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第29話 中央管制室


「なんだぁ、結局裏口だからほとんど何もないんじゃん! つまんない!」


「そんなこと言わないの。安全に進める方がいいに決まってるから、ね?」



 私達は書庫の裏口から入り、目的のダンジョンに到達した。その入り口もまた裏口とも言える場所だった。フォグナーさんの説明によると、この場所は後の時代に非常用通路として作られた物で、もし不法侵入が発生したときに対処するため用意されたそう。大きめの建造物によくある非常階段の様な存在らしい。



「はは。申し訳ないですが、対策本部では話せなかったんですよ。あくまで正面から入るという事にしないといけなかったので。」



 対策本部では盗聴の恐れがあるということで、特に重要な情報は伏せられていた。始めから秘密の入り口から入るということを知られてしまうのは危険だったから。この裏の通路は表のダンジョンの各フロアへ容易にアクセス出来る様になっている。最高機密扱いの最深部にまで比較的容易にたどり着ける事さえ可能なのだそう。



「着きましたよ。ここが中央管制室です。不法侵入があった場合にここで迷宮内の状況を確認できるようになっています。」



 ダンジョンのいくつかの階層を下りたところにその部屋はあった。非常時対処用の特別な部屋。内部はあちこちに水晶で作られたのぞき窓のような物が設置されている。その中央に何らかの魔道器が設置されたデスクがあった。フォグナーさんはその上の魔道器に自分の足を当てた。



「迷宮内には監視用のウィザーズ・アイが設置されています。そこから得られた映像がこの水晶の覗き窓に映し出されるわけです。」



 フォグナーさんが足で触れた途端に魔道器が発光し、続いてのぞき窓も輝きを放ち始めた。説明と共にのぞき窓には迷宮各所の様子が写し出された。ここからウィザーズ・アイを操作することも出来るようで、フォグナーさんは周囲を見渡すようにクルクルと視点を回転させて見せた。



「古代って言う割には今風な感じだね? どういう事なの、ミミック君?」


「それは誤解ですよ。部分的には過去の技術の方が高度だったのですよ。ロスト・テクノロジーとなっているものが大半です。私の存在すらそうなんですからね。」


「あ、ホントだ! 今はこんな生き物作れないもんね!」


 さすがにそんな言い方をするのはどうかと……。確かにフォグナーさんは珍しい存在だし、宝箱に足が付いた奇妙なモンスターにしか見えない。でも、人間や通常のモンスターよりも高度な知能や魔力を持っている。だからそういう意味でも「こんな生き物」と呼ぶのは抵抗がある。



「失礼だよ、ミヤコちゃん! ご本人が目の前にいるんだから。」


「ははは、構いませんよ。私の様な特異な魔法生物はほとんどいなくなってしまいましたからね。現在では一部、禁呪指定されている技術が使われていますから。」



 管制室の設備にみんなが見とれ驚く中で、一人様子がいつもと違う人がいた。それはローラだった。いつも真面目な彼女は感情を表に出さないのに、腕組みをして何か満足げな笑みを浮かべていた。この娘がこんな表情を今まで見せた事があっただろうか? 私はその姿に酷く違和感を覚えた。



「なるほど。このような場所があったとは。これならダンジョン攻略も効率よく進められそうだ。」


「攻略? 攻略は行いませんよ。立てこもり犯を発見し、捕らえる事が目的なんですよ。ここはそのための場所です。」



 不審な態度に不審な言動。急にローラは豹変した。まるで元々そんな性格を演技で隠していたかのように。信じられない光景に私は動揺を隠せなかった。



「ご苦労。これで我々の計画は盤石な物となった。やはりこのメタモルフォーゼの魔術は完璧だった。さすがは幻惑のロスト・ワードだ。」



 不敵な笑いを浮かべたローラはその姿を一変させた。別の女性魔術師の姿に切り替わった。この人は見覚えがある! アンネ・リーマン先生だ!



「何故、あなたがここに? アンネ・リーマン先生!」


「何故? 少し考えればわかることだろう? 私はD・L・Cの協力者だ。彼らと共に学院と勇者の一味への復讐を遂げるためにね。」



 “彼ら”も管制室に姿を現した。あわせて七人。でもその内の一人は拘束されて気を失っているローラだった。先生は一体いつから入れ替わっていたのだろう?



「いつから入れ替わっていたんですか? 私は全く気付けなかった!」


「はは。貴様の部屋に行く直前からだよ、エレオノーラ。入れ替わるにはこの娘が都合良かったの。ある程度、言動や性格を見知った者でないとなりきることは出来ないからね。そして、この前、邪魔をしてくれた礼をしたかったのよ。」



 二人は以前、交戦したとローラやラヴァン先生から聞いた。そして、ローラの前の体を破壊したのも彼女だと聞いている。



「この通り、この娘は我々によって拘束している。命を奪われたくなければ、おとなしく言うことに従ってもらう!」



 彼らは最初からダンジョンに立てこもっていなかった? 私達にこの場所を案内させ、容易にこの場所を制圧するためだったなんて! 



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