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62.生贄と太陽

 叫んで、けれども何も変わらなくて、けれどもソルの頭は徐々に機能し始めた。思い出すのは、サマエルを死者蘇生したであろう方法。原作では、魔物を生贄に死者蘇生をする事でこのような見た目になっていた。

 自分はべへとレヴィアに殺されたはず。そして先程の二人の会話を考えると、二人が魔物を生贄に自分を死者蘇生したのだろう。


 目的はわからなかった。原作には、こんな展開などなかった。そもそもセレスが自分を死者蘇生していた事すら整理できていないのに、何が起こるかなんて想像できるはずが無かった。

 けれども、今の状況が自分にとって良くない状況であることだけはわかった。なんとか逃げ出さないと。そう思って、ソルは攻撃魔法を放とうと手に力を込めた。


「っ、ああああ!?」


 瞬間、体に電流が走ったような衝撃がソルに走った。座っている事すらできなくて、ソルは地面に伏せる。


「……無駄。魔法、使わせない。その首輪、魔法使ったら、雷の魔法、出る」


 レヴィアに言われてようやく、ソルは自分の首に何かが付いていることを理解した。

 魔法が使えなければ、ただの人だ。転移魔法で逃げる事すら許されない。そもそもセレスから貰った転移魔法を使えない腕輪も付いたままで、自分が逃げないように何重にも対策がされているようでソルは震えた。


「レヴィア! あいつらが来た!」


 と、ベヘがレヴィアにそう言った。


「タイミング、バッチリ。計算通り。でも、私の魔法、血を出せないから、べへ、やって」

「わかった! そろそろやっちゃっていい?」

「大丈夫。でも、殺さないように気を付けて。瀕死なら、使える」

「りょーかい! ロック ショット!」


 その言葉と共に、無数の鋭い岩がソルに降り注いだ。その岩は、逃げる余裕もないソルの体を突き刺す。痛みに頭が狂いそうになり叫ぶ中、霞む視界の奥にセレスの姿が見えた。


「ソル……!」

「セ、レ……、ス……」


 ソルは思わずセレスに助けを求めるように、手を伸ばした。視界に移ったのは、セレスに付けられた腕輪。きっと、この腕輪がなければ、普通の体の時に逃げられただろう。

 けれども、ピンチになった時に助けてくれたのは、いつもセレスだった。だからこそ、今ソルが一番縋りたい相手はセレスだった。

 我ながら、情けない話だと自分でも思ってしまう。けれども、こんな姿になっても、そして自分一人では何もできない情けない自分でも、セレスなら助けてくれるのではないかと期待してしまう。


 けれども、ソルの伸ばした手を、べへは踏みつぶした。


「もう無駄だから! あんた達がどうあがこうと、何も間に合わない!」

「彼から流れる血、緑色。成功。これで生贄に、使える」


 手に感じた別の痛みで、ソルは二人の会話がすぐには理解できなかった。けれどもセレスは理解できたのか、一瞬目を見開いた後、二人に対抗しようと剣を抜き一歩踏み出した。


 その瞬間、セレス達のいる地面が突然波打った。そして底なし沼のように、セレス達の足を取る。けれども抜け出すことは、転移魔法を使えば難しくなかった。レピオスがベヘとレヴィアの正面に転移し、魔法を放つ。


「グレア フラッシュ」

「ウォーター バリア」


 けれども、レヴィアがソルやベヘも囲むように、ドーム状の水のバリアを作った。レピオスの放った眩しい光は水に反射し、逆にレピオス達の視界を防ぐ。その隙に、ベヘが無数の鋭い岩を三人に向かって放った。

 いつものような、ソルによる防御魔法は無かった。一度無防備な状態で受けてしまえば、簡単に体制は崩れ、更に追撃を受けた。レピオスとカーラはその場にしゃがみ込む。


 けれども、セレスだけは違った。セレスが異常に強いのも、一人でサマエルやパズ、レヴィアを倒し、或いは瀕死状態まで追い込み、一人だけレベルが異常に高くなっていたのだろう。傷だらけではあったが、まだ戦える力はあった。

 セレスは一人剣を持ち、二人に向かっていった。


「絶対に、ソルは私が守る……! ソルだけは……! ソルだけは……!」


 けれども、流石のセレスでも二人同時に四天王クラスの二人を相手にすることは難しかった。レヴィアの水の攻撃で動きを制限され、ベヘからの攻撃を剣ではじくのに精一杯だった。


 そんなセレスに追い打ちをかけるように、べへが笑いながらセレスに向かって口を開いた。


「こいつを守るって、そもそもこいつが危険な目にあってんのはあんたのせいじゃん! あんたが教えてくれたんでしょ!? 魔王様の復活には、緑の血の魔族じゃないといけないって!」

「違う……! 私は……!」

「あははっ! どうせあんたは、あたしかレヴィアが生贄になることを狙ってたんだろうけど、残念だったね! あんたがパズを使ってレヴィアを死者蘇生させてくれたから、わざわざあたしやレヴィアが生贄にならなくてもいいってわかったわけ!」


 ようやく、ソルも二人のやりたいことを理解した。確かに、理屈だけ考えればその通りだった。

 魔物を使えば、見た目はどうであれ無限に緑の血を持つ魔族を作ることができる。例え赤い血の人間を死者蘇生しても、魔物を生贄にすれば緑の血の魔族が作れる。そのことは、今、ソル自身から流れる血が緑色だったことから証明されてしまった。

 ああ、自分は魔王の生贄にされようとしているのだと理解した。けれども何もできなかった。抵抗する力など、残っていなかった。


「あんたのせい! 全部全部、あんたのせい! あははっ! でもあんたが言ったんだよ? こいつが何度苦しんで殺されても、生贄にされても、悪だから仕方ないって! だからいいよね!?」

「違う……! ソルは悪じゃない……! ソルはまるで太陽みたいに、私を……! 私の心を……!」


 セレスのその言葉を聞いた瞬間、ソルは体の痛みよりも心の痛みを強く感じた。太陽は、“ソル”の名前の由来でもある、“ソル”の代名詞のようなもの。セレスが愛したのも、“優人”と正反対の太陽という言葉が良く似合う“ソル”。


「ベヘ、準備できた。始める。彼女一人だけだから、防御は任せた」


 気が付けば、レヴィアはソルの真横にいた。レヴィアがソルに触れ、別の魔力がソルに流れる。


 泣き叫ぶ、セレスの声がソルの頭に響いていた。魔力に飲み込まれる前に、ソルはもう一度セレスを見る。


「ごめん」


 ソルはセレスにそう言った。

 ごめんなさい。セレスの好きな“ソル”を守れなくてごめんなさい。“ソル”を奪ってしまってごめんなさい。


 ああでも。全部全部、偽物のソルだったから。セレスが好きな“ソル”ではもういられなかったから。

 だから、今度は、どこかにいる本物の太陽と幸せになってください。


 ソルはそんな事を思いながら、意識を手放した。

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