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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
セレスの故郷“ディーネン”にて

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52.一方的と家族

 ディーネンを歩き始めてソルが最初に気付いた違和感は、原作とは違いまだ貧しそうな街の人が多いという事だった。原作では、セレスの貰った報酬も関係して豊かな生活に戻っていた。けれども、今の街は瘴気の影響があった時とまでは言わないが、活気はなかった。


 そんな街をソル達は歩き、一つの屋敷の前で立ち止まった。ここは、ゲームではソルも何度も見たセレスの屋敷。弱小貴族だから小さいという設定ではあったが、それでも一般的な家にしか住んだことのないソルにとっては豪邸だった。

 そんな豪邸の前にきた門衛は、セレスの姿を見ると何も言わずに扉を開けた。どうしてか、門衛はセレスの姿を見るとホッとした顔をしていた。


 そしてソル達は、執事のような少し歳を取った男性にすぐに客間に通された。その執事も、セレスを見た瞬間安心したように涙を見せていた。

 セレスは誰からも歓迎されていて、ソルの目から見てもセレスが心配するような事は何もないようにも見えた。


「セレス……!」


 と、扉が勢い良く開いた。入って来たのは、中年ぐらいの小太りな男性と、綺麗に着飾った女性。恐らくセレスの父親と母親だろう。


「無事だったか……!」

「連絡も無かったから心配したのよ……?」

「……ごめんなさい」

「謝らなくていい! 無事に帰って来てくれた事が一番だ!」


 そう言って、セレスの父親はセレスの肩を優しく叩いた。

 ああ、なんだ。何も心配する事は無かったじゃないか。ソルはそう思う。そもそも、セレスは何を心配していたのだろうか。


 そうソルが思った時だった。


「……ごほん。ところで、その、だな。このタイミングで話すのも申し訳ないが、国からの報奨金とやらはいつ……」

「ごめんなさい。全て使ってしまったわ」

「……は?」


 一瞬、部屋の空気が固まった。誰もが、ソルすらセレスの言葉の意味が理解できなかった。だってセレスが旅に出た目的は、貧しいこの家のため、そして領民の生活を豊かにするためであるはずだった。


 パシン


 と、何かを叩く音が聞こえた。それは、セレスの父親がセレスの頬を叩いた音だった。


「どういう事だ……!? 何に使った……!?」

「……なんでも、いいじゃない。私が稼いだお金よ」

「良いわけがないだろう! なんのために許可したと思っているのだ! これなら何処かの富豪に嫁にでも出した方がマシだった!」


 そう叫ぶセレスの父親の隣で、セレスの母親がセレスに駆け寄る。


「ねえ、どうしてそんな事をしたのか教えてちょうだい。この家の状況を、あなたは一番理解してくれていたじゃない。なのに、どうして……」

「じゃあお母様は、この家のために何をしてくれたの?」


 セレスはギロリとセレスの母親を睨んだ。


「そのドレス、私が旅に出た時は持ってなかったものよね?」

「だって、仕方ないじゃない……。私はセレスちゃんと違ってお裁縫が出来ないのだもの……」

「シレネに関しては、新しいアクセサリーも増えていたわね」

「だってあの子、セレスちゃんと違って我儘でいくら言っても聞かないのだもの……。流石に疲れちゃって……」


 そう言った母親にセレスはため息を付く。そして次は父親を見た。


「お父様も、お金がないと言っている割には、また体が一回り大きくなっているわ。町の人は皆、食べる物も少なくて痩せているのに」

「し、仕方ないだろう! この家の料理はおまえに頼りきりだったのだから、料理人も雇っていない! や、安くで買って済ませようと思うと不健康な料理になるのだ!」

「……誰も、私がいなくなったら私の代わりに頑張ろうという人はいないのね。だから私も、あなた達のためにお金を使う気が起きなかったのよ」


 そう言ってセレスは、セレスの家族から目を逸らす。けれども、セレスの父親はセレスを睨むことを止めなかった。


「何故そんな酷い事を言う! 家族は助け合うべきだろう! それに、普段金を稼いでいるのは私だ! だからお互い様の話だろう! どうして急に冷たい事を言うようになった! もしや一緒に旅をしている奴らに、何か吹き込まれたわけではないだろうな!?」


 セレスの父親は、セレスの後ろにいたソル達三人を一人一人睨む。と、どうしてかその視線はソルで止まった。


「おまえか!? おまえがセレスに何か吹き込んだのか!?」

「……え?」

「とぼけるな! その腰のポケットに付いた……」

「ソルは関係ないわ。余計なこと言わないで」


 そう言って、セレスはソルを庇うように立つ。


「これ以上何か言うと、私も何をするかわからないわ。怪我はしたくないでしょう?」

「なっ……。こんな事なら剣術なんて習わせなければ良かった……。おまえが街を守りたいというから……」


 そうブツブツ呟くセレスの父親から目を逸らし、セレスはソルの手を握りながらレピオスとカーラの方を見た。


「……皆、ごめんなさい。この家を出ましょう」


 セレスの言葉に、二人も頷く。ソルの手を握るセレスの手は、まだ震えていた。


 セレスはその後、近くにいた執事に外まで案内するように告げた。廊下を歩きながら、セレスは執事にだけ聞こえるように、何かを告げた。それを聞いた執事は、少し目に涙を浮かべながら、セレスに深く頭を下げた。

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