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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第383話 見るからに罠ッすね。


 先代勇者カレルの複製体(クローン)の出現……それがもたらした俺たちへの衝撃はあまりにも大きかった。かつては世界を救うために活動していた故人が敵に回るというのだ。


 それは恩人を討たなければならないという罪悪感をもたらすため、戦うことに躊躇いが生じるのも事実だ。だが羊の魔王を倒す上でどうしても乗り越えなければならない困難なのは紛れもない事実だ。


 殺してでも進む、俺としては絶対にそれを回避したいと思っている。何らかの解決方法を見つけ出すために塔の中を突き進む事にした。俺の”八刃”ならそれが可能であるということを信じて……。そしてその道中で問題が起きた。



「ほれ、見てみ。よう見たらちょっと動いとるやろ? 生きとるさかいに呼吸くらいはしとるんや。そこだけはコイツらも誤魔化しようがないんや。」



 塔を突き進む中で大量の宝箱が点在している部屋に辿り着いた。まあ、こんな魔王の本拠地なんだし、目的もお宝ではないためスルーすればいいのかと思いきや、そうもいかないのが厄介なところだった。だってな、「この先進むには宝箱の中にある仕掛けを作動させないといけないよ?」とかいうメモ紙が落ちていたのだ。



「ほー、確かにちょっとだけ動いてるな。」



 僅かに蓋の接合が歪んだりしては元に戻っている。これで見分けるということらしい。これは明らかに(ハリス)の用意した罠なのは間違いないが、ここで行き止まりになっているので従うしかなかったのだ。


 ここはゲンコツのオッチャンの出番である。ダンジョンの専門家のレクチャーを受けつつ、このトラップの攻略方法を模索しているというわけだ。宝箱の罠としてのお約束、”人食い箱(ミミック)”が多数存在してるのがオッチャンの鑑定で判明した。



「でも、こういうのって生物の気配すら感じないんだけど、どういう仕組みなんだろう?」


「ああ、それはな開けるまでは仮死状態になっとるからなんや。要するに蛙とか熊みたいに冬眠してるのとおんなじっちゅうこっちゃ。」


「半生物、半物質、それがこの魔法生物(ゴーレム)の特徴だ。世界最古の無人セキュリティシステムだからな。」



 オッチャンに加え、ファルもトラップの解説に加わっている。オッチャンはあらゆるトラップに精通しているが、あくまで機械式の物の解体・解除を専門にしている。


 ファルはトラップの専門家ではないが、魔法が関わっている罠に関しては詳しいので、両タイプのトラップに対応できるのがこのパーティーの強みだ。なんでウチらだけ?というと、リーダーの俺がアホの子でそそっかしいから万全のメンバーにしたのだと、ファルは語っていた。



「ああ、それは当人に会ったことがあるから由来は知ってる。」



 現存する最古のミミック、フォグナーさんなら学院で知り合いになった。世界各地に存在しているミミックは彼を雛形にして量産された物だとも聞いた。でもそれはあくまで姿形を模しただけであって、彼のように高度な知性を兼ね備えているものは数少ないという。


 彼と同時期に産み出された個体、最初期型(プロトタイプ)なら彼と同等の知的生命体らしいが、そのほとんどはあくまで罠としての機能しか有していないそうだ。まれに魔術師が研究のためや興味本意で高い知性を持たせることもあるらしいが、かなりのレアケースであるらしい。



「でも、トラップとしてはコスパが悪いんじゃない? 魔法生物だから簡単に作れるわけじゃないでしょ?」


「そうでもないんや。初期投資と手間はかかるかもしれんけど、長い目で見たらコスト・パフォーマンスはええほうなんやで。他の機械式の罠とか魔導術式なんか一回作動したら終わりの使い捨てのヤツが多いこと考えたら、優秀なモンや。」


「魔術タイプの罠は性質上、仕込む魔力エネルギーを最小限にしないと、かえって探知に引っ掛かるからせいぜい単発発動の物しか仕込めないのさ。あくまで箱の施錠と同程度に留めて擬装するというわけだ。」


「トラップ仕掛ける側も大変なんだな。」



 ダンジョンに侵入してきた冒険者とか盗賊を倒すのに、モンスターやらの戦力をなるべく消費せずに仕留める必要があると感じているからこそ、迷宮の主(ダンジョン・マスター)は苦心するのだろう。


 これはある意味、国が城塞を防衛するために策を講じるのと似ていると言えた。将軍や軍師クラスの人の戦略眼に全てが掛かっているのは間違いないだろう。「簡単に攻略されたら悔しいじゃないですか?」なんて言葉が残っているのも頷ける話だ。



「これでなんとかミミックを回避するコツはわかった。除外した物の中から仕掛けが付いている箱を探していかないとな。」


「せや。本番はこれからや。一つずつ判別して、罠解除しての繰り返しになるやろうな。」



 ミミックだと判明した箱はファルが順次、魔法で凍結させて機能させないようにしていっている。他の罠が発動した拍子にショックでも与えたりしたら暴れだされても困るからだ。凍結させておけば大体は起き上がってくることはないらしい。



「しかし、これはどういうことかな? どうやったって開けようのないところに設置されてる箱があるんだが?」



 蓋の開け口が壁やとなりの箱にぴったりとくっついていたり、中には開け口がどう見ても床の方向を向いているのがあったり不自然な物が点在している。開けさせる気がないのか? 開けられるものなら開けてみろ的な意味合いで設置されているのだろうか? 相手はあの(ハリス)だ。一体何を企んでいるのやら?

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