表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
379/407

第379話 ギガンティック・シザーズ


「そらそら! 早くなんとかしないと体が真っ二つになっちまうぜ!」


「ぐう、うぐぐ!!」



 断頭鋏ギガンティック・シザーズ解禁を皮切りに猛然と攻める。相手は手で刃を受け止めダメージを最低限に留めているが、刃は肉に食い込み流血をもたらしている。ようやく目で見てハッキリとわかるダメージを与えたという事になる。


 だがそんな軽い切り傷程度なら一瞬で完治させてしまうだろうから、こんなのはダメージのうちには入らないだろう。魔族ってのは原型を留めない程のダメージを与えないと安心できはしないからだ。



「はは、こんなハサミごときに殺されたら一生の笑い者になっちゃうよ。」


「こんな事で死ぬようなタマじゃねえだろ? もっと本気を出せ! 痩せ我慢しねえで真の力を見せてみな!」



 相手は武器を取り落としてしまっている。今までの激しい打ち合いですら、手放さなかったモノをあっさり手放しているのだ。さすがに武器の隠し機構までは予測できなかったんだろうな。片手程度では防ぎきれないと見ていいだろう。


 だが、防御のために棍棒(グレート・クラブ)を使っていないのは妙だ。ソイツを鋏の間に挟み込めば切断を阻止することは出来たはずなのに? 武器に傷が入るのを嫌っているのか、それとも自らの腕力だけで防ぐという意地の表れなのか? 慎重に様子だけは見たほうがいいかもしれん。



「くく、お前のような犬の魔王がただのコボルトの姿で終わるとは思えねえ。必ず真の姿ってのがあるはずなんだ。」


「ぬ……大した自信だね? く……何か根拠でもあるのかな?」


「そういうことだ。お前も”ゲウォルダンの獣”の伝説くらいは知っているだろう? 人間社会の事情通なら耳には入ってるだろうよ?」



 ”ゲウォルダンの獣”……歴史に名を残す凄惨な獣害事件のことだ。いや、真相のわかった今では魔族による大量殺戮事件と言ったほうがいいかもしれない。200年ほど前に獣人狩りを行っていたテンプル騎士団の記録によると、獣人を捕え次々と処分していた際に一人のコボルトが脱走した事件に端を発しているという。


 ある時、収容所からコボルト達が集団で脱走する事件が発生した。早急に追跡部隊を派遣し掃討を試み、その殆どは捕縛または殺害に成功したものの、リーダー格のコボルトだけが行方不明になってしまったのだ。そこから数年ほど追跡捜査は行われたが、手がかりは殆どなく事件は迷宮入りするものと思われていた。



「その伝説に出てくるコボルトってのがお前さんそっくりなんだよ。これは偶然の一致かねぇ?」


「ぐ……偶然だろうよ。ぬ……流石にオレはそんな年寄りじゃない。う……何代も前の話だよ、そんなの。」


「ハハ! そうだろうな。俺もそこまでバカじゃねえ。お前と同一人物なんて思っちゃいねえよ。」


「…。」



 行方不明になった数年後、ゲウォルダンという町で殺人事件が多発するという事態が発生した。最初は一人、次は二人、そして更に五人と犠牲者は次々と増えていった。あるものは内蔵を食い破られ、またあるものは頭部が食い千切られていたりと、そのどれもが惨殺にと言っていいほど凄惨なものだった。


 明らかに人間の手による物では無かったため、獰猛なモンスターの手による物だと思われていた。事件が明るみになるとテンプル騎士団によるモンスターの掃討部隊が結成され、数々のモンスターが駆除された。


 だが、皮肉にも殺人事件は収まらず、被害者は増える一方だった。犯人が町中に潜んでいることを怪しんだ掃討部隊は捜査を進め、その末に下水道に潜んでいた一人のコボルトを追い詰める事に成功した。その正体は数年前に脱走したコボルトだったのである。



「だが、重要なのはそこじゃねえ。これはお前の真実の姿に関係する話なんだ。」


「く……何が言いたい?」



 追い詰められたコボルトは仲間の復讐のために”魔”の力を得たと語った。自分達を死に追いやった人間達、教団を逆に滅ぼす決意をもって魔族となる事を誓ったのだと語った。


 恨み言を全て吐き捨てた後、そのコボルトは倍の体躯へと化身し牙や爪は刀剣程に長くなり、獣毛も生半可な攻撃を受け付けない程にゴワゴワと盛り上がった。尋常ならざる姿に変容したコボルトは自ら魔王を語り、掃討部隊諸とも町中の人間全てを血の海に沈めた。


 事態を重く見た法王庁は大部隊を結成し事に当たろうとしたが、その直前に舞い降りた一人の天使、”天翼騎士(セラフ・ナイト)”によって撃ち取られる結果となった。後から話全体に尾ヒレ背ヒレ付いていった可能性はあるが、殺戮事件が起きたのは真実である事は間違いない。その爪痕はまだ現地に残されているのだ。この一連の話を”ゲウォルダンの獣事件”と後世呼ばれることとなった。



「う……”天翼騎士(セラフ・ナイト)”が現れたんだってね? 現れるのを願ってる? く……それとも、それを超えて見せるとでも思ってんの?」


「まあ、超えてやるとは思っているさ。でも俺が言いたいのはそういうことじゃない。その話に出てくる”ゲウォルダンの獣”みたいになってみろよ、と俺は言いたいんだ!」



 記録上のコボルトも小柄な体からベヒモスに匹敵する体躯へと化身したと言うんだ。そのコボルトが魔王だったかどうかは定かではないが、事件の状況からして只の魔族の仕業とは思えない。


 教団の中では伝説として語られている”天翼騎士(セラフ・ナイト)”が出現した程の事件なのだ。正体が魔王でなければその相手として釣り合いが取れない。俺は”ゲウォルダンの獣”の正体が数代前の犬の魔王に違いないと確信している。だからこそ、目の前の魔王も真の戦闘形態を持っているに違いないのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ