第330話 名前に小さい”つ”が入る動物とは何でしょね?
「抹茶ソフトクリーム、3つ下さい!!」
地獄のスタンプラリーが開始され、早々に厄介なトラップに引っかかってしまったでヤンス!各ポイントの道中には誘惑がイッパイ! なんか楽しそうなお土産ものとか、美味しそうだけどよくわからない食材の食べ物とか軒を連ねているでヤンス! とうとうシャンリンちゃんの我慢が限界突破したので、買食いすることになったでヤンスよ!
「お待たせヤンス!」
「やった! とうとうお待ちかねの美味しいものが食べられるアルよ!」
「む、むう! オレの分まであるというのか? 仕方ないから食べてやろう。妹が食べる前に毒味をせねばならんから、仕方なく、だからな!」
「はい、はい。」
シャンリンちゃんが欲しがっていたのは間違いないんでヤンすけど、ティンロン君も挙動が怪しくなってたでヤンス。なんか、「我が国の味に比べれば二流」とか発言して、食べてもないお菓子、お料理をけなしていたでヤンしゅ。でもそういうのをチラチラ見ていたのをあっしは見逃していないでヤンス!
「フン、茶葉を粉末状にして混ぜ込んだだと? 小賢しいマネを! ……食えぬほどの味ではないな。客引きの見栄え重視と言うだけなら及第点だろう。」
「兄上、ごちゃごちゃうるさいアルよ。素直に美味しいと言えばいいアルのに。」
牛乳を氷で固めて作ってるみたいなのであっしは食べられないでヤンしゅ! くやしいでヤンスから後でなんか食べられそうなヤツを瀑食いしてやりたいでやんしゅう! 食べれるのに意地を張るティンロン君が羨ましいでヤンス。
「お茶の香りもして素晴らしい味ですわね。否の付け所は特にあるとは言えませんわ。」
「た、大衆的な観点では正解な味であろうと、オレは思うのだ。あくまで個人的な意見だがな……。」
よっぽど他所の味に負けたくない染まりたくないのが伝わってくるでヤンス。普段の食事の時も一々ゴチャゴチャいちゃもんを付けてたんで、いっつもウンチクとか聞かされてたでヤンしゅ! そのため食堂ではみんなから距離を必要以上に置かれたり、時間ずらされたりする処置がなされてたでヤンス! だからあっしらはボッチが加速するばかりだったんでヤンすよ!
「ねえ、ねえ! 犬の人! こっちにアナタに見た目そっくりな食べ物があるアルよ!」
「まあ! 確かに茶色で小ぶりな見た目でかわいいですわね。クロワッサンみたいですわ。」
「ぎょわ〜ん! なんかあっしを食べ物にしたような物体があるでヤンス!」
ちっちゃい穀物袋みたいな見た目の食べ物があるでヤンス! なんかあっしの胴体だけを並べたようにも見えるんでヤンしゅ。置いてある店のところには狐の絵が飾ってあるでヤンスな? 狐? きつね……? ワハッ! 思い出したでヤンス! メダカじいちゃんの好物が狐がなんとやらな食べ物だと言う話を聞かされた事があったでヤンしゅ!
「これはお米の入った料理だったはずでヤンス! その名もイネリ・ジュシ!!」
「イネリ? それはどういう意味、犬の人?」
「あー、えーと、あーと、そーの……?」
「はっは! うろ覚えではないか。所詮クソ犬。情けない奴よ!」
ああっ! 中途半端にしか情報が出てこないでヤンしゅう! お米が入ってて、酢であえてある事は憶えてるんでヤンス! 茶色の皮の正体が何だったか思い出せなくて、名前にも影響を与えてるのまでは思い出せるんでヤンスのに!
「た、確か、名前に小さい”つ”が入った動物が由来だったはずでヤンス!」
「正解はフォックス、キツネ! おイナリさんです! ちなみにいなり寿司とも呼ばれてます!」
「え? あなたはどなたですの?」
「た、たぬきが喋ってるアルよ!」
「違います! 近いけど正確には違います!」
え? なんか、聞き覚えのある声に見たことのある愛くるしいお姿……。なんでこんなところにいるんでヤンすかぁ! キョウナちゃんがいるでヤンス! ここにはあっしらしかいなかったはずが、はぐれてしまったパーティーメンバーとここに来て再会?
「ど、ドキーン! キョウナちゃん! 何故ここに?」
「また心の声が口に出てる……。もちろん、行方不明になったタニシ君を探しに来たんだよ!」
「あらまあ、お知り合いでしたの?」
「犬の人のお友達はたぬきの人だったアルか!」
「ほう? これがお前の与しているという物の怪の一味とやらか? 意外と普通ではないか。」
やっぱ、あっしが心配になって助けに来てくれたんでヤンすね? うれしいでヤンス! やっぱりキョウナちゃんはあっしの運命の人でヤンス! でも、ここでイキナリの乱入は許されるんでヤンすかね?
「心配すんなよ、タニやん。今は羊も蛇も他に気を取られて手薄になってるから。」
「ほうぁ! ダンチョーまでいるぅ!」
「いて悪い?」
「滅相もないでヤンス。悪くないでヤンスよ!」
だ、だ、だ! ダンチョーまでいるでヤンス! よく考えたらこの空間に入ってこれそうなのは同じ魔王の力があるからでヤンスかね? もしかしたら、キョウナちゃんの魔法の力も使ったのかもしれないでヤンス!
「なんだ、この黒い犬は! これはまるで……蚩尤一族ではないか!」
「この前いた鬼さんと同じ? 確かに黒い闘気で溢れているアルよ!」
「これが犬の魔王!? なんということですの!?」
やっぱそうなるんでヤンスね! ヘイゼルちゃんは魔王のことはご存知でヤンすけど、シャンリン、ティンロン兄弟はよく知らなくても、危険な存在だと直感で悟ったみたいでヤンス!
「何? お前ら? 殺るの? でも、オレ、すごく強いよ?」
「むうう、殺ると言うならやってやる! 梁山泊の名にかけて負けるわけにはいかぬ!」
「おうぁ! 二人共止めるでヤンしゅう!!」
大変な事になってきたでヤンス! 一触即発! 助けに来てもらって安心しようとしたら、こんなところでバトルに発展するとは思わなかったでヤンス! 戦ったら死人が出かねないでヤンしゅよう!