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60.知らなかった事と知ってしまった事

「なんで……、ここにソルが……」


 セレスはそう呟いた後、セレスの耳に付いていたイヤリングに触れた。そして、ハッとして、ソルの腰あたりに目線を向けた。

 その瞬間、ああ、あれが本当に盗聴器だったのだとソルは思う。けれどもまだ、信じたくない自分がいた。


「なあ、セレス。さっき言ってた事、本当……?」

「えっ、あっ……」

「俺が転移魔法を上手く使えないのも、セレスのせい……?」

「ソ、ソル……! 聞いて……? 私はただ……」


 そう言いながら、セレスはソルに手を伸ばそうとする。けれども、ソルはセレスの手を思わず振り払った。

 怖かった。セレスがセレスじゃない他の誰かに見えた。


「なあ、なんで否定してくれないの……? そんな事してないって……! 俺の勘違いだって……!」


 けれども、セレスは俯くだけで何も言わなかった。そんなセレスに、震えが止まらなくなる。

 と、ソルはセレスの後ろにいたレピオスと目が合う。レピオスは、申し訳なさそうにソルから目を逸らした。

 その瞬間、ああ全て本当なのだとソルは思う。盗聴器を自分に渡したセレスも、転移魔法を使えないようにしたのも。


 一瞬、どうしてレピオスは教えてくれなかったのかと怒りが沸く。何も知らない自分を、どんな風に見ていたのだろうかと。

 けれども、ソルは心の中で首を振った。レピオスを責めるのは違う。レピオスは自分が傷付かないように、セレスを止めようとしてくれていたではないか。


 そう思った瞬間、ソルは少しだけ息ができるようになった。そうだ、ここは『リアンズ』の世界。本来はそんな事をしない、優しくて真面目なキャラだったはず。だから、理由があるはずだ。ちゃんとした理由が。

 そう思って、ソルは恐る恐るセレスを見る。


「な、なあ。せめて、理由を教えてくれないか……? 理由があるんだろ? な……?」


 大丈夫。ソルは自分に言い聞かせる。何か理由があるはずだ。セレスがそうせざるを得なかった理由が。

 きっとそうだ。だって、セレスはずっと自分の事を心配してくれて、優しい言葉をかけてくれて、そんなセレスが理由もなくそんな事をするはずがない。今まであれだけ優しくしてくれたセレスに、理由を聞かずに勝手に拒絶するなんて、あってはならないのだ。

 きっと自分が、セレスに何かしてしまったのだ。だからきっと、自分の悪い所を直せばセレスも辞めてくれるはずだ。


 そう思うしかなかった。だって、思い出すのはセレスとの幸せで温かい時間ばかりなのだから。

 セレスの事が好きだ。恋愛という意味だけではない。人として、とても。だから早く、何も不安に思わない元の関係に戻りたかった。


 けれども、その場にいないはずの声が、入り始めたヒビに言葉の槍を突き刺した。


「そりゃあ、禁術ってあんたらが言ってる術を使ってあんたを生き返らせる程、あんたの事が大好きだからじゃない?」


 振り向けば、ベベがそこにいた。セレスが目にも止まらぬ勢いで、ソルをべへから守るように立ち、べへに剣を向ける。

 ああ、自分も戦わなければいけない。けれども、聞いてしまった事実に、体は動かなかった。


「待って、禁術? 生き返らせる? 誰が、誰を?」


 ずっと、べへがストーリーと違う行動をしているのだと思っていた。けれども、それは違うと以前べへは言った。誰がやったのかわからないまま、宙ぶらりんなはずだった。

 動揺するソルを見て、べへは笑う。


「そっかあ、知らないんだった! 面白いことになりそうだから、ちゃんと教えてあげる! ソル、あんたは一度死んでるの! そして、セレス、あいつが禁術を使って生き返らせた! 他の皆もそうだよ? あんたをまともな姿で生き返らせるために、サマエルもパズもレヴィアも、実験として! だから、サマエルもパズもあいつにすぐ殺されたんだよ? レヴィアはなんとか生きてくれたけど!」

「嘘だ……! セレスがそんな事するわけない……! セレスは……!」


 ソルは必死に否定する。けれども頭では、徐々に全てが繋がり始めていた。

 塔にセレスが剣で風を切る魔法を使ったときのような切り傷があった理由も、べへやレヴィアが禁術の本を得る交渉材料にするために自分だけを狙って襲って来たと理由も。


 ソルはセレスを見た。セレスはべへを睨みながらも、唇を噛んだまま否定はしなかった。レピオスの方を見ても、レピオスは眉間にシワを寄せたまま俯く姿しか見えなかった。

 混乱するソルに向かって、べへは笑う。


「あんたもあんたで馬鹿だよね! 疑問に思わなかったの? あたしがあんたを塔で生き埋めにしてから、目を覚ますまで空白の期間があったこと!」

「だって、回復魔法があるから、それで……」

「あははっ! 回復魔法で回復するなら、どれだけ重症でも1日あれば目を覚ますって! だって体は治ってんだもん! 目を覚まさない理由なんてないでしょ?」


 べへの言葉に、ソルは何も言い返せなかった。確かに、この世界では何日も入院する前世のような病院は聞いたことはなかった。あったとして、レピオスの実家のような診療所程度。


 全ての事が、真実味を帯びていく。確かにおかしいことではなかった。ソルがいつもと違う行動をすれば、キーとなる行動は他のキャラがする事だってあった。

 けれども、セレスはこの世界の主人公であるはずだった。正義のために戦う主人公。けれども現実は、禁術を使い、そして……。


 ソルの心臓は大きく鳴った。自分は一度死んでるという。そして、禁術として生き返らせた。禁術が禁術である理由。それは……。


「な、なあ。俺が生き返るために生贄にしたのって、誰……?」

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