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第92話 見た目が変わったくらいでは……。


「よっ! いっちょ前に聖歌隊やってるじゃないか。」



 聖歌隊宿舎を出たところでファルが声をかけてきた。中は基本的に男子禁制なので、俺に会うつもりならここで待っている以外に手段はない。



「うるさいな! そうでもしてないと瞬く間に追い出されてしまうからしょうがないんだよ。」



 とにかく速攻で着替えを済ませ、メイちゃんの手伝いもあってなんとか見た目を取り繕うことは出来た。それでも元々の男っぽさは消すことが出来ず、なんかボーイッシュな感じの仕上がりになってしまった。



「しかし、ある程度外見が変わっているのによくわかったな?」


「わかるに決まってるだろ? お前のガサツさは見た目が変わったくらいじゃ誤魔化せねえよ!」


「ガサツで悪かったな!」



 確かに自分がガサツなのは認めるが、見た目が変わってもわかるとはどういう意味だ! そんなに男らしさがにじみ出てるんだろうか? だとすれば、今後それを消すのに苦労しそうだな。



「ところで今回のアクシデントを防げなかったのは俺の責任でもある。」


「どうしたんだよ、急に? 別にお前は悪くないだろ?」


「そこが大ありだ。俺が同行した理由ってのを忘れるなよ。法王庁の連中への牽制と警戒のためだって事をな。」



 そういや、そうだったっけ? クルセイダーズ、言い換えれば騎士団側と、法王猊下や聖女様、処刑隊といった組織からなる法王庁側の2大勢力は仲が悪いんだっけ? わざわざ俺に会いたいとか言うって事は何か企みがあるかもって事でその牽制のためにファルが付いてきている。にも関わらず、聖女様の企みを阻止することは出来なかった。その事に責任を感じているようだ。



「まあ、しょうがないだろ、あれは。初見殺しもいいとこだぜ。」


「とはいえ、阻止できなかった。あの聖女の秘術の噂を知っていたにも関わらずだ。」


「女体化の術って噂になる程度には有名だったのか? 俺は全然聞いたことがなかったぜ?」


「当然だ。神教団の人間の間でしか伝わっていない都市伝説みたいなもんだ。」



 教団内の人間しか知らない話だったのか。そりゃ今まで聞くことも出来なかったはずだ。しかも聖女様絡みの話であるだけに表沙汰にもしたくなかったというのもあるだろうな。



「男が女にされ他挙げ句、消息を絶つって噂が囁かれてはいたが、信憑性に欠けるってんで、イマイチ真相は明らかになっていなかったんだ。」


「まあ確かにウソみたいな話だもんな。男が女になるなんて誰に話しても信じてもらえないだろうしな。」


「今回ばかりは俺がしっかりその瞬間を目撃したから大丈夫なんだが、それで俺が報告すれば終わり、というワケにはいかなくなったんだ。」


「どういうこと?」



 証拠は押さえた。だったらバラしてやればいい。でも、それは出来ないと? 出来ない理由があるからなんだろうけど、なんかイヤな予感がする……。



「ある意味、お前は人質になっている。秘術の事を口外すれば、お前は一生女のままになっちまうんだ。」


「何ぃ!? つまり脅しをかけられていると?」


「その通りだ。あの聖女はなかなかのやり手だぜ。狙いはお前の勇者の座だ。そのまま女のままでいれば間違いなく、お前は勇者ではいられなくなる。元よりも弱体化しているわけだしな。それに……、」


「それに……?」



 俺を勇者の地位から引きずり下ろすのが目的だったというのか? もちろん本人から聞いたわけではないんだろうけど、それを匂わせる事実に気が付いたとでも言うのだろうか? 俺は恐る恐るファルの言葉に耳を傾けた。



「聖女は自分らの身内に勇者候補を用意しているんだ。それを切り札にして当て馬とする事で勇者の座をソイツに奪わせようと目論んでいるんだ。」


「勇者候補だと? それが誰だか目星はついているのか?」


「お前と組まされている女、プリメーラ・ソニードがその候補なんだよ!」


「な、なんだとぉーっ!?」



 勇者候補がまさかの……プリメーラだってのか? あんなヤツが? 俺は今、アイツに勇者の座を奪われる危機に瀕しているというのか?


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