第404話 えっ!? 同じクオリティーで同じ技を!?
「その前にあの奥義は完全ではなかったというのか? あとは本人の強さ、経験によって技のキレが増す程度でしかないだろう?」
「あの技は表向き、数々の基本技の集大成として確立されている。 あらゆる攻撃、武器、場面に対応出来るようにまとめ上げられた物じゃろう。」
私まともに習った武術って薔薇騎士団のサーベル剣術だけだからよくわかんないけど、別に技ってあれ以上はどうにもやりようがないよね? 早くしたり、力込めたりする位しか強くする要素がないと思うけど? 要するに筋肉バッキバキにしたり、100メートルを5秒より早く走るとかにならないと無理な気が……。
「妾も技の成り立ちだけを見たらそういう感想を持つに至った。じゃが、この技には巧妙に裏の要素が仕込まれていたのじゃよ。」
「あの技に何が隠されていたって言うんだ? 古くさい技術の集合体じゃないってのか?」
「あの技には魔術的要素、いや、もっと古典的な呪術的な要素を含んでいる事に妾は気付いたのじゃ。あの流派は武術の名門として確立する前の忘れ去られた古流武術が元になっておるようじゃ。奴らの宿敵とも言うべき一族はまだその体制を崩さずに維持しておるようじゃがのう。」
えっ? 魔法的な何かが隠されてた? 最早、意味わかんないレベルの話になってきたよ、コレ? なんかつい最近に鬼が出たとか、それにアホ勇者が一回殺されたとか言う話と関係があるの? ワールドワイドクラスで繰り広げられる本格的な鬼ごっことプロ鬼ごっこプレイヤー達の壮絶な戦いとかの話だと思ってたのに?
「それがあの技に仕込まれた”八相”という要素じゃ。」
「”八相”だと? なんだそれは? 俺も魔術には疎いんでな。そのような要素は知らんよ。」
「少なくとも”7大元素”については知っておるじゃろう。魔術の基本とも言うべき精霊属性の相関関係。東洋にはこれと少し形式の異なる要素、方角に属性を待たせるような考えを持っておるのじゃ。」
魔法って属性で7個プラス光と闇っていう感じで区切られてるんだっけ? どれとどれがそれに強かったり、相互作用で強くなったりみたいな考え方だったっけ? 知らんけど。東洋は方向とか方角に属性付いてんの? 四方八方とか言う感じで? あ、でも、リンシャンが物事決めるときに方角とか気にしてた様な気がするから、そういうことなんだろう。知らないけど?
「東洋にはそのような呪術哲学が存在しておる。空間の力の流れを”八相”の考えに基づき自在に操る。相殺、強化、軽減全てはその哲学によって行われる。極めれば空間、理すら操れる様になるようじゃのう。その証拠に勇者ロアは剣術で空間移動を行うことも出来るようじゃのう。」
「剣術で空間移動だと!? そんなことが出来るのか? そんなヤツは今まで見たことがない!」
空間移動……? あ、確かにやってるのを見たことがあったと思う! 戦車の試合の時、馬に乗れないからって瞬間移動を繰り返しいながら戦車に追いついてきた事があった! なんで魔法も使えないヤツがそんなこと出来るのか疑問だったけど、アレは本当に技であんなことしてたんだ? ワラワ先生が言ってるんだから本当なんだろう。あんなの出来るわけないって思ってたのに。
「あの技を極めることは即ち、万物の理を極めることに等しい。斬れぬ物はないし、相手に傷一つ与えずに悪心を打ち払う事すら出来るようになるのじゃ!」
「あんたが言うことが本当だったとしても、この娘がその技を再現できるかどうかは別問題では?」
「出来るかどうかはまだ見ておらぬ。だが出来るはずじゃ。」
なんか壮絶に逃げられない様、予防線を張られている気がするッ! 「最高奥義出来るまで帰れません!」みたいな無茶振り企画になってきてるッ! 私としては準本命、本命と来てからの大ボケをかます予定だったのに! お笑いトリオの三段オチの3段目のボケ役だっていうのに、超高難度ウルトラCを決めろとか言われましてもねぇ? じゃあ俺がやるよ、どうぞどうぞ的な展開になってきてるじゃない!
「なんだよ? それはあんたのただの希望的観測ってだけじゃないか?」
「そこまでワラワ先生が言うんなら……出来らぁ!」
「何?」
「勇者と同じ技を再現できるって言ったんだよ!」
「こりゃあ、面白い小娘だぜ! どうしても勇者と同じ技を見せてもらおう!」
「同じクオリティーで同じ技を!?」
「そなた自身が出来ると言うたであろうが?」
「えっ!? 同じクオリティーで同じ文言を……!?」
「そなたは何がやりたいのじゃ?」
なんかノリで伝説の食いしん坊の謳い文句を披露してしまったぜよ! あの流れから「邪魔するんやったら帰って?」的な展開に持って行けると思ってたのに、思ってたんと違う! これでますます逃げられない展開に! 相手は一匹なのに、「しかし、囲まれた!」的な状況的になっ的た! テキテキ! ああ、もう、どうしよう、これ!
「ヨシ! こうなったら勇者を超えたスーパー勇者になったつもりで戦ったらぁ!!」
「いいだろう。どれほどのもんか見せてもらおうか?」
「えっ? 私が勇者を超えたスーパー勇者に……!?」
「言った側からどういうことじゃ……。」