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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
レピオスの故郷“セレニテ”にて

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45.お互い様と関係

「セレスは俺といて、嫌じゃないのか?」


 そう言った瞬間、ソルはしまったと思った。こんなの、嫌じゃないと言わせようとしているようなものだ。ただの面倒くさい奴でしかない。

 そう思うソルの手をセレスは握って、真剣な目でソルを見た。


「嫌なんてありえないわ! 私はソルといることが、幸せなの!」


 その言葉に、ソルは泣きそうになる。こんなのソルらしくない。優人の部分を見せてしまえば嫌われてしまう。そんな少し前に散々自分に言い聞かせてきた言葉が、どこか遠くで聞こえた。

 ああ、いつの間にか、ソルにならないと嫌われてしまうという不安がこんなにも小さくなっていた。優人の部分を見せるたびに、ソルらしくない明るくない部分を見せるたびにセレスが優しく受け入れてくれるから、ソルらしく明るく笑っていなくても、こんな面倒くさい所を見せてしまっても、セレスにだけは許されてしまう気がした。


 そんなソルに向かって、セレスはいつものように優しく笑いかける。


「ソル、どうしたの? 何かあった?」


 そんな優しいセレスの声に、ソルは縋りたくなってしまった。


「あの、さ。今朝、トルサに会ったんだけどさ。もう俺と友達でいられないって……。ベヘとの事が怖かったって……。よく考えたらそうだよな。俺と友達になったせいでトルサは危険な目に合って、そんなこと俺は全然考えてなくて……」

「そう……、だったのね……」

「俺、いつもそうなんだ。自分では守れていたつもりで、でも相手が別の事に傷ついてたことには気付けなくて、結局守れてなんかいなくって、一人じゃ何にもできなくて……。誰かの役に立てる人になりたいのに……」


 前世では、迷惑をかけてばかりの人生だった。どうして悟が死んだのかはわからないままだったが、守っていたつもりで守れていなかったことを知った。

 だからせめてこの世界では、誰かにとって必要な存在になりたかった。恩返しだとかなんとか理由を付けていたけれども、本当はこの世界での存在意義を見つけたかっただけなのかもしれない。


「どうしてソルは、そんなに役に立つ人になりたいの?」

「だって、役に立てない俺なんて、いらないだろ?」


 ソルがそう言えば、どうしてかセレスは少し動揺したように瞳が揺れた後、悲しそうに笑った。


「ソルは、役に立つから私と一緒にいるのかしら」

「違う! そんな事は……」

「私もよ? 言ったでしょう? 私はソルといることが幸せなの」


 セレスの言葉を、ソルは素直に飲み込めなかった。そんなはずないと、心の奥で否定する声が聞こえた。


「なんで、そんな俺、セレスに何も……」

「そんな事ないわ。だって、私が一人でなんでもしようと無理してたら、ソルはいつも助けてくれたじゃない。それに、どれだけ救われたか。寧ろ私の方が、返しきれてないぐらいなのよ? だから、ソルにはもっと甘えて欲しいぐらい」


 そんなセレスの言葉に、自分も少しはセレスの助けになれていたのかと安心する。けれども安心した瞬間、前世の優人が安心するなと自分に向かって叫んだ。


 前世でも、悟から自分に虐めのターゲットが移ってから、悟は何もされていないと言っていた。けれどもそれから暫くして、担任の先生から悟が死んだことが告げられた。死因は伏せられていたけれども、真実は噂で簡単に出回った。

 なんで、どうしてと、優人の頭は混乱した。ずっと友達だと思っていた。けれども、何も言ってくれなかった。大丈夫だという悟の言葉を信じて、ただただ安心していた。そして、何も気付けなかった。

 何が悪かったのか、自分のどこがいけなかったのか、何も、何もわからなかった。


 けれども、この世界に転生して、この世界の優しさに安心していた。そして安心して、また繰り返した。今度はトルサの苦しみに気付けなかった。


「ソル……?」


 何も言わずに俯くソルを、セレスは心配そうに見つめた。


「怖いんだ。大丈夫だって安心して、やらかしちゃうんじゃないかって。俺頼りないから、それで甘えちゃったら、また周りの苦しみに気付けなくて皆いなくなっちゃうんじゃないかって。俺、セレスがいなくなるの、嫌だ。俺が甘えたせいで、何も気付けないままいなくなっちゃうの、嫌だ」


 そう言った瞬間、ソルは温かいものに包まれた。それがセレスがソルを抱きしめたからだと、すぐに気付いた。


「どこにも行かないわ。行かない。ずっと、ずっと、そばにいる」


 けれどもソルは、すぐにセレスを抱きしめ返すことができなかった。ずっとそばにいるという言葉を、信じるには怖かった。

 そんなソルを見て、セレスはソルの顔を見るために、少し体を離す。


「そうだ、ソル。逆に考えてみて? 私って、強いでしょう?」


 セレスの言葉の意図は掴めなかった。けれども強いのは事実で、ソルは頷く。


「ねえ、ソル。だからね? 守ってもらわなくても、一緒にいれちゃうの。トルサ君みたいな、ソルが全部守らなきゃ一緒にいれない関係じゃないわ。それでね、支え合って生きていくの」

「支え……、合う……」

「そうよ? あっ、でも今みたいに、辛いことがあったら伝え合うの。ソルが周りの苦しみに気付けないことが不安なように、私だってソルの苦しみに気付けないのは不安なのよ? 勿論、私もちゃんと伝えるわ」

「伝える……、俺も……、ちゃんと……」


 きっと、今の自分はみっともないのだろうとソルは思う。自分は頼りないままで、セレスの強さに支えてもらわなければ何もできなくて、けれどもそれでもどこにも行かないと言ったセレスの言葉に、ソルはどうしようもなく安心してしまった。

 ああ、もし前世の自分を含めてセレスに話したら、セレスはなんて言うのだろうか。呆れるのだろうか。けれども、もし呆れられたとしても……。


「ソル」


 セレスは優しくソルの名前を呼ぶ。


「ソルが以前、どんな私でも大好きだって言ってくれたように、私も、どんなソルでも大好きよ。どんなソルでも側にいる。どこにも行かない。だからね、安心して何でも話して、甘えて、側にいて」

「うん……。ありがと……。俺も……、どんなセレスでも大好きだから……」


 心の中で思った不安を掻き消すような、そして期待してしまった事を証明してくれるようなセレスの言葉に、ソルはどうしようもなく安心してしまって、ソルは縋るようにセレスに抱きついた。

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