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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第2幕 K'(ケー・ダッシュ)
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第353話 K’の真価


「ファルさん!?」



 ファルさんはカレルさんに斬られて、その場に倒れ込んだ。すかさずメイちゃんが側に駆け寄って抱き起こしても反応がない! 完全に気を失わされてしまっている。



「ファル君、残念だが今の君では私に追いつけはしない。」



 眼の前で信じられない事が起きた。カレルさんがファルさんに向けて”霽月八刃”を放った。ファルさんが放った勇者の一撃をかき消した上で本人にも打撃を与えたように見えた。しかも手傷を与えることなく、ファルさんを無力化した。これは”あの奥義”でしか実現できない現象だ。



「安心してくれ。怪我はさせていない。しばらくの間はまともに動けないだろうけどね。」


「あなたがあの技を極めていたなんて……。」


「先程も話したが、間近で自分事の様に見ていたからこそ実現できたんだ。これはある意味、元勇者としての特権だとも言える。」



 彼の魂は死後、額冠の中に封じられ、常日頃からロアの戦いを見守っていた。歴代の勇者は殆ど、その様な形で現行の勇者のサポートをしているのだと、サヨさんから聞いたことがある。


 それでも、死んでから転生して別の人間として生まれ変わることはあっても、そのまま同じ人間として蘇るなんてことはなかったはず。現行の勇者の経験や技術を得た状態で戻ってくるなんて前代未聞の事態だと思う。



「私が習得したという事に驚いているみたいだが、お嬢さん、あなたも大したものだと思うよ。さすが、血は争えないものだと思ったよ。」


「あなたは私のお父さんが誰なのかを知っているんですね?」


「知っているとも。むしろ、実子である貴方よりも余程知っていると思うよ。いや、下手をしたら、あなたのお母さんよりも長い時を過ごしたとも言える。彼は私の師であると同時に父親代わりでもあったから。」


「……!?」



 彼の隣りにいるお母さんも彼の言葉にうなずいている。血のつながりはあっても父の顔を知らないまま育った私には、とても羨ましいとさえ思った。そして同時に父は何故、私の前に一切顔を見せてくれなかったのだろうと思う。その事を考えた途端に胸が苦しくなるのを感じた……。



「私があの事件で命を落としていなかったのなら、あなたと対面する機会もあっただろうね。でも、そうならなくて良かったと思う。」


「それはどうしてですか?」


「多分……あなたとは敵対することになっていたと思う。あなたを斬ることにならなくて良かった。そういう意味で言っているのさ。」



 彼が死んでいなければ、ロアとは会うことがなく彼と対面する羽目になっていた? 私はあのままだったら、デーモン・コアの欠片が肥大化していずれはコアになり、魔王と化していたのかもしれない。そうなれば勇者との戦いは避けられなかったはず。運命の歯車が狂っていれば、彼とは敵対した状態で巡り合っていたのかもしれない。



「完全に魔族となっていないあなたとは会えなかっただろうね? 私とは違いロアはあなたを魔の力から開放する手段なんて持ち合わせていなかったから。従来の勇者は魔族を撃滅するための働きしか出来ないわけだしね。」



 そうだった。勇者の誰もがロアのように流派梁山泊の奥義が使えるわけじゃない。彼と巡り合ったから、私は魔王の呪縛から開放されたんだし、それ以降の関係性も続けることが出来た。彼でなかったら、私はあの時点で死んでいたかもしれないし、生き残れたとしても、私はこの世に恐怖を振りまく魔王になっていたかもしれない。



「でも、結局敵対した状態になっていますよね?」


「敵対か。でも今は敵対しているとは思っていないよ。あなたを説得して仲間に引き入れるなんてことも考えられる。あなたのお母さんもここにいることだしね。」


「私を引き入れようというのですか?」


「そうだとも。むしろ、そうしてもらわないと困るんだ。あなたを斬るなんてことはしたくないから。」



 私を倒すのではなく仲間に? 羊の魔王の思惑とは違うのかもしれない。蛇の魔王のように私にアプローチをかけてきているわけじゃないし。独断での行動と見たほうがいいかもしれない。



(ジャキッ!!)


「コレが私の答えです!」


「エルちゃん!!」


「よう言うた! アイツもええ嫁はん持ったもんやで。」


「それでこそ、私の弟子よ!」


「そうか。結局私とあなたは戦い合う運命なのか。」


「あなたやお母さんが信じられないのではありません。私はただ、ロアを裏切りたくはないんです!」



 今の私があるのは彼のおかげなのを忘れてはいけない。彼が命をかけて、その場であの奥義を完成させたからこそ成り立っている人生。私が魔族にならずに済んだからこそ、他のみんなとも巡り合うことが出来たのだから。



「やっぱ、今の勇者はなんだかんだで器のデカイ男なんじゃないかい? 戦闘技量とか勇気とか知恵とか言うのを超越しているんだろうね。」


「フェリスさん?」


「カレル、エルフリーデ、アンタ達は下がってな。それよか、残りの三人と戦いな? アタイはあのお嬢ちゃんとやる。」


「そうか。逆にゲンコツさんやメイちゃんはあなたにとってやりにくい相手でしたね。」


「そういうことさ。お互い縁のない者同士での方がやりやすいってもんさ!」



 ファルさんのお師匠さんは私に狙いを定め、斬りかかってきた! 目にも止まらない速さで瞬間的に間合いを詰めてきている。心の準備もままならない間に想定外の相手と戦うことになってしまった!


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