表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/406

第97話 おパンとおティーな、おモーニング!


「何がハマるですって? 自分の陣営で作ったパンを自画自賛。ロアンヌさんの創作パンに大した自信のようね?」



 俺と食いしん坊将軍がパンを巡る論争を繰り広げていると、聞き覚えのある声が乱入してきた。誰かと思えばアイリ・リュオーネだった。この前は単独で乗り込んできたが、今朝は多数の取り巻きを引き連れて俺達の前に現れた。取り巻き達は皆、ユニットのメンバーとか何らかのスタッフなのだろう。俺らと比べると相当規模がデカい事を窺わせる。



「出たわね。ぞろぞろと金魚のフンを引き連れて! 大名行列かっつーの!」


「ごきげんよう。朝からフンだなんて失礼ね。朝食のように日常の出来事を一緒に過ごしてこそ、ユニットの連帯感が強まるのよ。それがユニットの長期持続の秘訣なの。」



 瞬間的に戦場のような緊張が走った! 目を合わせた瞬間からバチバチさせとる! 朝っぱらから二人とも闘争心剥き出しである。朝の食堂を舞台にして、血で血を争うパフォーマンスが始まろうとしていた。



「いつもと違って登場が遅かったわね? いつもなら私が来る頃には優雅に食べてるっていうのに。」


「それは色々と事情があったからなのよ。折角だから、今度のパン対決の前に手前を披露しておこうと思ったの。」


「戦う前に手の内を見せるつもり? 随分と余裕を見せつけてくれるじゃない!」



 事情とは一体何なのか? ワザと寝坊しても朝の準備なんて余裕で出来るとかだったりするのだろうか?



「すぐに見せてあげるわ。面白い物を! いいわよアレを持ってきて!」



 俺がしょうもないことを考えているのをよそに、アイリは取り巻きに何かを持ってくるよう指示を出した。厨房の所から何かを乗せた台車…というかワゴンがガラガラと音を立てながらやってきた。何か食べ物が上に乗せられている。



「コレが私たちのパンよ。厨房をお借りして朝からこさえていたのよ。あなた達や他の皆さんに振る舞うためにね。」


「何よコレ!? パンていうかただのベーコンエッグじゃない!」



 ぱっと見、豚の塩漬け肉のスライスの上に目玉焼きが乗せられた物、にしか見えない。というより一緒に焼いた物と言った方がいいか? それにしては割と形が円形に整っているし、卵だけではあり得ないくらいの厚みがある。よく見ると下の方に円形の土台のような物が……、



「おい、見ろ! 下の方にある土台がパンなんじゃないか?」


「ん? ホントに? ……あ!? これ、マフィンなんじゃないの?」


「ご名答。その通りよ。マフィンを使ってる。そして、このメニューの名前はエッグ・ベネディクトよ!」


「え? エグい・バネエフェクト?」


「違いますよ、勇者さん。なんか、タニちゃんみたいな空耳になってます!」



 マフィンとか、ベーコンエッグとか、エッグい・マニュフェストとか! 聞き慣れないオシャンティな単語が続出したからつい、タニシの様な空耳モードが発動してしまった。



「今日からあっしはおパンとおティーをおモーニングに堪能しまくるでヤンス!」



 なんか意味不明なセリフが聞こえてきたと思ったら、タニシがやってきていた。なんか、まだ寝起きであるらしく、寝ぼけ顔で足取りもおぼつかない様子だ。



「うっひょう!? たまらんでヤンしゅね! 朝から美少女を堪能しまくれるでヤンス! モーニングに娘達を堪能、略してモーニング娘でヤンしゅ!」


「タニちゃん、朝からおかしいこと言わないの! Pなんだからもっとシャキッとしないと!」


「ウーン? シャキッとしてるでヤンスよ? 体のごく一部がっ!」


「やめとけ、タニシ。そんなこと言ってたら速攻で出禁になってしまうぞ。」



 もうダメだ。タニシは朝の寝起きのテンションで言動がカオスになってしまっている。身内としては非常に恥ずかしい!



「あら、ちょうど良かったわ。あなた達のPに私の力作を試食してもらうわね。」


「し、試食!? 聖歌隊トップのアイリしゃんを頂けるんでヤンしゅか?」


「おいコラやめろ! ホントにいい加減にしないと、袋だたきにあって叩き出されるぞ!」


「タタキダシ? 炊き出し?」


「まあ、とにかく頂いてもらいましょう。はい。」


「はむっ!?」



 タニシの意味不明な戯言を押さえつけるかのように、アイリはタニシの口へとエッグなんたらを差し入れた。その瞬間からモグモグとゆっくり食べ始め、途中からカッと目を見開いた状態で一気に食べ尽くした。



「う、ウマイでヤンしゅう! コレはある意味、ワンダーなモーニング・ショットでヤンス! ホット・ショット!」


「フフ、愉快なPであせられるのね? 豊かな表現で絶賛されて光栄ですわ。どんどん食べて頂いて結構ですよ。他の皆さんも良かったらどうぞ!」


「うっひょう! モーニングな娘さんからイタダキ放題でヤンしゅう!」


「ちょ! 犬Pばっかりズルい! 私が全部頂くんだからね!」



 タニシの意味不明な評価に感謝し、もっと食べてもいいと促すアイリ。その言葉を合図に我先にと見ていた子達も群がっていく。ていうか、うちの食いしん坊将軍はまだ食べるつもりなんか? 最初に取ったヤツがまだ残ってるでしょうが!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ