第281話 何が何でも言わせたい”あの一言”!
「お願いしヤス! 一度でいいから、『くっコロ!!』って言ってくだしゃい!!」
「その言葉に何の意味があるというの? 意味不明な限り、従えないわ。」
「ちょびっとだけでいいんで! 先っぽだけでいいんで!」
「なんかどさくさに紛れて卑猥な事言ってるよ! スケベ犬改めセクハラ犬!!」
ミャーコちゃんからの無慈悲な制裁に耐え抜き、気絶一歩手前の状態で踏みとどまれたでヤンしゅう! でも、頑なでヤンス。どれだけ食い下がっても言ってくれないでヤンス! こうなったらこっちも本気出すヤンスよ!
「言葉の意味……そんなの全てに意味がついてるわけないヤンス。『くっコロ!!』はある意味、魂の叫びなんでヤンスよ! コレは乙女が辱めを受けた時に、そのような屈辱を受けるくらいならいっそのこと……という思いで伝説の女騎士が発した魂の一言なんでヤンス! これはお侍さんの切腹にも通じる精神なんでヤスよ!!」
「魂の叫び? 辱め? セップク? 私には全く意味がわからないわ。」
「うわぁ! なんかイタい解説を始めたよ!」
「言葉の意味はよくわからんがトニカクすごい自信だぁ!!」
んもう! これだけ誠心誠意、真心を君に……捧げるつもりで解説したのにぃ! こうなったら、残酷な天使に魂がルッフランするつもりでいかないといけないでヤンス! 窓辺から飛び降りる気持ちであなたの心にダイブするでヤンスよ!
「秘技、オガワ流処世術”くすくすぐりーん”!!」
(コチョコチョ!!)
「うわっ!? 何をする!? 止めて〜!」
「うへへ! 止めてほしかったら、『くっ、コロせ』と一言、言えばいいだけでヤンスよう!!」
「ああっ! 犬畜生め! とうとう実力行使に出やがった!」
ホントは足の裏ペロペロの方が効果的でヤンスけど、事前準備がいらない、”脇くすぐり”を敢行したでヤンス! これでもうまくクリティカルヒットすれば一瞬でカタがつくでヤンスよ!
「うへへ〜! ネエチャンよ〜! 早く『くっコロ!!』言ったほうが楽になれるヤンスぜ! でないと、大切なものを失ってしまうヤンスぜ! アレとかソレとか!!」
「あーれー!? ちょいと、ホントにおやめなさいな! このままでは気が狂ってしまうわ!!」
「アーレー、じゃなくて、『くっコロ!!』でヤンス!」
「く、くっコロ〜!!」
「頂きました! くっコロでヤンス!!」
やったぁ! ついに念願が叶ったでヤンス! この瞬間をどれだけ待ちわびたことか! 忍び難きを偲んで闘いを勝ち抜いた甲斐があったでヤンス! もう、思い残すことは……、
「とりあえず、死んどけ、この犬畜生!!」
(バキャッ!!!!)
「ぎゃばんっ!!?? 我が生涯に一片の悔いなし! ガクッ!!」
〜〜しばらくお待ち下さい。〜〜
「うむ、そなたらが勝ったのはいいが、随分と見苦しい物を見ることになってしまったのう。」
「ホントだよ! 勝った気がしない! 負けるより屈辱的だよコレ!」
見苦しい犬畜生を排除したウチらはさっさと次の対決に備えるために、準備を始めていた。みんな、さっきまでの茶番に辟易していたので、体を動かして調子を整えてる。見てるだけで疲れるもんね、ああいうのは!
「ハハッ! あんなコボルトに負けるとはザマァねえな、アリエールさんよ?」
「くっ、なんとでも言いなさい! あなた達も舐めてかかるると痛い目を見るわよ!」
「では、次に出るのはそなたらで良いのじゃな? 秩序の壁よ?」
最初にこの場所に乗り込んできたゴツくてムサ苦しいオジサン達がしゃしゃり出てきた。こんなのと何か対決するなんてありえない。ウチはチェンジを希望する。どうしてもやるなら、男子共にやらせとこう。こんなのエピオンなら一人で蹴散らせるでしょ? 粗❍ンは無理だろうけど。
「そなたらならストレートに戦闘でやり合わせる事にするかのう。それしか出来なさそうじゃしな。」
「真正面から叩き潰してやるぞ! 誰が相手だ? そこのエピオンとかいう小僧なら一瞬で片をつけてやる!」
「フン! 逆だ、逆。俺がお前たちを倒してやる。お前を殺す。」
「さて、どうしたもんかのう?」
もう誰と誰なんて決まりきってるのに、なにかサヨちんはもったいぶってる気がする。もうそのまま始めちゃえば誰も文句を言わないのに。なにか条件をつけて変な事させられるのかも?
「そなたらの相手は……この小娘共じゃ!」
「な、なんだと!?」
「えっ!? ちょっと待って! なんでウチらなの!?」
「私達があんな殿方と戦わなくてはなりませんの?」
「どぅわ!? いきなりガテン系と絡まないといけないの? 男子にやらせとけばいいじゃん!!」
「面白いことになってきたアルな。」
ナンタラの壁の人たちの相手がウチら? 何かの間違いなんじゃないの? ウチなんて戦う手段なんてほぼないのにどうすんの? まあいいか? あのアホ女を囮にして逃げてやればいいか?
「対決方法は……校内鬼ごっこでどうじゃ? 力のハンデなしに対決する手段としては面白かろう。力押しだけじゃなく、頭脳的な闘い方も要求されるからのう。秩序の壁側が制限時間内に小娘共を全員とっ捕まえれば、勝ちとする。出来なければ敗北じゃ。」
「捕まえるだと? いいだろう、甘んじてハンデだとして受け入れてやろう。小娘ごときアッと言う間に我らが捕まえってみせよう!」
「鬼ごっことは意外な方法でやる羽目になったわね。やってやろうじゃないの!!」
直接向き合って戦うよりはマシか? 逃げるだけならなんとかなるだろうね。あんな脳筋どもなんて適当にあしらえば楽勝なはず! いざとなればアホ女を盾にしとけばなんとでもなるしな。