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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第373話 コンパッション・ブレイド


 オリバーを投げ技の体術で地面にたたき伏せた後、私は追撃を入れるべくすぐさま立ち上がった。剣を構え、ある男の技を頭の中に思い描きながらひと思いに振り下ろす。



慈悲の刃コンパッション・ブレイド!!」



 オリバーと私は戦友とはいえ今は敵同士として対峙している。だが、彼を死なせるわけにはいかない。例え魔王の配下になっていようと関係は無いのだ。ならばその魔王の(くびき)を断ち切れば良いのだ。かつてロアが私の拘りを断ち切ったように!



(ザンッ!!)


「ぐあっ!?」



 オリバーは斬られ短く悲鳴を漏らしたものの、まもなく違和感に気付いた。斬られたはずなのに傷一つ付いていない事を不思議に思っているようだ。それもそのはず、魔王によって植え付けられた邪心を断ち切ったのだから体には何一つとして損害を与えていないのだ。



「こ、これは一体……!?」


「それこそが勇者から学んだ慈悲の技。私がかの流派の奥義を私なりに解釈し、自らの技としてアレンジを加えたものだ。実際の奥義はこれを遙かに超える物だ。私に出来るのはせいぜいここまでだよ。」


「イグレス様が慈悲の奥義を体得していたなんて……。」


「さすがエドだニャ。こんな神業を再現して自らの物に出来ているなんて大したものニャ!」



 私としても我ながらよく再現できた物だと思う。最初はかの流派の奥義そのままを再現しようと苦心していた。当然のことながら、あの奥義は他の基本技を体得してこそ実現できる物なのだと身を以て理解することになったのだ。


 ならばせめて自分の今までの体得した技を元に再現できないかと、ひたすらに鍛錬を続けた結果、独自の技として習得に至ったという訳である。



「貴公にこのような力があったとは……。」


「何も私の力だけで成し遂げた訳ではない。勇者ロアとの出会いや仲間への強い思いやりを持って行動したから実現できたのだ。おそらく勇者の加護、”勇気の共有”の力も作用した上での事だと私は理解している。」


「これが”勇気の共有”の力か……。」



 ”勇気の共有”……これは伝説に謳われた勇者の秘めたる力である。最もこれを体現できた勇者はごく少数であったとされ、非実在説すら流布していた程の幻の奇跡だったのだ。ロアの場合も最初からその力が確認されていたわけではない。


 よくよく振り返って考えてみれば、その力が発現していたのだとすれば合点のいく事象が多かったのだ。彼の身近な人間が彼に触発されて、次々と才能を開花させていったのだから間違いなくその力によるものだと確認できたのである。



「むう!? 私の部下までもがあの少年一人の手によって倒されている!?」


「なんと!? 彼一人でアスチュート隊を倒したというのか!?」



 ただ一人を相手にしているだけだと思いきや、全ての隊員を一人で倒してしまったようだ。しかも私と同じく一つも流血をさせずに決着を付けたように見える。当の本人は自ら手にした刀剣に見入っており、周囲の様子に気にかけていない様子だ。彼の武器は鬼との戦いで破損したと聞いていたが、巫女殿に修復してもらっていたのだろう。刃には美しい彫刻がなされているのが見える。



「我らアスチュート隊がここまで完膚なきまでに倒されてしまうとは……。しかも手傷さえ負わされずに……。」


「元々、我らとて魔王の軍勢と交戦する備えでやってきたのだ。貴公らを倒す事が目的ではなかったのだからな。」



 意図しない者との交戦には戸惑うばかりだったが無駄な流血を免れる事が出来たのは幸運だったと言う他ない。(ハリス)の奸計にかからずに済んだのは不幸中の幸いだった。



「む……? これは……?」



 安堵していたそのとき、オリバーの体から一枚の紙切れが落ちてきたことに気付いた。私は即座にそれを拾い上げ確認をしてみた。その紙には何者かが書き綴った文言が書かれていた。その内容とは……、



《使えないヤツらめ! バツとして筋肉爆裂の刑に処す!!》


「なんだこれは!?」



 奇妙なメモ! その内容は我々の一部始終を見ていたかのような内容だった。これは(ハリス)が出没したときに現れるという怪文書なのでは? 慌てて周囲を見渡すと、目の前のオリバーを含め倒れているアスチュート隊のメンバー達が突然うめき声を上げ始めた! そして奇妙なことに体の至る所がモコモコと隆起を始めているのである!



「うぐあ!」


「ぐうう、ああっ!?」


「むむむ!? 体が、全身が沸き立つように熱い!!」


「どうしたオリバー!? 何が起きているんだ?」



 体の隆起は収まることを知らずますますその頻度を増し、彼らの体つきが大きく変化していった! 大柄で筋肉質な体格へと徐々に変化していき、その膨張に耐えきれなくなった装備品が一部はじけ飛ぶ程であった! 彼らの姿は一律このような特徴へと変わっていき、仕舞いには兜もはじけ飛んで全てが判を押したように同じ顔つきになってしまった! この姿はまさか……?



「これはオニオンズ!? (ハリス)の尖兵の人造人間(ホムンクルス)に変化したというのか!?」



 確か……オリバー自身も言っていた。彼らの肉体を作った技術の源泉は人造人間(ホムンクルス)の技術にあると! その応用で作ったのだとすれば、肉体の組成物質自体は共通しているのかもしれない。


 急激に変化させられるのを可能にしたのは、そのためなのかもしれない。復活した英霊が裏切った時の保険としてこのような保険を仕込んでいたのかもしれない……。

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