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【完結】仲間の幸せのため嫌われ役になって死んだはずなのに、真実を知った前世の推しキャラが禁術で俺を蘇生していました 〜原作知識無双後の後日譚〜  作者: 夢見戸イル
ソルの故郷“パシオニア”にて

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11.懐かしさと友達

 ソルがトルサの言葉を聞いた時、どうしてか驚きよりも懐かしい気持ちになった。同時に思い出したのは、前世で言われた言葉。


『そのゲーム好きなの? 僕の家、ゲーム厳しくて買ってもらえないんだよね……。ネタバレしてもいいから、冒険の話とか聞かせてよ!』


 優人が悟にそう声をかけられたのは、優人が高校一年生の春の事だった。その頃の優人は、クラスメイトの会話に入る気も起こらず、一人で小説版の『リアンズ』を読んでいた。

 悟は、ぼっちの優人をただ気にかけてくれただけではなかった。優人の好きなものを純粋に興味があって知りたいと、目を輝かせていた。


 その時の悟と同じ目を、トルサもしていた。そんなトルサに、ソルも笑う。


「いいぜ! その代わり、トルサの好きなことも教えろよ!」

「えっ!? 僕の話なんて聞いても、面白いことなんかなくて……」

「そんなことないって! 俺、トルサともっと仲良くなりたいんだ! だから、トルサの事ももっと知りたい!」


 あくまでソルらしく、けれども本心からソルはそう言った。ゼットやラクトよりも、悟と似ているトルサと仲良くなりたかった。

 そんなソルの言葉に、トルサも笑う。


 そうして二人は、沢山のことを話した。ソルが冒険の話をすれば、トルサの目の輝きは一層強くなった。

 元々、トルサは冒険を描いた物語が好きだった。特に勇者が出てきて魔王を倒す物語が好きで、沢山の小説を読んだという。そしてソルの冒険はまるで物語の世界のようで、ずっと気になっていたらしい。


「あー、陰キャと弱虫が仲良くしてるー! ソルも陰キャの仲間入りかー?」


 と、遠くでそんな笑い声がソルの耳に入った。ゼットがわざとソル達に聞こえるような声でそう言ったのだ。

 けれどもソルは、そんな声すら気にならないほど、トルサと話す事が楽しくて仕方なかった。どこか懐かしい気持ちになりながら、ソルはトルサと夢中になって話した。





「ソル」


 と、ソルを呼ぶ聞き慣れた声にソルは顔を上げる。ソルを呼んだのはセレスで、三人は荷物を沢山抱え戻って来ていた。


 セレスはソルの隣にいるトルサを見て、ニコリと笑う。


「はじめまして。えっと、ソルのお友達さん、でいいのかしら?」

「へっ!? あっ、えっと……」


 セレスの言葉に、トルサは一瞬言い淀んだ。

 トルサが言い淀んだ理由を、ソルはすぐに理解できた。前世で悟と話すようになってまだ日が浅い頃、悟の母親に会って同じ質問をされたのだ。その時の優人は、悟と友達だと言っていいのかわからず、今のトルサのように言い淀んだ。

 けれども隣を歩いていた悟は満面の笑みで、優人の事を友達だと言った。その言葉が嬉しくて、その日の事は未だに鮮明に覚えている。


 そして、今の自分は誰とでも仲良くなれる、誰からも愛されるソルという男だ。トルサもきっと、ソルと友達になりたいと思ってくれているはずだった。

 そして、ソルとしてはトルサはもう友達だった。だから前世で悟がしてくれた事を、トルサにもしてあげたかった。


「俺の友達! トルサっていうんだ! 冒険の話が好きみたいでさ、俺達の冒険の話を色々話してたんだ!」


 ソルがそう言えば、トルサは一瞬驚いたように目を見開いた。けれどもその後すぐに、嬉しそうに笑う。

 そんなトルサを見て、ソルは内心ホッとした。今はソルとはいえ、中身は誰からも好かれなかった優人だった。ソルを演じていたから言えたけれども、本当は少しトルサと友達だと言っていいのか不安だった。けれども嬉しそうなトルサの様子を見る限り、ちゃんとソルになりきれていたのだろう。


 それから、少しセレス達を交えてトルサと少し話をし、トルサとは別れた。トルサは他の三人とも、問題なく打ち解けていた。


「ねえ、ソル」


 と、セレスはソルに呼びかける。


「どうした?」

「さっき、他の人達とも話してたわよね? あの人達も、お友達……?」

「えっ……?」


 他の人達と言われれば、恐らくゼットとラクトの事だろう。その二人とトルサ以外に、長く話した人はいなかった。

 優人としては、友達と言いたくなかった。けれどもソルの設定を考えると、友達だった。


「あっ、ええっと、まあ……、友達……」


 ソルから出たのは、ソルらしくない歯切れの悪い返事だった。本物のソルならば、迷い無く友達と言っただろう。けれども、今のソルの中身は優人だからこそ、どうしても心から友達とは言えなかった。


 変に思われなかっただろうか。ソルはそう思って、セレスをチラリと見る。


「そう……、なのね……」


 けれどもセレスはそれだけを言って、それ以上は何も追求されなかった。その事に、ソルはホッとする。


 そして同時に、一つの疑問が沸き起こる。セレスに、ゼットやラクトと話している所をいつ見られていたのだろうか。

 買い物ができる店が並ぶ場所は、ここから少し離れていた。だから近くにいないと思っていたが、何かしらの理由で一度戻ってきていたのだろうか。


 できれば、あの二人とのやり取りは少しも聞かれていなければいい。ソルはそう願った。あんな下品で馬鹿げたやり取りを、セレスにだけは聞かせたくなかった。

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