第290話 俺を踏み台にしたぁ!?
「行くぞ! 二度目のデルタアタック! 次こそは仕留める!!」
壁の人達は一度防がれた戦法を繰り返そうとしている。同じなら容易に破れるとは思う。でも、私の勘は警告している。相手を見くびってはいけない、と。相手も誇りと名誉に賭けて、確実に私を仕留めに来るはずだと。こういうときは大体間違ってない。何か予測できないことが起きるはず!
「我が技を喰らえ、孤高たる猫!!」
一番手は隊長ではなかった! 鎚矛を持った人が乱雑に武器を振り回しながらコッチに向かってきた。一見、雑に見える攻撃だけど、鎚の様に重くて防ぎにくい武器なら有効かも知れない。
「どうだ! 下手に防ごうものなら、その柔な剣ではへし折れてしまうだろう! さあいつまで避け続けていられるかな?」
特に私のような軽めの武器で安易に受け止めようとすれば武器を壊される。しかも、無作為に振り回しているため、回避も容易じゃない。普通こういう武器は重くて素早く振るには向いてないけど、並外れた腕力があるなら可能になる。はっきり言ってこれは脅威!
「攻撃はジョージだけだと思うなよ。我らの攻撃は織りなす調べにより、さらなる力を発揮するのだ!」
鎚矛の人に注意を向けている間に槍の人が横から槍の突きを入れてきた! とっさに横に避けたけど、槍の穂先が私の服を掠めていった。攻撃を避けるのが得意とは言っても、それは一対一なら成り立つ話なので、集団戦では思うように立ち回れない!
「自慢の速さも我らの連携攻撃には無力であろう! これで茶番も終わりだ!」
素早い突きが連続で繰り出される! 防戦一方! このままじゃ他の二人に追撃されたらひとたまりもない。こうなれば私も切り札を使わないと負けてしまうかもしれない。
「我が渾身の一撃を喰らえ! 死呼ぶ鐘音!!」
空を斬りながら槍の切っ先が私を狙う! 私はここで敢えて勝負に出ることにした!
「ハッ!!」
「俺の槍を踏み台にしたぁ!?」
跳躍して回避し、槍に着地。すぐさま再度の跳躍で相手の頭上に飛んだ。このまま峨龍滅晴を狙う!
「そう何度も同じ技は喰らわぬぞ!」
槍の人を攻撃しようとしたその時、味方を守ろうと隊長の人がこちらに向かってきた。このままでは槍の人は倒せたとしても、その後まともに攻撃を受けてしまう!
「させるか! シャイニングイレイザー!!!」
「ぐおあああっ!?」
その時、隊長の人が激しい閃光に包まれ体勢を崩した。と同時に私も剣を振り下ろし、槍を根本から叩き切った。膝を付いた隊長の人の無効には、剣を振りかぶった状態で立つプリちゃんの姿があった!
「どう? ナイス・フォローでしょ?」
「うん。ありがとう! ふぉろー、助かったアル。」
プリちゃんの放ったあの技は炒飯の人、勇者の人が使った閃光の一撃に似ている。軍隊の詰め所で練習している所を見たことある。それをプリちゃんも当たり前のように使った。どうやら西国の戦士たちの基本技みたいになっているみたい。
「こんな小娘が勇者の技を!?」
「隊長の人は私が引き受けた! りんしゃんは他二人をなんとかして!」
「任されたアル。これで決めてしまうアルよ!」
「くそっ! いきなり加勢するとはやってくれたな!」
「アナタ達もいきなりだったアルよ。文句言わない!」
鎚の人が愚痴をこぼしながら迫ってきた。連携攻撃をプリちゃんの不意打ちに崩されて不満を漏らしている。そちらから複数戦に切り替えたのにこの言いようは身勝手。なら、遠慮なく本気を出させてもらうよ。
「剣覇奥義、光舞八刃!!」
「ぐあああああっ!!!」
八方から相手を斬り伏せる! 相手の鎧のつなぎ目を攻撃してバラバラにした。 振り回す鎚矛を回避しながら瞬間的に決めるのはこの技しかない。連携が来るのがわかっている状況では使えなかったこの技も、プリちゃんが抑えてくれたおかげで実現が可能になった。
「おのれ! ジョージまでも! 槍を失ったとはいえ、俺だってまだやれる!」
「……破竹撃!!」
(ばぎゃあああん!!!!!)
「た、盾が!? 真っ二つに!?」
鎚の人への攻撃の隙きを狙ってくるのは読めていた。槍も壊れていたので、来るなら盾で体当たりしてくることも含めて。事前に相手の行動を制限しておけば、対処は難しくない。
「喰らえ、無疵たる絶命刺!!」
「ええい! なんちゃらハチジン!!」
「えっ!?」
剣での突きを繰り出す隊長の人をプリちゃんは思いがけない技で迎え撃った! 八方から相手を切り刻んでいる! まさかの八刃、流派梁山泊の奥義を繰り出すなんて! 荒削りだけど、私の動きをうまく再現している!
「ぐおぁっ!?」
「やた! 出来た! ホントに出来た!?」
技を再現した事に本人も驚いている。いきなりここまで出来るとは思っていなかったけど、彼女はある程度こういう事が出来ると信じていた。これまで一緒に行動してきた間にそれを悟っていた。だからこそ、最初は私の動きを見てもらっていた。私の動きを憶えてもらうために。