第392話 試練の道を男のど根性でまっ平らに……?
「コンダラー? このローラーで丸めコンダラー、ってか?」
「しょうもないイジりは止めーや。センスもクソもあらへんで。」
というか、こんなデカい武器をよくもまああんな小さい袋から出したもんだなぁ、と思う。あの袋は転送機能でも持っているんだろうか? 宝箱の転送罠と真逆の原理だったりして? さっきの鍵開け、罠解除の治具類が入った箱もどこからともなく出していたしおそらく貴重なマジックアイテムに違いない。
「アンタ、筋肉には自信があるようやけど、コレにはどれだけ耐えられるんやろな? いっぺん試してみよか?」
「そんなモン、逆に転がし返して、お前みたいな豚は平らに引き延ばした上でカツレツにしてやるぅ!」
「やれるもんならやってみいや!!」
(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ、ドスン!!!!)
オッチャンのローラー攻撃が始まった! すさまじい勢いでローラーが回転してゲイリーの方に向かっていく! その途中で地面に置かれたままになっていた宝箱は為す術なく挽き潰され、そのままぺっしゃんこになってしまっている! 俺やファルの箱がその軌道上に存在していたら、アレとおんなじ目に遭っていたのか! おっかない! そんな勢いのローラーをヤツはそのまま受け止めた!
「おっしゃ、受け止めたぁ!」
「よお受け止めたな? そのままの体勢がいつまで続くんか見物やな?」
「いつまでも待たなくてもいいから! このままミミックの餌にしてやるぅ! ゲット・ラック・トレジャー!!」
受け止められたとはいえ、力の勝負ならオッチャンが負けるはずはないはず! だがヤツも真正面から力比べをするつもりはなかったようだ。例の宝箱取り込みの能力を発動させたのだ! またしても武器が消滅するのかと思いきや、食い意地丸の時とは違い何も反応が起きなかった。ローラーは光る事もなく延々とゲイリーを押しつぶそうと唸りを上げているのには変わりがなかった。
(オエップ! ゲロゲロ!!)
「おおう!! どうしたミミック、早く食っちまえよ!」
「ペットには無理強いさせるモンやないで? こんなもん食わしたら食あたりするに決まっとるやないか!!」
「好き嫌いする子に育てたつもりはありましぇん! キチンと食べるまでおやつあげませんからね!!」
そんな好き嫌いで残そうとする子供を教育するみたいなノリで言われても……。さすがのミミックも拒否反応を示しているようだった。大体こんな整地用ローラーを武器と判定するにも無理があると思う。
こんなの武器と言うより兵器としか言いようがないものを取り込めると思う方がおかしいのである。設備まで取り込めるんならダンジョンその物まで取り込める判定になってしまうしな。物事には限度という物があるのだ。
「んもぅ! 聞き分けの悪い子ねぇ! 罰として爆裂の刑に処しますからね!!」
「自爆モード発動! 3,2,……、」
「うわっ、何しよんねん!!」
(ズドォォォォォォン!!!!!!!!!!!!)
いきなり爆発までのカウントが始まり、ミミック・ハンドは大爆発を起こした! オッチャンは寸前でその場を離れたので難を逃れたが、ローラーには爆発の爪痕が残る形になってしまった。原型は保っているけども大きなくぼみが生じ、性能を損ねる結果になってしまった様だ。とはいえ、使い手には被害はない。むしろ、自爆を使った方の被害が大きいと見える……。
「ぼっふぁあ!! 武器破壊成功ゥ!!」
「アンタ自身も破壊してるやないかい!」
ミミック・ハンド、すなわちそれはヤツの量の手だったのだ。それが木っ端みじんに吹き飛び、手首から先がなくなってしまっている。それ以外にも顔面にも爆発の爆煙の影響を受け、髪の毛は逆立ち顔にも火傷を負った様だ。相手の武器を壊すためとはいえ、あまりにも被害の大きい結果となってしまったようだ。やっぱ後先考えない脳みそまで筋肉な感じは相変わらずのようだな。
「ひへへ! こんなもん擦り傷程度さ! ツバ付けときゃ治るんだよぉ!!」
「そういうレベルちゃうがな! 手首取れてんねんで?」
「問題なぁし! だって別の宝箱ハンドにすればいいんだもん! カモン・ウルトラ・ボックス!!」
(ボコン!!)
吹き飛んだ手首の所に新たな宝箱が生えてきた! 千切れ吹き飛んだ手首が何事もなかったのように生えてきたのだ! 厳密に言えば生えてきたというより出現させたと言った方がいいのかもしれないが、戦闘続行可能になったのは言うまでもない。新しく現れた宝箱がゆっくりと開き、何かが出てきた。左右それぞれ違う物の様だが……?
(シャアァァァッ!!)
「レッドスネーク・カモン、ってか?」
「ミミックのお次はコブラの呪いに悪魔の目玉かいな! 宝箱の罠は一通り使いこなせるっちゅうワケやな?」
右手の宝箱からは首元が大きく広がった形状の蛇……コブラとかいう毒蛇に酷似した物が現れ、左側は箱の中から覗く不気味に光る巨大な目が現れた! これも宝箱の罠の一種か? 何がどうヤバいのかはわからないが、罠を応用しているからには一筋縄では対処しにくい相手なのは間違いない。さあ、オッチャンはどう立ち向かうのか?