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第27話 破滅の魔神


「うう! ほこり臭い! かび臭い!」



 真っ先に入っていったミヤコちゃんが書庫の空気を吸って嘔吐いている。ここは古代遺跡みたいな物だし、長年密閉されていたはずなのでそれは仕方ない事だと思う。



「長年使われていませんでしたからね。だからこそ、人目に付かず迷宮を秘匿するには都合が良かったのです。」



 匂いや埃を物ともせずに、フォグナーさんは先を進んでいく。書庫内にも隠された扉や通路が何重にも存在していて、何も知らなければ、絶対先には進めないような構造になっている。移動式の書架を特定の配置にしないと扉にたどり着けない等、難解な仕掛けが何度も続いた。



「こんなの誰にもわからないじゃん! 作った人も解き方わからなくなるでしょ、こんなの!」


「そうでなくては意味がないのですよ。何があっても二度と解かれてはならない封印がこの先にあるのですから。」



 この先に封じられているのは“破滅の魔神”。詳細は伏せられているけれど、恐ろしいデーモンが封印されている。これほど厳重に守られているのならよっぽど危険な存在なんだと思う。以前、ノウザン・ウェルに牛の魔王が封印されていたけれど、あの場所よりも厳重になっているように感じる。



「魔王の眷属が封印されているとしても、あまりにも過剰な感じがします。この場所に封印されている魔神は一体何者なんですか?」



 奥に現れた地下への階段を下りながら、グランツァ君は疑問を投げかけた。私も疑問に感じている。魔王が封じられていた場所よりも過剰なセキュリティが施されている。その存在に何か秘密があるように感じる。



「対策本部では盗聴の危険があったため話せませんでしたが、ここで話しておきましょうか。……古代の魔王戦役の遺物について。」



 歴史上、魔王との戦いは何度も行われていた世界各地にはその爪痕ともいえる遺物がいくつも残っている。砦や要塞、迷宮など人間側だけでなく、魔族側の拠点なども多数存在していたらしい。近い年代の物は特にデーモン・シード汚染の影響があるため立ち入り禁止になっていることが多い。



「皆さん、魔王と呼ばれる存在の中でも、上位の四名は四天王と呼ばれていることはご存じですよね?」


「もちろん存じています。ネズミ、ウサギ、ニワトリ、ウマの四人ですよね。」


「この四名は特に強力ですが、近年は目撃例が少ないことでも知られています。彼らに関する遺物は大抵、古い年代の物で占められています。この迷宮もその一つです。」



 フォグナーさんは書庫の先に進むために仕掛けを解除しながら進んでいく。その間も説明は止まることなく続いていた。仕掛け自体を解析する能力を持っているそうなので、その仕組みも手に取るようにわかるのだそう。



「ということはまさか、ここは四天王の眷属が封印されているのですか!」


「その通り。ここは鶏の魔王、ポジョス・ザ・パルピテイションの拠点の一つだったのです。あの悪名高い、恐慌の伝道者デス・メッセンジャーの遺物なのです。」



 ここが四天王の拠点だったなんて! デス・メッセンジャーはその名の通り、恐怖を司る魔王で、人々に恐怖を与え、それを糧にして更なる力を増幅させるとも言われてる。そのためか古くから、彼の鳴き声は世界破滅の知らせに等しいのだとか。それを物語るように世界の各地には彼の破壊の爪痕が残されている。それは地形が変わるほどの影響を持っていたとも。



「彼の力は途方もなく、その眷属でさえ町一つを一瞬で焦土に変える程の力を持っていました。ここに封印されているのはその一人、ブラックアーツ・ガンダーと呼ばれる魔神です。」


「ガンダーですって!? あのワイルド・ギースの一員ですか!?」


「その通り。あの恐怖の雨を降らせたと言われる連隊です。」



 私は初めて聞いた情報だった。詳細情報は一般には伏せられているのだと思う。クルセイダーズは魔族と戦うことも多いはずなので、近年の目撃例は少ないとはいえ、共有されている情報なんだろう。



「恐怖の雨って何?」


「広域に多大な破壊をもたらし、その後もデーモン・シードによる汚染をもたらす魔術兵器です。その被害は数十年単位で残り続けるとも言われています。人が住めない土地へと変えてしまう恐ろしい兵器なのです。」


「えぇ!? だから“破滅の魔神”なの? ちょっとそれヤバすぎない?」


「それを蘇らせようとしているんですよ、D・L・Cは。それをなんとしてでも阻止しないといけないのです。」



 話を続けているうちに迷宮の入り口に到着した。こちらは裏の入り口であるからか、「世界に災いを齎す者を封印す。決して解くべからず。」と注意書きが扉に掘られていた……。


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