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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第374話 メンシェン・カタパルト


「ハハッ! いきなり俺たちと出くわすなんてついてなかったな?」



 イカツイ義手を着けた大男が威勢よく先頭を切って現れた。団長のタンブルが不在の間に塔の中で予期しない相手と遭遇するとは。しかもこの俺、イツキとキノ、センベイの3人だけで事に当たる羽目になった。


 最近迎え入れたタニシとかいう奴が突然行方不明になったことがそもそもの原因だ。キョウナの魔術で探りを入れたところ、異空間に囚われているということが発覚し、タンブルはキョウナを伴い救出に向かったのだ。



「うるさい。いずれはお前たちとも決着をつけるはずだったから、少しその機会が早くなったというだけさ。」



 処刑隊特別任務班、通称”不可視の鎌インビジブル・シックルズ”だ。教団に仇なす存在や教義に反した者を秘密裏に処刑する恐るべき集団として知られている。俺たちクロガネ団にとっては目の上のたんこぶといったところだ。そんなもんだから、いつ遭遇してもやりあう覚悟は決めていたが、(ハリス)の攻略中のタイミングでこうなるとは思っても見なかった。



「俺も最初は(ハリス)の相手だけをすることになると思っていた。イグレスや勇者と競い合う形での掃討戦、楽勝になって下らん戦いにならなくて済んだというわけだ。」


「そりゃお楽しみなようで良かったな。こっちは羊狩りのつもりでいたら、狼を駆除する羽目になったんだぜ? 勘弁してもらいたいな。」


「ケッ! お前らも犬っころの癖に俺たちを人食い狼みたいに言いやがって。勇者は狙いのうちに入っていないのかよ? つくづく魔族ってのは思考が理解できんぜ。」



 勇者は標的に入っていない。今のところ、俺たちに害を成す存在ではないとタンブルが判断しているからだ。あの勇者は身内に大魔王の系譜の女を仲間として抱えている上、教団から煙たがられている噂があるので共闘できるかもしれないと思っているらしい。俺たちの目的は教団をぶちのめす事にあるし、他の魔王とは馴れ合うつもりはないからだ。どちらの行動原理も相容れないと見ている。



「お前らに一つ聞いておく。これは(ハリス)の奸計である可能性を考えていないのか? 俺たちは互いにそれぞれ異なる入り口から入ったはずだし、偶然この場で出くわすなんて奴にとって都合が良すぎる。ここは奴のテリトリー内だ。内部構造を組み替えて俺たちが遭遇する様に仕向けたのだと。」


「そうだろうよ。如何にも魔族の考えそうなことだ。自分達の戦力を消耗するより、敵同士の戦力を鉢合わせる方が理に敵っている。こんなものはガキでもちょっと考えたらわかることだ。」


「だったら俺たちをスルーするという選択肢もあったはずだ。無駄な消耗を避けたいとは思わないのかよ?」


「無駄? 俺たちにはそんなものは端から存在しないぜ。むしろ、敵対している奴等と仲良しこよしなんてお花畑的な思考の方がヘドが出る! お前らじゃなくとも、勇者共と出くわしてたなら躊躇いなく決着を付けに行っただろうぜ!」



 義手を着けた男、リーダーのブレンダンは戦闘開始の合図代わりに傍にいた小男、副長のギリーに指示を出した。ブレンダンは義手をこちらに差し向けた状態で構える。凶悪な鍵爪を展開した状態で中央部に存在する杭打ち機(パイル・バンカー)を露出させている。そこまで準備が整った上で、義手の部分にギリーが飛び乗った。



「コイツは挨拶代わりだ。受けてみな、”人間砲弾メンシェン・カタパルト”!!!」


(ドゴアッ!!!!!!!!!)



 仲間を杭打ち機(パイル・バンカー)で射出した! 小男のギリーは義手の杭の先端部に乗り、射出と同時に自らの体を投石機の石弾の様に突進の勢いとして利用したのだ! その手にはダガーが握られており、俺たちを一網打尽にするつもりのようだ!



「イツキ、危ない!!」


「ぬっ!?」



 身構え技に立ち向かう覚悟を決めた俺を横へ無理矢理押し退けた奴がいた。センベイだ。どうやら俺を守ろうと体格の大きさで盾となることを買って出たつもりなんだろう。俺自身が仲間二人の代わりに先人を切ろうと思っていた矢先に、その対象から守られる羽目になるとは……。



(ズゥンッ!!!)


「ううっ!!」


「クソッ、このデブ犬め!」



 無理矢理俺を庇ったためか、相手のダガーが深くセンベイの腕に食い込んでいた! だがそのお陰か、相手の体や武器を押さえ込むことに成功している! 相手の攻撃を敢えて受けることでその動きを封じる事を狙っていたのだ! 全く無茶な真似をしやがるもんだぜ!



「そらそら! これでアンタはもう逃げ出せないぞ! このまま絞め落としてやる!」


「く、くそ、”人間砲弾メンシェン・カタパルト”をまともに受けて立っていられる奴がいるなんて!」



 センベイは得意の柔術の技で相手の頸動脈を締め上げている。腕にダガーが突き立っているとはいえ、奴の柔術に一度かかってしまえば逃れることは困難だ。そういう意味では相手の手勢を一人封じたと言ってもいいだろう。残るは3人だ。



「ギリー、何やってやがる! そんな拘束くらいすぐに逃げ出して見せろ!」


「コイツ、手強いですぜ! 俺の力じゃびくともしねぇ!」


「諦めな。センベイの技から逃れるのは至難の技だぜ。ああなっちまったら、自力で脱出することは出来ない。逃れられるのは、意識を失った後か、あの世へ行っちまった後になるんだぜ!」



 あとはブレンダン、カボチャ頭、ダッフンド族の男の3人か。一人押さえたとはいえ、人数的に不利なのは変化していない。数々の魔族を屠ってきた奴らだ。俺らだって苦戦するのは必至だ。どうにかして、タンブルの不在を埋める様に立ち回らないといけないな……。


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