第303話 不具合を修正しました!(それだけとは言ってない)
「あれ? トリ様が一匹だけ残して全部消えちまったぞ!」
これで結界は消え去り弱体化しただけに留まらず、多数いた個体が一斉に姿を消すことになった。弱体化に次ぐ弱体化! 弱り目に祟り目! もうトリ様に勝ち目はなくなった。
万事休す、の事態に追い込まれた……はずなのだが、トリ様は余裕の表情を浮かべている。すぐキレるアイツの性格からすると、更にブチキレて顔面がもっと真っ赤になりそうなもんだが?
「ファイ・バードめ、何が起きたかはわからんが、これで貴様も終わりだ! 観念し
ろ!!」
「フッフフ! それはどうかな? 観念するのはお前たちの方だぞ。人形遊びはコレで終わりだ!」
トリ様はあまりにも余裕なのか、最終兵器の巨人たちの上空を滑空しながら、煽り立てるような行動を取っている。「どうだ? 攻撃してみろ!」と言わんばかりの大胆な行為である。さっきまでキレ散らかしていたトリ様はドコへ行ったのやら?
「ええい、うっとおしい鳥め! 撃ち落としてやれ!!」
トリ様の煽り行動に業を煮やしたクルセイダーズは巨人の武器を総動員して迎撃を始めた。例の爆発する筒を目一杯発射して、目からの光線を一斉にヤツへ照射する! そんな嵐のような一斉攻撃をものともせずに優雅に飛び回り回避している。それが一層、相手を煽るような結果になっている。中で巨人を操作している連中の焦りと怒りが巨人の挙動に表れているかのようだった。
「当たらない! 全部まともに当たりさえすれば、貴様なんかーっ!!」
「当ててみろよ?」
「な、何をーっ!? だったら望み通り、最終兵器の切り札を食らわせてやる! ファイナル・レーザー照射用意!!」
リーダーと思われる巨人の中の一体が次の攻撃の体勢に入った。最終兵器の切り札とは一体? なんか、最後の最後みたいな言い回しだな? え、今までのが最後じゃなかったの、みたいな? とにかく、コレが効いても、効かなくても終わりですって事にしとこうか。
「食らえ、ファイナル・レーザー!!」
(ドビャーーーーっ!!!!!!!!)
なんだか稲光を100本くらい集めたようなぶっとくて眩しい光線がトリ様に照射された! ヤツは避けようともせずにまともに喰らってしまう! 光線があまりにも眩しくデカイので、トリ様の姿は一切見えなくなった。これじゃ、効いていないのか、死んでしまったのか分かるわけがなかった。当然、照射してる側もそれはわからんのだろう。
「あああ!? とうとう恐れていたことが現実になってしまった! だから私は止めたんですヨぉ!!」
「うるさいね、アンタは! もう終わりさ。あのトリ野郎は死んだも同然、今度はあの巨人たちをどうやって倒すか、考えとくんだね!!」
「違うんですヨ! 騙されちゃいけない! あの光線はかえって、ファイ・バードが付け入る隙きを作ってしまった事になるんですヨ! あのままではアナタもよくご存知なあの能力を使われてしまうんです!!」
ラップはアキラの行動を阻止できず、もうとっくに諦めていたかと思いきや、まだ、なんかトリ様がやらかすとわめき散らかしている。アカは騒ぐラップをなだめつつ、次なる敵、巨人たちとの戦いに備えていた。アキラは……相変わらず不敵な笑みを浮かべて事の成り行きを見守っていた。
「う、うわああああっ!!!!!?????」
謎の悲鳴が巨人から発せられた。その声と共に巨光もしぼみ、照射されなくなった。トリ様の姿もない。倒したのか? とはいえ、さっきの悲鳴は何だったのだろうか? 敵を倒すことに成功したのにおかしなリアクションだった。何か嫌な予感がする。
「よし、取り込むことに成功したぞ! これが”ライフリーチ”の能力か! 実に素晴らしい!!」
巨人からは何故かトリ様の声が発せられた。おかしい。トリ様の姿はなく、声だけが聞こえてきたような感じだ。巨人の様子がおかしい。目が真っ赤に光り、胸の部分には鳥の姿をかたどった炎が現れる。まるでトリ様に取り憑かれたような姿に変貌したのである!
「閣下? どうなされました? 何が起きたと言うのです?」
他の巨人は戸惑い、リーダーの身を案じているが、無事ではなさそうなのは明らかだった。最初の悲鳴の事もあるし、何よりも声がトリ様の物に変化しているからだ。さっき”ライフリーチ”という単語を使ったのも気になる。アレはアカの能力、魔物を食べて力を取り込む能力のことじゃなかったっけ?
「閣下? あの偉そうな男の事か? 奴は……死んだよ!!」
変貌したリーダーの巨人は部下の巨人たちに殴りかかった! 最初に殴られた一体は首が吹き飛び転倒して、残りの巨人も次々となぎ倒されていく! これじゃ仲間割れ……いや、トリ様が巨人に乗り移ったからこんな事になったんだ!
「ウン、なかなかに素晴らしい肉体じゃないか! こんないいモノは人間どもにはもったいないな。オレ様のような実力者にこそふさわしい肉体だ!!」
「トリ様、お前、巨人の体を取り込んだのか?」
「そうだぞ。今頃気付いたのか? コレでオレ様のアップデートが完了したことを意味する。お前らを超える力を手に入れた上で蹂躙出来るようになったのだ!!」
巨人、いやトリ巨人様は大胆にもパワーアップ宣言をした! アップデートとはつまり、アキラが機材を通して行ったことを示しているようだ。本当にラップが言っていたことが全て真実だったのだ!
「言わんこっちゃない! だから、私は止めたのに!!」
「もう遅い。お前の存在は予期せぬハプニングだったが、計画は予定通りにうまく行った。後はお前らをまとめて葬るのみ!」
ラップは自分の忠告が聞いてもらえなかったことで項垂れている。その一方で企みを実現させたアキラは人が変わったように、ラップを蹴飛ばしながら、トリ巨人の方に向かっていく……。