほら固い!早速固いんだから」
そう言いながら、俺とロクさんは笑いあった。あれから俺とロクさんは、ロクさんが行きたがっていた店に来ていた。ロクさんのおごりなので、食べたいものを注文する。どうせ燐国の旅人だしと思うと気楽に接する事ができるし、ロクさんは堅苦しいのは喋り方だけで、話やすいし、ロクさんと話すのは結構楽しかった。男同士だからか?
「やめてよお!私の事、ランスさん狙いと思ってたわけ?」
「ああ、やたらとランスに話かけていたろ?初めはそうかと思っていた。ランスはあの見た目だから、今までもそういう事がよくあったし」
そうか、人からみたら俺は女だし、そうなるわな。
「今でもランスさん狙いに見える?」
「いや、ランス狙いと思ったのは初めだけで、途中からはよく分からなくなってきて、気になったんだ。なぜか分からないけど気になった。だから君を追いかけたんだ」
俺だって分からない。自分の感情が分からなくなっていたんだ。
「…ロクさん、いい人だね。この国で騙されないようにね。」
「…君になら…騙されてもいいかもしれないな」
「もう!冗談まで古くさい言い方になってる」
俺は笑いながら言うが、なぜかロクさんは笑ってはくれず、真顔だった。少し気まずくなり、俺はジュースをすする。
ロクさん、もしかして女性と食事して舞い上がってんのかな?そういやあ俺は若くて可愛いかったんだった。ランスと一緒じゃ、全部ランスにもっていかれてただろうしな。
「ロクさんは国に彼女とかいないの?それか結婚してるとか?」
「恋人も妻もいない。君もいないなら俺たち付き合うのもいいんじゃないか?俺は君の事を好ましく思うし、君からも好かれたい」
ロクさんの声のトーンからして真面目に言っている。冗談で返せないパターンだ。
「でも国に帰るんでしょ。なかなか会えないじゃない」
「隣の国といっても、ここからなら船で1日もかからないし、不安なら結婚を前提はどう?必ず迎えに来る。俺は高級役人だから生活に困ることはないし、次男だからいいとは思うんだ。身分証も見る?」
「今日会ったばかりの女性に求婚するもんじゃないわ。私が悪いやつかもしれないでしょ」
「君になら騙されてもいいよ」
ロクさん、どうしたんだろう。正気を失ってるんだろうか、それともランスに対抗してんだろうか。
でもスザンナと結婚できないならロクさんの国で暮らすのもいいかもしれない。
でもまてよ、男に体触られたりするのは大丈夫か?俺?
「ロクさん、手貸して」
ロクさんは不思議そうな顔をして右手を出した。俺はロクさんの出された右手を握る。
「…えっと?これは何?握手?求婚を受け入れてくれたという事?」
ロクさんは戸惑っているが、俺は無視した。
ロクさんに触れてトキメキもないが嫌悪感はない。
次だ。
「ロクさん、店を出たら2人で歩かない?」




