第31話 不本意なダンジョン攻略
「不本意ですが、ダンジョン攻略を始めましょう。準備はいいですね、皆さん?」
ローラに加えて、フォグナーさんも人質にされ、私達はD・L・Cの指示通りに動かなければいけなくなった。彼らの代わりにダンジョンの魔神の封印を解除しなければいけない。フォグナーさんが管制室から助力してくれるとはいえ、グランツァ君をリーダーとして、私とミヤコちゃん、力士さんの四人でダンジョンに挑まないといけなくなった。
「ダンジョンに入れたのはいいけど、監視付きの人質ありだなんて、最悪!」
「その先には恐怖で支配される世界が待っているかもしれません。その方が重大です。」
ここを攻略した先には、希望のない未来が待っている。D・L・Cの企みを阻止しないことには、その結果を変えることが出来ない。
《つべこべ言わずに先に進め! 時間が無限にあるなどと考えるな。外部からの援軍が到達する前にこのダンジョンを制圧する必要があるのだからな!》
急かすようにファイアー・バードが指示を飛ばす。学長が話していたように、クルセイダーズに救援要請は出されている。通信魔術の類いが出来ないよう遮断されていたため、到達は遅れるがいずれは到達するはず。それまでに彼らは迷宮の制圧と賢者の石の入手を急いでいる。さすがに的の手勢が増えるのを避けたいと考えているみたい。
「早速、ダンジョンの守護者達がやってきましたよ!」
「何これくらい! この前のゴーレム軍団よりはショボいんじゃない?」
「でもお嬢さんは下がっていて下さい。危険ですから!」
古いタイプのガーディアン・ゴーレムが行く手に立ち塞がった。最初の階層の敵にしては強力な部類だけれど、さらに強いゴーレムを相手に相手にしたことのある私達には脅威とはほど遠い相手だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私達はゴーレムを屠りながら、中心部にある封印の在処に辿り着いた。でも封印と呼ぶには違和感のある場所だった。
《そこが第一の封印の場所だ。早速、封印を解除してもらう。》
私達は指示に従い封印を解いた。その仕組みは複雑で複数の人間がいなければ解けないような仕組みになっていた。離れたところにある仕掛けを同時に作動させないと動かない仕組みだった。まず、単独で侵入出来たとしても、ここで行き詰まるようになっている。
「これで封印は解けました。次の階層へ進んでいいんですね?」
《そうしてもらっても良いが、その前に彼らが先へと進ませてくれないだろう。》
封印の入り口から新手のゴーレムが出現したしかも四体。見るからにフロア全体を守るゴーレムよりも強固なゴーレムだった。
「ここはオイに任せんしゃい!」
力士さんが前に進み出て、私達三人を庇うように立ちはだかる。相手のゴーレムも重装戦士、手にした武器も大型のメイスや大斧を手にしている。
「パワーにはパワー! オイ一人で蹴散らしてみせるバイ!」
「おおっ!? さすがリキシィ! 力こそパワー!!」
「ミヤコちゃん、意味が重複してるよ?」
「いいの、いいの! こう言うのは決まり文句だから!」
ロアがいない今、ミヤコちゃんは道中を賑わせる役割を買って出ているのかもしれない。いつもは彼が素っ頓狂なことをして、敵味方構わずにペースを崩させる役割を持っているし。結果的に敵はいつものペースをくじかれる結果になってミスをしてしまう。彼が不在の今、それが彼の強さなんだと実感する。
「角觝術、激岩崩し!!!」
(ドンッ!!!)
力士さんは上半身を低くし、両拳を地面に付けた姿勢で、ゴーレムのいる場所に飛び込んでいった。飛び出した瞬間から彼の姿は一瞬にして消えた!
(バギャ! ベギャシャ! グシャアッ!!)
気付いたときには力士さんはゴーレムの前を通り過ぎ、遙か前に仁王立ちしていた。遅れて道中にいたゴーレム達は損壊して、軋んだ音を立てながら地面に倒壊した。猛スピードの体当たりで全てのゴーレムを破壊していたんだ!
「凄いじゃんリキシィ! あんたがいればウチらがいなくても勝てるじゃん!」
《なかなか優秀な戦士のようだな。東洋の格闘術を使えるとは。しかもこの学院にいると言うことは魔術の心得もあるのだろう? 末恐ろしい若者だ。》
「ヴォルフさんが倒してくれたおかげで次の階層へ進めそうです。すぐに下へ向かいましょう。」
D・L・C達の指示では、封印されていた物には一切触れずに先に進むように、ということになっている。各階層にはデーモンが封じられいているという話だったけれど、少し見ただけではそれらしい物は何もなかった。ただ……何かを研究、製造するための設備のようにも見えなくはなかった。ここは言い伝え通りの物が封印されている迷宮なんだろうか? だんだんと疑問が大きくなっていった。