第二話:八つ当たられる
私に婚約希望をしてきた男どもは多い。数十人はいる。皆、名門の優秀なご子息どもであった。まあ私に比べて多少マシなスペックではあった。だから私としても満更ではないという気持ちではあったが、おかしいことが起きた。
私に婚約希望を出した男どもが、次々と、しかも全員没落したのだ。
理由はさまざまではあるが、家の不祥事が発覚して貴族の権利を剥奪されたとか、大舞台でヘマをこいて地方に左遷されたりとか、仕事でトチって出世街道から転がり落ちたとか、まあそういう類のものである。私は関係ない。一切ない。はずだった。
だが、彼らはそう思っていないらしく、矛先がこちらに向いた。
そしていま、やっと冒頭に戻るが、今こうやって八つ当たりにも等しいめんどくせぇ抗議活動を受けている。
「「ヴァージニア・レッドロータスをゆるすなー!!!!!!」」
「「ゆるすなー!!!!!!!」」
「「我々は被害者である!!!! 謝罪を要求するー!!!!!!!」」
「「要求するーーー!!!!!!!!!」」
全くの八つ当たり。大好きな読書に当てていたこの時間が台無しである。
「は? しらんのだが? てめえのけつはてめえでふけやクソどもがですわ」
とかましたいところだが、現実はまあ流石にそこまで淑女の身としては言えない。それにそこそこいいとことのおぼっちゃま達なので、むげに扱うわけにはいかない。
私は心の中にいる猫を撫でる妄想をしながら、このおぼっちゃま達の言葉に申し訳なさそうに見える表情を浮かべながら、心の中で舌打ちをした。
早くおわんねーかなこの時間。1時間ほど経って、おぼっちゃま達が慣れない大声出して疲れた顔をしはじめて、
(お、やっとうるさい駄犬どもが泣き止むな)
と思っていたところ、被害者の会の一人、一応王族の第8皇子であるリチャード・何たらかんたら(わすれた)・うんともすんとも(忘れた)・ハイデンベルグ皇子が、なにやら重厚で高級感あふれる手紙を私の従者に手渡した。
次回も夜の8時ごろに投稿予定です。