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第39話 ブラック・インタラプト


「ブラック・インタラプト!」



 まずは“風読み(バンデルオーラ)”への妨害工作だ。小型の奈落空間(ブラック・ホール)を発生させることで気流に乱れを生じさせる。これは星の消滅の瞬間に発生する空間の歪みで、周囲全てを奈落の底に引きずり込む磁場を発生させるという現象だ。それを小規模で発生させ気流を乱させたのだ。



「ラヴァン先生、これは!?」


「我が流派の秘術、うっかりすると私達諸とも引きずり込みかねない魔の空間です。最小限で発生させれば、周囲の空気をも吸い込む効果をもたらせます。」


「ということは、相手の魔術は風属性……?」



 先生は私が気流を発生させた意図を理解してくれたようだ。あとは対処をされる前に敵の居所を探るのみ! “風読み(バンデルオーラ)”を使っているのなら、そう遠くにはいないはず!



「ディメンション・スキャン!!」



 周囲の空間に対して探知の魔力を放った。それはこの部屋だけが対象ではない。屋外も対象にしている。姿が見えないのなら建物の上にでもいるはずだ!



「……いた!」


「居場所を特定したのですな!」



 案の定、屋根の上に魔力を放つ有機的な反応があった。おそらくロング・フォース本人に違いない。これで終わらせてみせる!



「ディメンション・リープ!」



 区間制御の魔術特有の転移魔術を使った。これは位置座標その物に転移する秘術で、空間把握を的確に行った上で発動すれば通常の転移魔術よりも消耗少なめで迅速に移動可能なのだ!



「年貢の納め時だ! スター・バースト!!!」


(ズドォォォォォォン!!!!!!)



 屋根上に転移後、魔術師らしき姿を確認次第、最大威力の魔術を放った! 相手に迎撃の隙を与えずに一撃必殺を込めて放った! 伝説の魔術師達だ。手加減してやる必要など無いのだ!



「……やったか?」



 魔力の極光が薄れていき、次第に視界が元通りになっていく。人影は……ない。あれをまともに食らえば姿形は残らない。ということは勝ったのだ。私は!



「思い知ったか。トープス先生を囮に我々を罠に陥れた報いだ!」


「……やはり、貴様は只の魔術師。狙撃手の傍らに観測主がいるという事を知らなかったようだな!」



 背中に痛みが走る。おそらく後ろから刺されたのだろう。逆に私は嵌められたようだ。もう一人いたようだ。しかも、この声は女性。とすれば、あの中の紅一点、幻惑のロスト・ワードだろう。



「まんまと私の幻術に騙されたようだな。おかげでロング・フォースも無事だ。彼の魔術を見破ったのは褒めてやろう。だがそこまでだ。我々、D・L・Cの格の違いを思い知っただろう?」



 振り向けば男女二名の魔術師がいた。完全に嵌められた。居場所を見抜かれた場合を想定して、幻術のダミーを用意し、探知魔術にかからないように身を潜めていたのだろう。さすがは幻惑の魔術師だ。それすら偽装できるとは……。



「空間制御の魔術……此奴、モンブラン家の者だな?」


「ああ、そういえば、突飛な分野を得意とする家系がいたな。気流に乱れを生じさせたのには驚いたよ。冥土の土産に聞かせてもらえんか?」



 男の方、ロング・フォースが私の魔術について興味を持ったようだ。私が虫の息なのを良いことに、知識を深めることを優先したようだ。舐めたマネをしてくれる。



「クッ……知りたいか?」



 背中の痛みを堪えつつ、私は相手の質問に答えて見せた。もちろん、只では教えるつもりはない。



「知りたいね。後学とするためにね。風属性以外で気流を乱れさせる手段があるのならば聞いておきたい。」


「では……我が一族…最大の秘術……見せてやろう!」


「離れろ、ロング・フォース!!」


「ヒュージ・ブラック・インタラプト!!」



 人間大の漆黒の穴を敵の目の前に出現させた。周囲の屋根材が吸い込まれていく。当然ロング・フォースも穴に吸い込まれていこうとしていた。こうなれば助かる術はない。



「貴様、図ったな! 絶対に許さ…な……い……、」


(シュゴォォォォォォォッ!!!!!!!!!!)



 漆黒の穴にその声すらも吸い込まれていく。絶体絶命の奈落の穴へと姿を消していった。だが……私にとってもそれは同じ。至近距離にいた故、自身も飲み込まれつつあった。悔いは無い。ただ自身の策が失敗し絶命するだけよりは、敵一人くらい道連れにする方が有意義だと感じたからだ。



「霽月八衝!!」


(シュバッ!!)



 奈落の穴に吸い込まれようとしたその時、澄んだ声と共に暗黒は切り裂かれ霧散した。何者だ? 私の秘術を無効化するとは……。傷の影響で霞みつつある視界の中で見たのは、東洋風の姿をした美しい女性だった。


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