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第37話 “鬼”か、“魔”か?


「東方の魔族とでも言うのか? そんな者が我々の邪魔をする意味があるのか?」



 東の魔族を名乗る男に仲間を殺されファイアー・バードら残りのメンバーは戦々恐々としている。異質且つ圧倒的な力に恐れ戦いてしまっている。つい先程まで私達に対し、優位な立場を取っていたとは思えない姿に変貌してしまっている。



「……意味? 意味などなかろう。では、うぬらは目の前を飛び回る羽虫を気にせぬというのか?」


「は、羽虫? 一体何の話をしている?」



 鬼の面の男は突拍子もない質問をしてきた。まるで修行僧が悟りを開くための問答をしているかのようだった。あまりにも唐突すぎて意味不明だった。



「うぬらは我にとって羽虫も同然。振り払う、掴み潰し、はたき落とす。それと同然の事をして何が悪い?」


「我々を羽虫同然だと思っているのか!?」



 男は平然と恐ろしい事を口にした。私達を何とも思っていなかったようだ。確かに彼の行動はそれを裏付けるかのようであった。人をいとも簡単に、残虐且つ尊厳を奪うといったことを行った。最早、この人物は人と考えるのはやめた方がいいかもしれない。正に“魔”物と呼ぶに相応しかった。



「理想も何もなく、我々の計画の邪魔立てをするな! 羽虫のようにあしらわれては命を落とした仲間も浮かばれない!」


「理想? 計画? ……笑止。下らぬ信念よ。我の如き、果てなき強さへの欲求に比べれば、うぬらの戯言など児戯と同然なり!」


「只強いだけの事に何の意味があるんだ!」


「この世は強き者だけが存在としての価値を為す。弱者、敗者は塵芥の如きなり。」


「馬鹿にしやがって!」



 最早、会話など成立していなかった。両者の価値観はあまりにも乖離している。このままでは平行線を辿るばかりだ。とはいえ彼らの計画を阻止する側の私達にとってこの状況はある意味チャンスと言っても良かった。



「落ち着いて、ファイアー・バード。冷静に考えるのよ。彼は強者を求めている。その欲求に応えてあげれば、私達の計画は成就出来るかもしれない。」


「なん……だと……?」



 仲間を殺され激昂するリーダーを宥めるように、アンネ先生はこの状況を打開する策を提案しようとしていた。鬼の面の男を逆に利用するとでも言うのだろうか?



「ねえ、あなた? 強い存在を求めているのよね? だったら会わせてあげるわ。少なくともこの迷宮には二人はいる。」


「我は魔の力を持つ者と八刃を極めし者を追い求めてここへ来た。うぬの言う一人は我が追う者と同一であろう。……だがもう一人は知らぬ。その者とは如何なる者か?」



 以外にも男は興味を示した。それよりも気になるのは彼が追ってきたという存在だ。この場所に現れた際も口にしていたが……? 魔の力の能力者に該当するとすれば、グランデ嬢の事かもしれない。そしてもう一人は勇者殿で間違いないだろう。



「その者とは……古に封印された魔神よ。」


「うぬの話は誠であろうな?」



 このままでは二人に危険が及ぶ。なんとか食い止めたい所だが、それは同時にD・L・Cの企みも阻止できない問題が出る。身動きが取れない今の状況が歯がゆい!



「今の世に解き放てばある意味、世界を滅ばし兼ねない危険な存在よ。」


「西方の太古の魔神共の悪評は聞き及んでおる。手に負えぬ故、封印されたということか? 面白い。我と戦うに相応しい者かもしれぬ。更なる高みに至るための糧としてくれようぞ!」


「では、交渉成立ね。これ以上は私達に危害を加えないことを約束してくれる?」


「それはうぬらの行動次第。うぬの言う話が偽りであった場合、もしくは我が邪魔と判断すれば命の保証はないと思え。」


「それは保証するわ。私達も命は惜しいので。」



 最悪の結果になった! 両者が結託するだなんて! このままでは魔神が解き放たれてしまう! 鬼の面の男がどの程度の強さかは底が知れないが、魔神に勝てるとは言いがたい。あくまで彼も人間である。



「はは……。とりあえずは我々の計画が阻止されずに済んだ。でかしたぞ、Ms.リーマン!」


「自分の利益に繋がるのであれば悪魔との契約も喜んでするわ。私としては勇者一味に復讐できればそれでいい。」


「うぬらなりの策を弄しておるようだが、我には関係ないことだ。この迷宮の先に進めば良いのだな?」


「ええ。では行きましょう。その者達の元へ。」



 万が一、彼が勝てたとしても、魔神に勝てるほどの人間が存在している事事態が問題だ。しかも、勇者殿やグランデ嬢の命を狙っている。どちらに事態が転んでも、最悪の展開になるのは間違いなかった……。



「私達をどうするつもりですか?」


「そうだな、こうなった以上は貴様らは用済みだ。好きにするが良い。邪魔をするのであれば命はないぞ?」


「散々利用しておいて、これですか……。」



 私とローレッタは用済みと判断されたようだ。とはいえ、命を奪う訳ではないらしい。これは好機ではあるものの、事態を好転する為の切り札が全くと良いほど無い。……いや、あるにはある。でも、彼らよりも先にあの場所に到達できるのだろうか? それが出来たとしても、あの鬼の面の男を倒す手段はあるのだろうか……?

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