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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
カーラの故郷“エフォール”にて

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21.ライバルと歪な関係

 ソルが追った先は、明かりの付いていない暗い廊下だった。そんな廊下を一人歩くオーディの背中に、ソルは呼びかけた。


「あの、オーディさん!」


 ソルの呼びかけに、オーディは静かに振り向いた。


「あなたは……。ああ、カーラと一緒にいた……」


 そう言った瞬間、オーディはソルから目を逸らした。赤の他人であるソルに対しても嫌悪の表情を隠さないオーディの姿に、ソルはこれ以上踏み込んで良いのかと不安になる。

 けれども、自分は唯一原作を知っていて、それでいて今までも少しずつは変えてこれた。だから、もし自分が原作には無かった行動をすればという期待もあった。


 ソルは小さく息を吸う。


「あの、ええっと、カーラはずっと、オーディさんのことライバルだと言ってて、ずっと戦うの楽しみにしてて……」

「俺はライバルなんかじゃないですよ」


 必死に言葉を選びながら伝えたソルの言葉に、オーディは冷たく言った。オーディは、まるでオーディ自身をを蔑むように笑う。


「カーラからどんな風に俺を過大評価して言っているのかわかりませんが、俺はカーラよりずっと弱くて何もできない。実際、魔王討伐にも俺ではなくカーラが推薦されたのがその証拠でしょう。父さん……、師匠だって、ずっとカーラの事ばかり褒めていた」


 オーディから滲み出ていたのは、カーラに対する劣等感だった。そしてそれを否定する術を、ソルは持ち合わせていなかった。


 確かに以前ここに来た時も、カーラの希望でオーディやマイターとカーラが戦うことがあった。それは原作のイベントと一緒で、そして勿論カーラの圧勝だった。

 どんなゲームでも、ライバルには勝って次に進む事が当然のストーリーだった。だからソル自身、そのことに何の疑問も抱いていなかった。けれども、ここがリアルの世界なら、確かに二人はライバルというには歪過ぎた。


「でも、カーラにとっては、オーディさんがいたから強くなれたって……」

「そんなわけない! カーラは色んな人から、勿論師匠からも、天才って呼ばれてたんだ! 俺なんかいなくても、強くなれたさ! 俺がどれだけ苦労して強くなっても、すぐに追い抜かしていく!」


 何とかソルが紡いだ言葉に、オーディは叫ぶ。


「おまえだって、カーラの仲間なんだから強いのだろう!? そんな奴に、ずっと比較されてきた俺の気持ちなんてわかるものか!」

「いや、そんな……」

「綺麗ごとの慰めなんて絶対に言うなよ! そんな言葉、もう聞き飽きた! 俺には俺にあったやり方があるだとか、誰かと比較するのは間違ってるとか、もううんざりだ! 皆もそうやって大人になって来たって言われて、けれども自分を納得させる台詞を無理やり見つけてるだけだろう!? ずっと誰かより下なんて、惨めに決まってる! どうせ戦っても負けるんだ! そんな惨めな勝負、誰がやりたいと思うんだ!」


 オーディの言葉に、ソルは何も言えなくなった。オーディの気持ちは、痛いほどわかるのだ。

 前世で優人だった頃、親から兄の明とよく比較をされた。兄は勉強も運動も優人よりはできて、何より友達も多かった。兄と比較する言葉を、何度も優人は親から言われ続けた。そうして、もうそれでいいやと諦め、投げやりになっていった。


 そうするしか、方法が無かった。諦めるしか、心の平穏を保てなかった。けれどもオーディは、まだどこかで諦められていないのだろう。カーラに勝つことを。


 何も言わないソルを、オーディは睨みつける。


「また旅をしているのでしょう? 用が済んだら早く出て行ってください。子供たちにカーラが英雄と称えられる度に、自分は平凡な存在なのだと惨めになるのです。早くカーラのいない日常に戻してください」


 と、後ろでガタリと音がした。振り向くと、動揺してオーディを見るカーラがいた。


「なん、で」


 カーラは震える声で言う。


「ボクにとって、オーディはずっとライバルで、今日も、ずっと強くなったボクを見て欲しくて……」

「見て欲しいだけでしょう? カーラは俺に勝ちたいなんて思っていない。だってカーラにとって、俺は当たり前に勝つ存在だから」


 そう言って、オーディはくるりと背を向けた。


「俺はカーラをライバルなんて思った事、一度もないから!」


 それは『リアンズ』で、カーラがオーディに嫌われる時に言った台詞だった。原作のカーラは、それは瘴気の影響なのだと自分に言い聞かせ、納得していた。

 けれども、本当は違った。瘴気の影響は絆の力で乗り越えられたように、オーディがカーラを拒否したのは、元々そういう気持ちを抱いていたからなのかもしれない。


 そのまま、オーディは去って行った。そんなオーディを見ながら、カーラは震えながらうずくまる。

 そんなカーラの背中に、ソルはそっと手を伸ばした。


「カーラ……」

「なんで、ボク、ただオーディと楽しく戦いたかっただけなのに……」


 カーラはポロポロと涙を流しながら、ソルの服にしがみ付いた。


「ボクは、オーディと一緒に村を守りたくて、だから、沢山沢山練習して強くなったんだ。魔王討伐の旅に手を上げたのも、この街を守りたいからで……。なのに、ボクが強くなるのは、オーディを苦しませてたのかな……?」


 知っている。本当はカーラは天才じゃないことも。強くなるために休むのも惜しんで訓練していたことも。ソルは設定だけじゃなく、実際に見て知っていた。

 きっとオーディはそのことを知らない。カーラはその方がカッコいいからと、最初努力の部分を隠すのだ。けれども物語が進むにつれ、努力した部分が見えてきて、カーラというキャラを好きになる。


 ああ、せめてオーディが、カーラの努力を知ってくれれば。

 オーディはカーラにとって、ライバルとして以上に大切な人であるはずだった。だからソルは、せめてライバルでいられなくても、なんとか普通に話せるようにはなって欲しかった。

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