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71.許せることと許せないこと

「……俺は、悟と会っていいのかな」


 優人は、ポツリとそう呟いた。

 トルサには、セレニテでの一件で距離を取られていた。もしあの時点でソルの中身が優人だと気付いていたのならば、悟として、ソルではなく優人だから距離を取られた可能性もあった。

 けれども、不安げな優人を見て、カーラは真面目な顔で言った。


「会っていいに決まってるよ! 悟君、優人のこと、とても心配してたもん!」

「心配……? でも、悟は俺の事、避けて……」

「その件に関して、セレス、何か優人に言うことはありませんか?」


 突然レピオスから出てきたセレスの名前に、優人は驚いてセレスを見た。セレスは気まずそうに、優人から目を逸らす。


「セレス……? 悟に何か言った……?」

「えっ、えっと……。あなたのせいで優人が危険な目に合ったって……。あなたは優人の弱点になるから、今すぐ離れてって……、言ったわ……」


 セレスの言葉に、優人は安心してホッと息を吐く。


「そっか。良かった。俺、悟に嫌われたわけじゃなかったんだ……。俺はこの世界でも、人の気持ちなんてわかんないまま傷付けたんだって思ってた……」

「……優人があそこまで傷付くと思ってなかったの。ごめんなさい」


 セレスの言葉に、ふと優人はセレニテでの事を思い出す。確かこのことは、セレスに相談したのではなかっただろうか。その時の事は、初めてセレスに自分の本音をぶちまけた時だから、鮮明に覚えていた。


「……セレスは全部知ってて、俺の話を聞いてたんだな」

「そう……、ね」

「めちゃくちゃ幸せな記憶だったのに、そもそもセレスが仕組んだことだったんだな」

「だって優人が危険な目に合うのが許せなかったから……! ……本当に、ごめんなさい」


 きっとセレスに怒るべきことなのだろう。けれどもどうしても、自分の事を心配して言ってくれたセレスに、怒りきれない自分がいた。だからこそ、冷静に言葉が紡げたのかもしれない。


「……俺、あの時かなりショックだった」

「そう、よね」

「俺、この世界でも駄目な奴なんだって……。もしセレスが心配して言ってくれたなら、正直もっとやり方あったと思う」

「……その通りだわ。ごめんな、さい」


 ああ、だめだと優人は思う。少し涙目になりながら、けれども泣くのを必死にこらえて、少し不安げに自分の服を掴むセレスを見ていると、ちゃんと自分の事が好きなのだと思えてきて、結局全てを許してしまうのだ。


「別に、いいよ。もし仲良いままだったら、また悟を危険な目に合わせてたかもしれないし。俺、そっちの方が嫌だったし」

「許して、くれるの……?」

「その代わり、悟にはちゃんと謝って」


 優人の言葉に、セレスはコクリと頷いた。そんなセレスを確認して、優人はレピオスとカーラの方を見る。


「俺、悟に会いたい」


 本当は、まだ少しだけ悟と会うことが怖かった。けれども、会って話さなければいけないだろう。


 ちゃんと謝ろう。悟の気持ちを無視して、勝手に突っ走ったことに。

 そして、言わなきゃ。勝手に死んだ悟に、俺の思いを。

 きっと、結局、言わなければ伝わらないし相手の気持ちなんてわからないのだと、優人は身に染みて理解した。


「私が呼んできましょう。ソルの故郷のパシオニアで、優人の話はできませんしね」


 そう言って、レピオスは転移魔法を使って悟の元に向かった。

 その間、カーラから自分が生贄にされた後の事を教えてもらった。

 魔王が消えるまでは、セレスから聞いた話と変わりはなかった。魔王が消えた後も、ソルを復活させると言って飛び出したセレスとは連絡が取れないままで、特にセレスが今までしてきたことを知っていたレピオスは嫌な予感がしたらしい。

 けれども、どこにいるかは見当も付かなかったという。せめて誰か見た人はいないかと探し回っているうちに、トルサと会い、そして優人を心配しパニックを起こしたトルサが知るはずもない事を話したことで、レピオスが問い詰め、前世の事を教えてもらったという。


 場所を推測したのも、悟だったらしい。原作で街以外に人が生活できる場所は、そもそも盗賊団関連の場所しかなかった。悟は実際にプレイしていないはずなのに、優人が前世で見せた攻略本のマップを覚えていたらしく、もし閉じ込めるならここだとピンポイントで指定したらしい。

 そしてレピオスとカーラがそこを張っていると、買い物に出かけたセレスの姿を見つけたという。


「凄いな。前世でも悟はめちゃくちゃ賢かったんだ」

「……なんだか嫉妬するわ。前世からの繋がりなんて、私とはないもの。悟さんは、私の知らない優人の事を沢山知ってるのね」

「だからって悟に嫌な事すんなよ。流石に次そんなことしたら、俺、セレスの事嫌いになる」

「……わかってるわよ。それは流石にしないわ」


 不服そうな顔をするセレスを見ながら、それだけはどんな理由があっても許せないだろうと優人は思う。

 今回だって、もし剣や暴力で脅していたら、許せなかった。今回許せたのは、きっと恐らく、悟のあの行動はセレスの言葉がきっかけになったに過ぎない事を、なんとなくわかっているからだった。


 と、二つの光が現れた。瞬間、レピオスと悟が現れる。


「あっ、悟……。その、俺……」

「優人君……! 良かった、無事で……!」


 悟は優人に向かって笑顔を見せた後、どうしてかセレスの方を向いてキッと睨んだ。そうして、セレスの方に詰め寄っていく。


「レピオスさんから全部聞きました! なんで優人君にそんな酷い事したんですか! セレスさんなら優人君を守ってくれると思ってたから、セレスさんに託したのに!」

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