第四話:思っていたより、、、
(思っていたより酷くはないな)
それがハイク様と出会った時の最初の印象だった。
オークといえば、巨大な図体、猪のような顔に口から生えた牙、野蛮な性格でデリカシーはゼロ。というイメージが人間界では定着していた。
だけど、ハイク様は違った。
3~5メートル程度の身長が基本のオークの中では小柄。でも筋肉質な180cm程度の身長。牙は犬歯が少し伸びた程度の控えめなサイズ、猪より人間に近い見た目で、オークには珍しく髪が生えていて目が隠れている。
体つきは普通の人間に近くて、オーク要素があまり見られない。こういうオークもいるんだなあという印象を受けた。
「は、はずめますて、ハイク・マクラーレン、です」
カタコトながらも、私の母語、王立語で挨拶をしたのは地味にポイントが高い。
相手の文化に対して理解と敬意を払っているのがわかる。
私はまず笑顔で感謝をしたあと、ハイクのオーク語で挨拶を返した。
ハイク様は驚きと喜びが混在した表情で私を見た。
「す、すごいですね。すごく、オーク語、うまいです!」
そう言ってはしゃぐハイク様をみて、今まで感じていた毒気というか、苛立ちが、なぜか少し和らいだ。ある程度王立語が理解できているみたいなので、聞き取りやすいよう、ゆっくり王国語で話してみることにした。
「初めまして、ヴァージニア・レッドロータスです」
「は、はじめますて、ハイク・マクラーレン、です。ヴァ、ヴァージ、、」
「ジニーでいいですよ。ハイク様」
「あ、ありがと、ございます。えっと、ジニー様。ボクの王立語、通じてもすか?」
「ええ、王立語は難しいのに、気を遣ってくれて、ありがとうございます」
「じ、実は、このはなしが決まってから、頑張っておぼえてもす」
勅令があったのは2日前。それでここまで会話が成立するレベルまで学習できた。普通の人族でも、別民族ならこのレベルに行くまでは数週間はかかるはずだ。
オークは賢くないという認識は改めないとなと私は思った。特に私の母語である王立語は、彼の母語であるオーク語と文法が大きく違う。努力家なんだなと思った。ただ、一つ、気にになることがこの後あった。