第八話:身の上話
ハイク様はまず、自分の身の上について語り始めた。
「まず、僕の名前はハイク・マクラーレンです。オークは人間と違って誕生した日を残す風習がないので、正確な年齢はわかりませんが、おそらく二十代前半あたりだと思われます」
年上だった。てっきり年下か同い年くらいだと思っていた。少し上から目線で話をしていた自分が恥ずかしくなりつつ、話を聞く。
「父の6番目の子で、母違いの兄が5人。同じ母の子の妹アイネ・マクラーレンが1人います。僕と妹の母は、人間族でした」
オークにしては人に近い見た目をしている理由はそこかと私は思った。
「そうでしたか! お母様はどこに?」
少しハイクさまは言い淀んでから、
「母は僕が小さい頃に死別しました。」
と言った。しまったという顔が出てしまっていたのか、ハイク様は慌ててこう続けた。
「大丈夫です! もうだいぶ昔の話ですから。それにオークは戦の民だったので、死は名誉あるものとして解釈されています。母は女として立派にオークという人種の中で、僕と妹を守り育てるという戦をしました。だから母を僕は尊敬しています」
「素敵な方だったんですね」
「はい。とても」
どこか誇らしげな表情で、ハイク様はそう言い切った。
「妹のアイネはおそらくヴァージニア様と同じ歳で、すでに結婚をしています。妹は遠方のオーク国に嫁いでいます」
「どんな方なんですか?」
「優しい子です。オークの中では小柄な方ですが、絶対に諦めない心をもつ強い子です。兄として誇らしいです。いつか会えるように段取りを決めておきます」
「期待しています」
「はい。妹も半分人間族なので、気が合うかとおもいます。それとヴァージニア様、一つ説明しないといけないことがあります」
改まった表情で、ハイク様は私を見た。