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第86話 人材の発掘にも力を入れていますの。


 聖女様に案内され、応接室へとやってきた。大聖堂ほどではないが美しい内装が施されている。机や椅子とかも高そうで綺麗な物が使われているので、座るよう勧められても汚したりしないかと気を使ってしまう。こんな所で落ち着けと言われても一生落ち着けそうにない。



「おう、わぁあおっ!? 綺麗すぎて心が洗われるでヤンスぅ!? 汚れたあっしの心から汚れが払拭されて行くぅ! ワが生涯に一片の悔いなし!」


「ダメよ、タニちゃん! 成仏しちゃダメ!」



 タニシは聖女様の美しさに圧倒されるあまり、全てが浄化され天に召されようとしていた。普段から煩悩にまみれているため効果はバツグンのようである。俺達、影の属性の者にはダメージがデカすぎる!



「あらあら、私に会ったぐらいでお取り乱しになるだなんて大げさなのでは? あまりに神格化されるのは不本意ですわ。」


「いえ! 聖女様はこの世に存在されるだけでも、世の中を浄化できるお力があるのです! その気になられれば、一瞬にして魔族さえも浄化しきってしまわれるでしょう!」


「ロレンソ、大げさ過ぎますわよ。」



 ロレンソは聖女様を褒め称えるあまり、大それた事を口走り始めた。ホントにそんなん出来るんなら、勇者なんていらなくなるぞ。



「ロレンソの言うような力があるならば、勇者様もご苦労なさらずにすむのでしょうけど、実際にはそういうわけにはいきませんものね?」


「は、はあ。全く以てその通りです。」


「噂では様々な功績を残しているとお聞きしていますわ。本来、討伐が困難とされる魔王を二人も退けたそうですね?」


「はは、片方は別の魔王に殺されてしまったようなモンです。俺の功績と言っていいかどうか……。いつも危ない橋を渡るような戦いをやってばかりいます。」



 毎回、生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれることが多い。それはなりたての頃から一切変わっていない。いつになったら慣れてくるんだろうな? でも無理か。次から次へと強いヤツが目の前に現れるからな。



「私も神教の布教啓蒙を行いつつ、人材の発掘にも力を入れていますの。それが“聖歌隊”でと“薔薇騎士団”なんですの。」


「そうなんすか? 親衛隊とか聖女様の後継者を育成するとかだけじゃないと?」


「そうですわ。私の後継者といっても、聖女になれるのは、その中のたった一人。他の大勢は路頭に迷う羽目になってしまいます。そうならないためにも教団の一員として力を振るえるように育成を心掛けていますのよ。」



 まあ、確かに大勢の人間がたった一人という狭き門に挑戦することになるから、その多くは何者にもなれない。それだったらつぶしが利く様に職を斡旋したり、その後も活躍出来るような育成をしているのだろう。そこは梁山泊も似たようなモンだな。宗家とか五覇になれる人間は少ないし、師範となれるように育成もしている。



「聖歌隊は総勢で活躍する機会は滅多にありませんの。普段は複数の小隊(ユニット)を結成して、世界各地で啓蒙活動を行っていますのよ。」


「へ? てことは勇者一行(パーティー)みたいなのを組んで活躍していると?」


「そうですわ。概念的にはそれを参考にしていますわ。各人、役割ごとに割り振りバランスを取れるように配置していますの。」



 なるほど。内約はわからんが武器の扱いが得意な子や魔法が得意な子とかの組み合わせで配置しているのか。随分と本格的だな。これじゃ、普通の冒険者はうかうかしてられないだろうな。俺らだって危うくなるかもしれない。



「じゃあ、アイツ、プリメーラにもそういう仲間がいるってことっすか?」


「うふふ、そこにお気付きになられたようですね? 実はお頼みしたいことに深く関係がありますの。」


「……え?」



 プリメーラの話題を振った途端、ここに案内される直前に言った意味深な発言が再び浮上してきた。アイツがらみで何かさせられるのだろうか?



「あの娘は私が多大な期待をかけていることはロレンソから聞いていると思いますけれど、色々と問題を抱えておりますの。」


「問題? 脱走したり、大食いしてたりとか?」


「それも問題なのは間違いないのですけれど、あの娘はまだソロでしか活動したことがありませんの。他の娘とは中々そりが合わなくて……。」



 ああ確かにそれはあり得そうな話だな。脱走をしでかすくらいだ。かなりの問題児と見た!あんなのに釣り合うような人間はそうそう見つからないと思う。逸材だけどじゃじゃ馬過ぎて育成に困っているとかそんなんだろうな。



「ですので、貴方に協力をお願いしたいんですの。」



 そう言って聖女様は立ち上がり、俺の頭に触れてきた。突然の出来事に俺はただ見ている事しか出来なかった。



「マズい! 離れろ!」



 ファルの怒号が飛ぶ! でも、もう遅かった。聖女様から触れられた途端、体に違和感が発生した。何か…こう、体の重心の位置が変わったような? 妙な感じが全身に伝わった。



「貴方にはあの娘と一緒に活動をして頂きたいのです。勇者様との活動を通してならば、成長を促せると思いますの。」



 言葉の意味はわからなかったが、周囲の反応を見るととんでもない変化が起きたのは間違いなさそうだった。俺は一体、どうなってしまうんや……。

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