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第62話 優先順位を付けるのは難しい。


「ミヤコちゃん……。」


「気が付いた?」



 抱き起こして様子を確かめようとしたところで、エルるんは意識を取り戻した。目立った怪我は何もなかったから、命に別状はないと思っていたけど……。とにかく無事で良かった!



「どこか怪我とかしてない?」


「私は……大丈夫。再生すればなんとか治るから……。それよりも……レンファ先生を……。」



 エルるんは力なく震えた指で離れたところに倒れている人を指差した。あの人は……狐のお面の人だ! なんでこんな所にいるのかわからなかったけど、そんなことはどうでもいい。先に怪我を治さないと。口から血を流しているのが遠目でも分かった。



「私には回復魔法が……効かないから、他の人を優先して。」


「回復魔法が効かぬとも、薬草等の薬は効果があるはず。彼女の治療は私に任せて下さい。」



 どうしようか判断に困っていると、ミミックさんが薬とかのアイテムを取り出しながらやってきた。確かに光属性の回復魔法が効かないだけだから、そっちの方が効果はあるか。



「わかった。じゃあ、お姉さんの方に行ってくる。」


「お願いね……。」



 ミミックさんにエルるんを任せて、ウチはお面の人…レンファさんの所へと向かった。近付くと折られた槍が転がっているのが見えた。エルるん同様、武器を鬼に壊されてしまったんだろう。



「ぐ……う…う……。」



 苦しそうにうめき声を上げている。意識はないみたいなので、そのまま回復魔法を使う。出来れば本人に怪我の場所とかを確認できれば良いけど、しょうがない。意識を取り戻すまで治療を続ける。



「この人とエルるんをここまで痛めつけるなんて、とんでもないヤツ……。」



 二人は凄く強い。並みの男なんか全然太刀打ち出来ない位なのに、この二人をここまで打ちのめすなんて……。鬼は素手だから切り傷みたいに目立った外傷を与えていないのはわかる。でも、骨とか内臓とか見えない部分で傷付いている可能性があるから油断できない。武器が力任せに壊されてる所を見ると、間一髪の所で武器を使って防いだんだと思う。だから、二人とも致命傷は受けずに済んだみたいだ。



「……ありがとう。君達のような若い子を助けに来たというのに、この座間だよ。申し訳ない。」



 お姉さんは意識を取り戻した。普通に話しているけど、まだ怪我は治っていないはず。私に心配をかけさせないようにしているみたいだ。それは言動にも表れている。



「相手が強すぎるんだよ。何アレ? もう人間じゃないよ、あのオッサン!」


「確かに人の道を外れた修羅だというのは間違いない。我が流派、最大の敵だからな。」



 お姉さんは私にあの鬼がどういう存在なのかを話し始めた。ちょっと内容は難しかったけど、ウチら、特にゆーしゃとエルるんの最大の敵だってことはわかった。例のそーけとかいうオッサンと同じくらいかそれ以上の強さであるらしい。あんなのが何人もいるということが信じられない。要約するとゆーしゃは四天王の中では最弱、って話だね。つまりあのアホが一番悪い!



「こんな切羽詰まった状況だというのに、武器が壊されてしまった……。まともに戦えないが、なんとかしなければ大変な事になってしまう。」


「大丈夫! 二人の武器は直すから! って言っても、怪我を治すのが先だけど。」


「君は……そういえば勇者の剣に関わる一族の末裔だったな。通常の武器も直せるのか?」



 ウチは剣の巫女だから武器の状態は目に見えないところまで直感でわかる能力を持っている。手入れの頻度とか、痛み具合、使われた期間が手に取るようにわかる。長い時代、愛用された武器なら、武器自身が語りかけてくる様な事も起きる。だからこそわかる。二人の武器の痛みが。尋常じゃない力でねじ切られ、殴り壊された事が見えてしまった。



「何とかなるよ! ゆーしゃの剣以外にも、アッチにいるジュニアの赤い剣もウチが再構成したから! 時間はかかるかもしれないけど……。」


「いや、直してもらえるだけでもありがたい。少しは希望が見えてきた。」



 エルるんたちが加われば、あの鳥人間一人くらいは倒せるかもしれない……と思って向こうを見てみれば、ゾッとする光景が見えてしまった。鳥人間が分身していた。合計で五人に増えてしまっている!



「な、なにあれ……?」


「まずいな。あの魔族に押されているようだ。早く加勢しないと犠牲者が出る。怪我はそのままでいいから、武器の再生を優先してもらってもいいか?」


「でも、このまま戦ったら、怪我がひどくなるかも……、」


「構わない。誰かが死ぬよりはいいさ! だから武器を…よろしく頼む!」


「う、うん。そこまで言うなら……。」



 お姉さんの事も心配だけど、ジュニア達では抑えきれない可能性がある。そこで誰かが死んでしまうことになったら……。だから、なるべく多くの人数で戦うことを考えた方がいいと思うようにした……。

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