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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
ソルの故郷“パシオニア”にて

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14.ズレたシナリオと心

 その日の昼過ぎ、ソル達は塔へと向かった。

 塔の中には、以前来た時と同じように雑魚敵と呼ばれるレベルの魔物がいた。ソル達はそれらを倒しながら、一フロアずつ階段を上って行く。


 魔物との戦闘は難しくなかった。特に魔導士であるソルの範囲攻撃魔法は雑魚敵狩りに適していて、他の三人は生き残った魔物を倒せば良い。これは、前世でゲームをプレイしていた時と同じだった。

 前世との大きな違いは、リアリティのある魔物を見なければいけないことだろう。ゲームでは基本デフォルメされていたため、どんなモンスターでも気にはならなかった。けれども、ここはあくまで3D化された世界。流石にもう慣れたが、人間と変わらない大きさの虫や爬虫類系の魔物を見た時は一瞬ぞわりとした。


 勿論この塔に出てくるモンスターも例外ではない。この塔で戦う四天王サマエルは、火を吐く蛇をイメージしており、雑魚敵も蛇をモチーフにしたものが多い。それだけでも十分に気持ち悪いのだが、今後戦うであろうサマエルの姿にも不安があった。

 本編で出てくる四天王は、四人とも人間の形をしており、美男美女だ。けれどもエンディング後に再戦するときの姿は異なる。サマエルはベヘが最初に死者蘇生したキャラであり、ベヘはやり方もわからず実験的に周辺にいた魔物を生贄にした。

 そうして死者蘇生したサマエルは、人の形はしていたものの、肌が沢山の魔物を組み合わせたような気持ち悪い見た目となった。デフォルメされた画面の世界だから許されたが、現実では絶対に気持ち悪いだろう。


「あーあ、また四天王と戦うの嫌だなー」


 思わずそう言ったソルの言葉に、三人は一斉にソルを見た。


「……四天王が待っているとは限りませんよ」

「でもさー! この塔で痕跡があったんだろ? 絶対にそうじゃん!」


 少し三人を警戒させるために、ソルはそう言った。未来を知っていることは流石にどう思われるかわからないから言えないけれども、これくらいはいいだろう。


「……そうかもしれないわね。でもソルは、あまり前に出ちゃ駄目よ。サマエルはソルと相性が悪いのだから」

「わかってるって! そん時は身体強化魔法でサポートすっから!」


 四天王は、炎、水、風、土の四つの属性に分かれている。そしてソルの攻撃魔法は炎系の魔法が中心で、四天王のうち炎、水、土の属性を持つ三人には相性が悪い。これは雑魚敵狩りで便利なソルばかり使わない、運営のバランス調整だろう。

 勿論、風属性の四天王だけは遠距離攻撃ができるソルが活躍できる。けれどもボス戦の基本的な構成は、セレスとカーラがアタッカーで、ソルはサポート魔法、レピオスは回復役となる。恐らくサマエル戦もそうなるだろう。これも前世でのプレイと同じだった。


 だから今回も同じように動けばいい。レベルは足りているはずだから、問題なく勝てるだろう。そんな風に、ソルは思っていた。

 コアのある階に辿り着くまでは。


「えっ……」


 目の前に広がった光景に、ソルは思わず声を上げた。

 浄化され美しく輝くコアの周りに飛び散る、深緑色の液体。その中心に、人のような何かが倒れていた。


「なに、これ……」

「……これは、魔物の血ですね。深緑色になっているので、ある程度時間は経っているのでしょう。私達の血が赤から深い赤に変わるように、魔物の血も、エメラルドグリーンから深緑に変わりますから」


 レピオスの解説に、頭では納得できた。だって何度も魔物を倒し、魔物の血をたくさん見てきたのだから。けれども、だからと言って現状を理解できるほど、ソルの思考は動かなかった。

 カーラが、中心に横たわる生き物に駆け寄る。


「うげっ、なんだこれ。人間みたいだけど、全身に蛇の鱗みたいなやつが……。いや、それだけじゃなくて、スライム……? 中が透けてて気持ち悪っ! なんかやけに毛深い所もあるし……」


 カーラの言葉は、再戦時のサマエルの特徴そのままだった。だから、間違いなくこれから戦うはずのサマエルのはずで……。


 誰が、いつ、どうして、何のために。


 シナリオと違う現状に、ソルは混乱する。シナリオが変わるのは、だいたいソルの行動が影響していた。それでも、大筋が変わることは無かった。

 けれども、今回に関しては何もシナリオから外れた行動をしていない。なのにサマエルは既に死んでいた。その原因が、ソルはわからなかった。


「あら? でも、この顔……」


 と、セレスもサマエルに近付き、そう言った。


「サマエルじゃないかしら? でも、私たちが倒した時とは姿が全く違うわね。どうしてかしら? レピオスはどう思う?」


 セレスの言葉に、レピオスも眉間にしわを寄せサマエルに近付いて行った。


「はぁ……。確かに、サマエルのようですね。この現状は私にもわかりかねますよ」


 レピオスはどうしてか大きくため息をつきながら、そう言った。そんなレピオスを、セレスは口元を手で押えながら見る。


「もしかして、ベヘが禁術を使ってサマエルを復活させようとしたのではないかしら? けれども、こんな姿になってしまったから殺した……。もしかしたら、ソルの言う通り本当に四天王を、そして最終的には魔王を復活させようとしているのかもしれないわ……! ねえ、レピオスもそう思わない?」

「……そうですね。その可能性は、十分にありますね」

「そうでしょう? ああ、なんて恐ろしい……。ベヘは、絶対に殺さなきゃいけないわ。国にもベヘは危険だから絶対に殺すべき存在と報告しないと……!」


 そう言ってセレスは立ち上がり、後ろで動けずにいたソルの方をくるりと向いた。


「ねえ、ソルもそう思うでしょう?」


 セレスはどうしてか笑っているようにも見えた。けれどもその理由をソルは考える余裕も無かった。

 違う、そんなはずが無い。けれどもそれを伝える術が、ソルには無かった。


 それとも、本当にセレスの言う通りなのだろうか。そもそもソルが瀕死になる事自体無かったことなのだから、それが影響して、歯車が狂ってベヘが復活したサマエルを殺したのだろうか。確かに、セレスの言葉は辻褄があった。


「……ソル?」


 と、何も言わないソルを見て、セレスは不安そうに手を伸ばした。そんなセレスが目に入り、ソルはハッと顔を上げて意識を戻す。


「あっ、ええっと、何もなくて……」

「でも……」

「本当に何もないから! あっ、ちょっと、塔に飲み込まれた時の事思い出しちゃった! ……みたいな、あはは」


 ソルが咄嗟に思いついた言い訳を口にすれば、セレスの手はピタリと止まった。そして、悲痛な顔をしてソルを見る。


「ごめんなさい……! 私の考えが浅はかだったわ……。そうよね……、こんなとこに連れて来るなんて……」

「いや、大丈夫だから! 本当に! ちょっと軽い感じで思い出してただけで、そんな深刻な感じでは……!」


 想像以上に必死に謝るセレスを前に慌てて否定するも、セレスも、そしてレピオスとカーラも、動揺した顔を崩すことは無かった。レピオスとカーラも、ソルに駆け寄る。


「無理しないでください。それだけのことがあったのですから」

「そーだよ! わざわざ苦しい思いして旅に付いてこなくても……。そうだ! いっそのこと、ソルはこのままパシオニアにいるっていうのも……」


 その瞬間、思い出したのはゼットとラクトに絡まれた時のやり取りだった。

 ソルとしては、きっとゼットとラクトと話すのも幸せな時間だったのだろう。けれども、優人としては前世を思い出す不快な場所だった。そしてずっとソルを放置していたソルの両親にも、良い感情は抱かなかった。


「……嫌だ。いたくない」


 思わずそう言ってすぐ、ソルは我に返る。目に入ったのは、何も言えなくなった三人の心配そうな顔。


 違う。そんな顔をさせたいわけじゃない。ソルなら絶対に、仲間にそんな顔をさせないのに。すぐに笑顔にさせるはずなのに。

 ああ、間違えてばっかりだ。ソルを演じなきゃいけないのに。セレスの前ではソルらしく振舞おうと決めたところなのに。


 ソルは思わず目を逸らす。これ以上三人の顔を見るのが怖かった。

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