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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第328話 アシュラの如く


「ホホホ、どうかしら? これならあなたの剣術が付け入る隙きなど、一つもないわ! おとなしく切り刻まれなさい!」



 蛇の魔王が自らの依代として用意した異形の魔人。それは6本の腕を持ち、3つの顔を併せ持つ女性の戦士だった。それぞれの手には異なる武器を持ち、互い違いに攻撃を繰り出してくる。


 通常の相手なら生じる隙きを多数存在する腕で完全にカバーしている。まるで複数の人間を同時に相手している錯覚さえ覚える始末! 絶えず圧倒されるばかりだった。



「くっそ! 剣技に長けてるって訳でもないのに、こうも圧倒されるなんて!」


「ホホ、所詮、人一人の力など大したモノではないわ。いくら武勇に優れていようと、卓越した技を誇っていようと、頭脳に秀でていようと、多数の力には勝てないものなのよ。これはこの世の心理、正しいか間違っているかの話ではないの。」



 ハッキリ言って、蛇の魔王が繰り出す攻撃の一つ一つは凡庸で特に抜きん出ているというわけではない。もしかしたら、まだ潜在能力を発揮していないだけなのかもしれない。その分、凡庸な力だけで充分押せると見て、敢えて手を抜いている可能性もある。こちらが力尽き、ミスを犯すまでいたぶり続けるというような意志すら感じる。



「……空隙の陣!!」


(ガギぃっ!!!)


「オホホ、惜しかったわね? 通常の体を持つ人間ならここで終わっていたわよ。けれど残念。私は魔人の肉体を使っている。この程度防ぐのは他愛のない話よ。」



 攻撃の隙きを相手に見せて、虚を突いて死角から攻撃を仕掛けるのが空隙の陣だ。この技の性質を知らなければ防ぐ手立てはない。だが、この相手は見事に防ぎきった。空いた腕で防いできたのだ。


 それだけじゃない。側面に付いた顔が目視で確認した上で防御したのだ。もちろん技術云々の話ではなく、相手は反射神経と特異な体の特性で簡単に防いだのだ。



「無力だわね。本来人間なんて戦闘に特化した肉体ではないもの。獣にすら劣る。勝っているのは知性だけ。私達魔族からすればそれにしたって、お猿に毛が生えた程度の浅ましいモノでしかないわ。」


「猿に毛が生えたって? 最初から猿に毛は生えてるだろ。むしろ人の方が毛は少なくなっている!」


「あくまで比喩だと言うのに、つまらない揚げ足取りだこと。話の本質を理解できないなんて、認知の閥値に差があるとしか思えないわね。お馬鹿な勇者さん?」


「ケケ、言えてら! アホ丸出しの恥知らずってこった。」


「悪かったな、アホで!」



 ちょっとした揚げ足取りが、逆に馬鹿にされる羽目になった。口論で勝てるとは思っていないが、ちょっとした受け答えから知性のなさを見抜かれ罵られたのだ。こういう部分を見ると、蛇の魔王の領分は本来権謀術数にあるのだろう。


 武力の行使はあくまで俺を倒すための手段でしかないのだろう。他の武力に自信のある魔王達は人間と大差ないスタイルで挑んできたのだから、余計にそう感じる。



「技なんてさもしいモノね。あなたの技の数々は人間同士の戦いしか想定していない。今の私のように人間から少し形を外れただけで成立しなくなる。獣にすら劣る非力な力を技術なんてモノで補っているつもりなんでしょうけど、私からすればただの見苦しい悪あがきにしか見えないわ。」


「悪あがきってか? よくもまあ、先人たちが培ってきた技の数々を罵ってくれたな! 人が戦うため、生き残るために試行錯誤した努力の結晶を馬鹿にするんじゃないよ!」



 技を防がれようと果敢に向かっていく! 相手はあくまで体の特性、身体能力だけで戦い抜くつもりのようだから、その限界を思い知らせてやりたい! 技術や創意工夫自体でいくらでも食い下がれるのだと証明してやりたい!



「心でおしまいなさい!」



 左右から交差するように剣と刀が振るわれる! コレをまともに防御してたら、俺の体は剣ごと体を真っ二つにされてしまうだろう。だから俺は躱してやり過ごすという選択を取った!



「なっ!? 消えた!?」



 俺は姿勢をかがめ、相手の足元へと滑り込んだ。だから相手の視界から消えたように見えたのだ。流石に顔が3つ付いていようと、足元に目は付いていないのだ! 俺はそのまま相手の足の間をくぐり抜ける! これも相手の体が妙にデカイから成立したことだ!



「どんだけ肉体的に有利だろうと、背中と股間には顔はついてないだろ! これでも喰らえ! 凰留撃!!」



 相手の足元をくぐり抜け、足元からすくい上げるような一撃を見舞う! これなら相手も防げないはずだ。足元で見えにくく、しかも背後からの一撃だ。徹底的に死角を狙いすました執念の一撃……、



(ゴオオオオオッ!!!!!)


「火燕流、円舞陣!!」


「うわぁぁぁぁぁっ!!??」



 攻撃を見舞おうとした瞬間、俺は見えない力にそれを阻まれた! 一瞬にして視界が周り、体が空中へ巻き上げられる! その視界には火の粉さえ舞っている! これは竜巻、火炎を纏った火炎の竜巻だ! 火の粉にあぶられながら、旋風でもみくちゃにされた挙句、俺の体は地面に叩きつけられる結果になった!



「ごぶぇ!!??」


「あらあら、みっともない! 勇者がカエルみたいな声を上げるなんてね。まあ、でも、あなた本人も公言してたわよね? カエルの王子様だなんて。感謝しなさい? 本当にそうしてあげたのだから!!」



 確かにそんな事を言った。ラヴァンと比べられ、比較される程もないくらいにみっともない自分自身をそのように称した事がある。由来はエルのお気に入りだというおとぎ話にあるのだが、こんな形で罵りの題材に使われるとは思ってなかった。痛いところをチクチクと突いてくる嫌な相手だというのはハッキリしてきた。



「火炎魔法も使うなんてな。全然想定してなかったぜ!」


「あらあら、魔王を甘く見てもらっては困るわよ。私本来の得意分野は魔術なのよ。もっともこの属性は私のモノではないけれど、多少の再現自体はお手の物よ。よく憶えておきなさい。」


「ここまで威力のある魔法が多少で済むのかよ……。」


「この”カア・リィ”は暑い国の出身。身を焼くような旋風なんて日常茶飯事。それを攻撃のために再現するのは容易いことよ。」



 複数の腕、多数の顔の死角をやっとの思いでくぐり抜けたというのに! やっぱり相手はまだ本気すら出していないというのか? こんな相手を出し抜くにはどうすればいい? もっと相手の意表を突く戦法を考えないといけない!


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