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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
カーラの故郷“エフォール”にて

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23.見たいものと協力

「それにしても、なんでわざわざ街の外……」


 ソルはポツリと呟いた。手紙に書いてあったのは、エフォールの街の入り口から少し歩いた場所だった。

 時間は深夜。街から一歩外に出れば、魔王討伐で減ったとはいえ魔物はまだいる少し危険な場所だった。


 けれども、オーディもカーラと比較すれば弱いだけで、一般的に見れば強い方だ。だから、敢えて夜は誰も立ち寄らない場所を選んだのかもしれない。

 ソルは純粋にそんな風に思っていた。


「あー、凄い! ほんとに一人で来たー!」


 その声が背後から聞こえた瞬間、ソルは咄嗟に振り向き爆破魔法を放つ。その魔法を、声の主は地面を起こして壁にしガードする。

 爆破魔法が当たり崩れ落ちていく壁の隙間から見えたのは、べへだった。


「なんで、おまえが……」

「だって、手紙送ったのあたしだもん! まさかほんとに一人で来るなんて思わなかったけどさー」

「は? なんで俺を……。って、言ってる暇なんかねえか。オーバーブラスト!」


 ソルはもう一度、今度は範囲も広く強力な爆破魔法を放つ。けれども再び、べへの使う防御魔法にガードされた。攻撃範囲が広い分少し当たってはいるが、流石に防御魔法を繰り出されたらダメージは僅かだ。


 ソルは、必死に思考を巡らせた。本当はセレス達を呼びに行きたいが、子供たちもいるエフォールを戦場にすることは避けたかった。けれども、ソルの一番得意とする炎魔法ではほとんどダメージが与えられない。ダメージを与えられるのは、爆破系の魔法と、物理攻撃系の魔法だった。


 大丈夫。魔王討伐だけは経験していない分、他のメンバーと差があるかもしれないが、推定レベル的にべへと戦えないわけではないはずだ。


「ロック ショット!」


 べへは、無数の鋭い岩石を生み出しソルに向かって撃つ。それを見て、ソルは転移魔法を発動させた。

 ほんとはゲームでは使うことのない転移魔法の使い方だ。しかもどうしてか、ソルが使う前は誰もそんな使い方をしていなかった。けれども、場所を鮮明にイメージできればという条件ならと、ソルはべへの背後を見ながら自分をそこに転移させる。


「フレイム スピア!」


 ソルは、炎の槍をべへに投げつける。べへは土の壁でガードをしたが、それを貫通し、炎の槍はべへの横腹をかすった。

 けれどもべへは、そんなソルの攻撃を見て笑った。


「凄い! 前より弱くなるとかないんだ! 動きも変わらない!」

「は? 何意味わかんねえこと言ってんだ!」


 ソルの言葉に、べへは驚いた顔を見せる。


「えっ? もしかしてあんた、知らないの? あんた……」

「あなただけは、絶対に許さない」


 ソルの隣を、聞き慣れた声が通り過ぎる。そうして持っている剣を、べへに向かって振り上げた。べへも咄嗟にガードのための壁を出すが、簡単に砕かれ、その衝撃でべへを吹き飛ばす。


 この世界では、属性相性がある程度リアルにある癖に、簡単に剣や拳で岩を砕ける。そうで無いと剣や拳で四天王には勝てないし、ゲームの世界だから仕方ないと言われればそうなのだが、何度見ても凄いなとソルは思う。

 ただ、セレスが来てくれたことに助かったのは事実だった。戦うのであれば自分よりセレスの方が相性的に向いているのは間違いなかった。ソルは攻撃力や防御力のバフをセレスにかけ始める。


 けれどもべへはゲッとした顔でセレスを見た。


「嘘!? もう来たの!? まっ、見たいとこ見れたし、退散、退散!」


 そう言って、べへは砂嵐を起こした。激しい砂と風に、ソルとセレスは視界を奪われる。


「あんた達、足止めしといてね!」


 そんな声と共に、ソルの元に別のうめき声が聞こえた。砂嵐が止み、うめき声の方に振り向けば、多くの魔物が街の中に入ろうとしていた。


「絶対に逃がさない……!」

「セレス!!」


 魔物に気付いていないのか、今にもべへを探しに走り出そうとするセレスの手を、ソルは慌てて握って止める。


「ソル、離して! べへだけは絶対に殺さないと……!」

「その前に村を守らないと! 魔物たちが街に向かってる!」


 驚いて街の方を見たセレスを確認して、ソルはセレスの手を離し街へ駆けだした。

 流石はエフォール。過去の経験からか、危険への対応力は凄かった。危険を知らせる鐘が鳴り、戦える大人たちが次々と家から出て来た。恐らくカーラとレピオスも、鐘で異変に気付いただろう。


 けれども、魔物の数も多かった。できるなら、ソルは怪我人を出したくなかった。

 ソルは自分に攻撃力アップのバフをかけた後、もう一つの魔法を自分にかけた。


「アテント」


 これは、前世のゲームプレイ時には全く使わなかった魔法だった。自分に敵の注目を向ける魔法。けれども実際に戦う時は、なかなかに便利な魔法だった。

 魔物が、一斉にソルの方を向き飛び掛かろうとする。その瞬間、ソルはもう一つの魔法を放つ。


「ファイアストーム!」


 瞬間、ソルの周りに炎の渦が生まれる。そして、集まって来た魔物を一瞬にして炎の渦が巻きこんだ。範囲魔法であるファイアストームは、一瞬にして広範囲の魔物を倒す。


「セレス! 後は頼む!」

「わかったわ!」


 勿論範囲魔法とはいえ、ゲームと違って万能ではない。ゲームであれば全滅できただろうが、リアルなこの世界では範囲外にいれば取りこぼしもあった。

 普段の戦いでも、その取りこぼしをセレスとカーラが個別に倒していく。勿論、二人にまかせっきりではない。二人の後ろから、ソルとレピオスも魔法にて攻撃をしていく。


 だから今回も、ソルは少ない魔力だが自由に動かしやすいファイアボールで生き残った魔物を倒す、はずだった。


「兄ちゃん凄い!! もう一回さっきの見せて!!」


 突然、家の陰からまだ八歳ぐらいの子供が飛び出してきた。子供に、周りは見えていない。そんな子供に向かって、一体のオオカミ型の魔物が飛び掛かろうとしていた。


「危ない!」


 ソル慌てて子供の方に駆け出しながら、魔法を放つ準備を始めた。けれども、放ちたい箇所に魔力を集める必要がある性質上、魔法は少しだけ物理攻撃よりも時間がかかる。


「させない!」


 と、別の影がソルと子供の前に飛び出した。

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