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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第287話 むむ、慌てるな! コレは〇〇の罠だ!!


「ヨシ、規定の待機時間1分は経過したな。秩序の壁よ、そなたらの行動許可を出そう!」



 我々秩序の壁(ヘブンズ・ウォール)は元の世界への復帰を賭けて小娘共と戦う羽目になった。本来ならエピオンとかいう小僧を懲らしめたいところだったが、後回しでも良い。その小僧共と一緒にいた小娘などたかが知れている。



「皆の者、打ち合わせでも話した通り、二手に別れて行動し追い詰めた後に挟撃して殲滅する方式を取る。見た目に惑わされず、強固に攻め立てるのだ!」


「サー、イエス、サー!!」



 相手は現勇者の仲間とは聞いているが、歌姫? 遊び人? 異国の箱入り娘? そんな烏合の衆が我らに叶うはずもない。一人だけ異端審問会の識学者(セージ)がいるようだが一人だけではどうしようもあるまい。



「さて、どこに逃げたのだろうな? もっとも、この様な似通った構造の続く建造物で逃げ回るのも、短時間で限界が来るだろう。」



 起点となる3Fの教室、ここはちょうどこの階層の中央に位置しているので、出たところで左右に別れて捜索に出ることとなる。相手チームのスタート時点は見ることを許可されていなかったが、足音のおかげで左右二手に別れていたのは丸わかりだった。



「せいぜい、備品を以てバリケードを設営する程度が限界でしょうな。」


「非武装の人間相手ならそれで十分でしょうが、我々の様に装備で固めた重騎士には通用しますまい。」



 ここはそもそも学び舎なのだ。それも我々の知る士官学校や魔術師共の学院と違い非常時の設備が少ない。せいぜいが火災などの災害から逃れるための設備が所々に存在しているだけ。圧倒的に砦や城塞に比べて防衛には適していないのだ。



「……む? コレは……?」



 廊下を進む私は数歩先にある教室の引き戸が僅かに開いているのに気付いた。ここまでの間にいくつも教室の前を通り過ぎ、階段も降りて他の階層にも到達したがこの様な異変は見られなかった。基本、人が立ち入らない教室の戸は閉じられているはずなのだ。



「罠かもしれませんぞ、グリッグ隊長。あの小娘共の中には魔術の心得があるものもいました。」


「相手の能力から分析すれば、その可能性は高そうだ。盗賊やレンジャーといったトラップの専門家はいなかったのだからな。」


「魔術を利用した罠であれば短時間で準備できるものも存在しています。時間から考えても間違いなさそうですな。」



 罠が存在しているということは、近くに仕掛けた者が存在している場合が多い。罠に気を取らせている間に不意打ちをしたり、その場から逃走するケースもある。特に簡易的で単純な罠であれば、時間稼ぎやフェイントの様な役割で用いる事があるのだ。



「こうもすぐに見つけてしまえるとはな。この様な閉所、限定空間では無理な話よ。逃げおおせることなど不可能なのだ!」



 手にした斧を振りかぶり、付近の壁を打ち砕く。罠の付近、その扉の先に隠れていると踏んだのだ! もう逃げ場はないということを思い知らせるために敢えて強引な方法で暴き出すことにしたのである!



(ボゴァ!!!!)



 教室の壁があっけなく崩壊し、残骸の破片が辺りに拡散したため視界を妨げる結果となった。攻撃の余波に罠の力が加わったためか、想定以上の破壊をもたらしたようだ。罠は単純に爆発を引き起こす効果が与えられていたと考えられる。



「無茶苦茶だよ! これだから脳筋は嫌いなんだっ!!」


「お行儀の悪いこと! 全く、お武家様は不躾な方ばかりですわね!!」



 舞い上がった残骸のホコリがある程度落ち着くと、二人の娘が姿を現した。派手な服装の娘と識学者の娘である。罠は識学者の方が仕掛けたのだろう。罠を見抜かれた以上はもう打つ手もないだろう。ここは遠慮なく捕らえさせてもらうとしよう。



「抵抗せずおとなしく捕らえられるのなら、危害は加えぬ事を約束する。そちらにとっても悪い条件ではないとは思うがな?」


「うっさい! ただ隠れてる所を見破っただけで勝ったつもりになるなよ!!」


「威勢のいい娘だな。我々と同じ武人であれば褒め称えられるべき武勇を兼ね備えているといえるのだが、所詮は遊民の虚勢よ。その場しのぎの戯言にすぎぬわ!」


「隊長の言う通りだ。諦め給え。さもなくば君たちはこの壁の様な末路を辿ることになる!」


「ちくしょー、こうなったら!」


「きゃっ!?」



 遊び人の娘は仲間の識学者の娘を我々のいる方向へ突き飛ばし、隙きを見て逃げ出していった。なかまを見捨てて逃げようとは姑息なマネをする! だが、そうしたところで後はない。次に出くわした時が最後となろう。



「フフ、哀れだな。味方だったはずの者に裏切られるとはな。観念せい!」


「味方? そもそも彼女は味方でもなんでもありませんの。」



 娘は諦めたように愚痴を吐き捨て、我々の指示に従う素振りを見せた。素振りを見せつつ、奇妙な行動を取った。何か異国の呪言が描かれた札のような物を取り出したのだ。



「な、何のつもりだ?」


「さあ、どうしてでしょう? あなた方は私を追い詰めたつもりなのでしょうけど、実は真逆の立場にいる事にお気づきではありませんのね?」


「ははっ、もう遅いわ! ただ逃げただけだと思ったら大間違いだぞ!!」



 先程逃げたと思われた娘が我々のいる所を覗き込んでいる。その手には目の前の娘と同じ様な札を持っている! その事実に気付いた瞬間、我々は何かモヤのような霧のような物に視界を覆われる結果となった。一体何が起きたというのだ!

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