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第90話 見届ける必要があるんでヤンス!


「これで“3P”という物が如何に大切か、わかったろう? いつもそれを肝に銘じて活動に邁進するのだ!」


「はい、先輩。」



 ハッキリ言って、手短過ぎる説明だけでは理解しきれないと思う。だが理解してないとか言うと再びガチギレして殴ってきそうだったので理解したフリをする事にした。この手の人間は気分しだいで対応を変えるので、どのような展開になるかは目に見えている。とりあえず機嫌だけは取るようにしておこうと思った。



「基本を説明したところで、早速お前に仕事を命じる!」


「はい? なんでしょうか?」


「パンを買ってこい!」


「パン? 何パンっすか?」


「それは自分で考えろ! それも勉強の内だ!」


「ひええ!? そんなのわかるわけないじゃないっすかぁ!」


「あぁん? 文句あんのか?」


「ないです。文句などゴザイマセン!」


「じゃあ、行ってこい!」



 行けと命じられたため、行かざるを得ない空気になった。まさか、いきなりパシリを命じられるとは思わなかった。勇者なのになんでこんなことをしないといけないのか……。だが、食べ物絡みであれば俺も人肌脱ごうじゃないか! 俺の本気を見せてやる!



「それでは先輩、あなたにも一つ聞きたいことがあります。」


「ほう、なんだ言ってみろ?」


「本物のパンを食べたことはありますか?」


「本物のパン? 当たり前じゃないか。食べたことがある! いつも腹パンパンになるまで食っている!」


「プリメちゃん、ダメでヤンスよ。そんなパンパンになるまで食ってたら、カロリー制限オーバーして運営に怒られるでヤンしゅ!」



 やはり、コイツは食に対しての意識は低い。味はともかく腹一杯になるまで食ったり、おジャンク食べ物を好む傾向がある。それはある意味弱点。つけ込む隙と言っていい。今回はそこを付いてギャフンと言わせた上で食への意識を変えてやろうじゃないか!



「フフ、本物のパンを食べた事がないようですね?」


「な、何を! 先輩をバカにすんじゃないわよ!」


「明日また、ここに来て下さい! 本物のパンを食べさせてあげますよ!」


「明日またここ、って来るに決まってるでヤンス。来てもらわないと運営に怒られるからあっしが困るでヤンしゅ!」



 これはある意味様式美、売り言葉に買い言葉みたいなもんである。言わなきゃ意味がない。そしてこの後の展開も含めてな!



「これは慣用句みたいなもんだから、敢えて言ったんだよ!」


「意味がワカランでヤンしゅ! 女体化してもヤッパリ中身が変わってないでヤンしゅう!」


「というわけで行ってくる!」


「あっ、待って! ダメですよ勇者さん、そのままの格好じゃ! 聖歌隊の制服に着替えないと!」


「はひ?」



 早速出て行こうとしたら、メイちゃんに呼び止められる。着替えないとダメ? 郷には入れば郷に従えということか? 制服って神教団の神官服をアレンジしたような服を着なくちゃいかんのか? しかも下は……スカートになってんじゃないか!



「着ないとダメ?」


「ダメですよ! 聖歌隊として活動するからには着ないとダメなんです! 規則を守らないと!」



 規則か……。仕方ない……。あんな心許ない物を履かないといけないのか。恥ずかしい。



「じゃあお着替えって事で、タニちゃんは出て行って下さい。」


「しょえ? あっしはPでヤンス。見届ける必要があるんでヤンス!」


「ダーメ!!」


「しょんぼりーぬ!?」


「ていうか、元々、男な俺の着替えを見たいのかよ!」


「それはそれでそそられる物があるんでヤンしゅ!」


「うわぁ……。」


「とにかく出て行かないとダメ!」



 なんかタニシは心底ガッカリな様子で部屋を出て行った。そんなに見たかったんだろうか? とはいえ俺もちょっとした寒気みたいな物を感じた。羞恥心というか嫌悪感というか。徐々に精神的な部分まで女になってきているのかもしれない。ミヤコがしょっちゅうタニシにお仕置きをしている気持ちが今ならわかるような気がする。



「噂の新人というのは君かい?」



 タニシと入れ替わりでノックしながら部屋に入ってきた女がいた。切れ長の瞳に長いストレートの黒髪が目を引くクールな美人といえる容姿をしていた。容姿の良い女の子が多数在籍しているこの場所でも圧倒されるような美しさを持っているといえた。



「ああ!? アンタはっ!?」


「誰、この人?」


「この女は、コイツは現在貢献実績№1のユニット“儚き蜻蛉”のリーダー、アイリ・リュオーネよ!」



 そして、我が生涯の宿敵、とプリメーラは付け足した。なるほど№1だから目の敵にしているワケか。確かにコイツはヤベぇな。これが№1の迫力! 中々に悪魔的な魅力を醸し出しているぜぇ……。

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