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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第367話 貫きの騎士、オリバー・アスチュート


「本当に貴公なのだな?」


「くどいぞ、イグレス。お前ほどの男が見間違え等という事はあり得ないだろう?」



 目の前にはかつて戦死した友がいる。奴は魔族との戦いで命を落としたのだ。共に強敵と戦い、私の腕の中で息を引き取った。彼の名はオリバー・アスチュート。クルセイダーズでは”貫きの騎士(スティンガー)”の異名で知られていた槍の名手だ。



「しかもその気配、アンデッドと呼ぶにはほど遠い。それなのに何故? 私には到底検討などつかぬ。死者が蘇るなどといった事がありえるのか?」


「だからこそ貴公とこうして相対しているのであろう? 我は蘇った。そして、貴公との決着を付ける機会を与えられたのだ。」 



 若い頃、彼は私と共に鶏の魔王(ポジョス)の配下、五色羽の一人”紺碧の騎士(ブルーナイト)”の異名で知られる、ケイン・アイスフォゲルに挑んだ。しかし、あの頃の私たちには荷が重い相手だった。


 予期しない遭遇だったとはいえ、あまりにも無謀な挑戦と言えた。その代償としてオリバーは命を落とし、私も顔に大きな傷跡を残すことになった。その傷跡は敢えて残してあの日の戒めとして残している。



「貴公は複製人間(クローン)と呼ばれるものを知っているか?」 


「その様な物は聞いたことがない。」



 後ろにいる仲間たちにも促してみる。だが、案の定、首を左右に振るだけで声を上げるものはいなかった。パーティー内に魔術師が一人もいないため、その様な知識に詳しいものがいないのだから仕方ない。中には戟覇殿の様に異国の者もいるのだから至極当然とも言えた。ファルや賢者(サヨ)殿でもいればわかったかもしれない。



「まあ、貴公らが知らぬのも無理はない。知見に優れた魔術師でさえ知っている者は少ないのだから。古代に禁呪指定を受け人知れず封印された技術だからな。」


「禁断の秘術か。いかにも魔王らしい。禁呪でさえためらいなく使用するとは。


「要は人造人間(ホムンクルス)の延長線上にある技術だ。生命の体の欠片からその生命を複製する技術、例え死者でも欠片さえ現存していれば肉体を蘇らせることができる。私はその技術によってハリス様の配下として蘇ったのだ。」



  なんということだ! 人造人間(ホムンクルス)技術の応用で故人を蘇らせるとは! 羊の魔王(ハリス)は悪趣味な生体兵器を研究し、自身の配下として用いている事で恐れられていたが、その様な技術にまで及んでいるとは驚愕の事実だ。


 しかもそれを悟らせることなく、この事態に投入してくるとは……。よほどこの技術に自信があるに違いない。一度に攻め込んで来た我らを一網打尽にするつもりなのだろう。



「貴公ほどの者が魔王の軍門に下るとは、見損なったぞ!」


「魔王とはいえど、我を再び現世に蘇らせてくれたのだ。しかも、我が部下たちをも共に蘇らせてくれたのだ。恩義に報わなければならぬ。例え誰であろうと、その忠義を尽くすまでだ。」



 彼だけではない。その部下たちまでもが共にいる。あの日の戦いで命を落とした戦友たちがあの日の姿のままで蘇っているのだ。普通ならば再会の喜びを分かち合いたいところだが、今はそのような状況ではない。頼もしい味方が揃って強敵となって我々の前に立ちはだかっているのだ。



「貴公らと戦うことは不本意だが、私はクルセイダーズの騎士だ。魔王を討伐する使命から逃げるわけにはいかぬ。貴公は私が直々に相手をしよう!」


「そうでなくては困る。生きていれば雌雄を決するという誓いを忘れてはいない。その機会が今、廻ってきたのだ!」



 互いの剣と槍を打ち合わせる! 戦いの合図はなくともお互いにそのタイミングは理解している。共に鍛練をし、数々の戦場を渡り歩いて来たのだ。遠慮などいらないのは熟知している。それほどまでに通じあっていた仲間なのだ。



「我が死んでいる間に随分と腕を上げたものだな。見違えたぞ!」


「当然だ。貴公の知っている私はまだまだ未熟だった頃だからな。あの時と同じと思ってもらっては困る。」



 彼とやり合うのは約10年ぶりとなる。その間に昔とは比較にならないほど鍛練を繰り返し強くなったと自負している。にもかかわらずだ、彼は現在の私に難なく追い付いてきているのだ。これは明らかに生前よりも強くなっている!



「妙なものだ。貴公はブランクがあるにも関わらず、私に引けをとらない強さを誇っている。魔王に力を与えられでもしたのか?」


「我を見くびるなよ。我とて容易に力を貰うような真似はしていない。事前に現在の貴公の情報は知らされていたからな。足りない分を補う鍛練は十分に行った。共に鍛練を行う仲間にも恵まれていたしな。その者達の名を知れば貴公も驚くであろう!」


「なんだと!? 貴公の他にも蘇った英雄がいるとでも言うのか!?」



 何故私はその可能性を考えなかったのだろう? いや、むしろ考えないようにしていたのかもしれない。オリバー以外に有力な英雄が蘇っているのだとすれば、我々の勝ち目がますます見えなくなってしまうのだ。他にいったい誰が蘇ったと言うのだろう?



「先代の風刃の魔術師や勇者殿が蘇っていると知ればどうする? 我のような志半ばで倒れた者よりもよっぽど驚異であろう?」


「まさか、カレルが蘇っていると言うのか?」



 恐るべき事実を知ってしまった。オリバーと並んで良き友であったカレルまでもが魔王の配下となっているとは! これは大変な事になってきた。目の前のオリバーを倒したとしても、かつての英雄や友が敵として待ち受けているのである。だが、こんな苦境であっても負けることは許されない。人類の存亡を賭けた戦いなのだから!

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