78.終わらない世界とはじまり
それは高校の入学式の次の日の事だった。優人は一人、高校へと歩いていた。
友達はまだできていない。けれどもいつかできるだろうとなんとなく思っていた。
優人は、ゲームや漫画、アニメが好きな、いわゆるオタク。けれども、そういった二次元と呼ばれる世界を好きな人も、中学時代の優人の周りには多くて何人かとは仲良くなった。だから高校でもそうだろうと、優人は楽観的に構えていた。
どうやら20 年ほど前は、そういったオタク文化に否定的な人が多かったらしい。その時代に生きていたら、自分はどんなふうに過ごしていたのだろうかと、優人はたまに思う。
と、優人はなんとなく顔を上げた。目に入ったのは、同じ制服を着た女子高生。一つにまとめ上げた黒いストレートの髪を揺らしながら歩いていた。
その後姿は、見たことがないはずだった。けれどもどうしてか、優人には見覚えがあった。そして一つのことを思い出した瞬間、優人は思わず駆け出した。
どうしてずっと忘れていたのだろうか。いや、きっと神様が隠したのだろう。だって、覚えていれば幼い頃から必死に探しただろうから。そして、目の前を歩く彼女も同じ事をしただろうから。
「セレス!」
優人は目の前を歩く彼女に、そう叫んだ。本来、日本にはいるはずのない名前。いや、ゼロではないだろうが、珍しい名前であるにも関わらず、目の前を歩く彼女は振り向いた。
そして、大きく目を見開き、優人の元に駆け出した。
「優人……! 優人よね……!?」
「うん。俺は優人。前世で、一緒にセレスと旅をした」
優人がそう言えば、セレスは目に涙を滲ませ優人を見る。見た目は何もかも違うのに、どうしてか何度も見たことがある姿にしか思えなかった。
「ごめんな。見つけるのが遅くなって」
「私こそ……! でも、優人を守れない体になってしまったわ……」
そう言って、セレスは自分の体を見る。ここは、剣も魔法もない世界。そしてセレスは、普通の女子高生だった。
「何言ってんの。それは俺も同じ。それに、言っただろ? どんなセレスでも大好きだって」
「そうね……! 私もどんな優人でも大好きよ。それに、もう離さないわ」
「あはは。お手柔らかに」
ここは、終わりのない平凡な世界。そんな世界で、二人は見つめ合い、微笑みあった。




