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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第265話 大洋の騎士ホエールは死んだ、何故だ!


 俺達はひたすらに塔を登り続けていた。途中で仲間の一人である”大洋の騎士ホエール”を失う結果になった。その途上で現れた替え玉の人物さえも海の王との対決で失ってしまった。


 あまりにも後味の悪い犠牲を伴ったことに俺は心を痛めていた。なにかモヤモヤした感情が渦巻き、足取りを重くさせている。今は3人になってしまったため、途上での魔物との戦闘に駆り出される奇怪も多くなったので、少しは気が紛れる瞬間もあるが……。



「まだ気にしてるんですかい?」


「気にしているに決まっているだろう。俺は今まで犠牲を生まないように行動してきたんだからな。」


「そりゃ、御大層なこって……。」



 塔の道程でもパッチラーノとこのことについて、何度も議論していた。議論、というよりも俺が納得できない事に対しての愚痴を目の前のハゲに話しているだけなんだが。ハゲも適当にはぐらかすような発言しかしていない。ヤツ自身の方針はハッキリしている。コイツは犠牲を容認するスタンスを取っている。それが合理的と判断すれば迷うこと無く、犠牲を伴う選択も必要だと説いている。



「逆にお前はなんでそこまで割り切れるんだ? 心に引っかかる物があったりしないのか?」


「そんなものは無いですぜ、旦那。あっしは物事を徹底的に損得勘定で考えるようにしてるんでさぁ。自分が得しないと、いや、生き残れないと意味が無いんですぜ。損してしんだりすりゃあ、目も当てられやせんぜ?」


「……損得勘定か。俺には出来ない考え方だな。俺は……立場上、そういうことが出来ないっていうのもあるしな。いやいや、勇者じゃなくったってしちゃいけないと思っているけどな。」


「勇者ねぇ。かたっくるしい生き方でしょうがないもんですぜ。役割(ロール)なんてもんに縛られて、息苦しさを助長させている。あっしにはそんな生き方耐えられやせんぜ。人生ってのはもっと自由でないとねぇ。」



 生き方を制限して身動きが取れなくなっている? 確かにそういう見方も出来るかもしれない。いっそのこと……勇者を辞めるか? 後継者候補だっていくらでもいる。ファルやエドに託してもいい。いや、それよりもプリメーラやロッヒェン達のような若い世代に託したほうがいいのかもしれない。俺はそもそも……能力的には勇者の適正なんて無いはずなんだ……。



「大洋の騎士ホエールは死んだ! 何故だ!」


「あん? アイツは……。」



 俺が思考のドツボにハマっている真っ最中、聞き覚えのある声でホエールの死について言及する男がいた。先にパッチラーノが気付いて視線を向けていたため、釣られて見てみると、ソード・ダンがそこにいた。最初に姿を消して以来、どこに行ったのかと思えば……。



「彼の屍を跨いで塔の先に進むことは出来た。諸君らはこの事実を対岸の火としてみすごしているのではないか? しかし、それは重大な過ちである!」


「おうおう、随分と高悦な演説なこった。あのネガティブ・クソ野郎がどういう風の吹き回しだ?」


「勇者一味は聖なる海を汚して生き残ろうとしている! 私はその愚かさを諸君らに教えねばならんのだ! 大洋の騎士は勇者ロアの甘い考えを目覚めさせるために死んだ!」


「……。」



 俺らが辿った旅の軌跡を奴は知っている? 見ていたのだろうか? 先に行ったと見せかけて俺らの後をつけていたとしか思えない言動だ。しかも、俺がその事について思い悩んでいることを突いてきている。やはり最初に選ばれなかった事を根に持っているのだろう。



「大洋の騎士は勇者の無慈悲な選択の犠牲となったのだ! この悲しみも怒りも忘れてはならない! ホエールじゃ死を持って私に知らしめてくれたのだ! 勇者の愚かさを!」


「いや、ていうか、選んだのはあっしですぜ? 旦那がモタモタしてるから、そうなったんでさぁ。」


「アレはお前が勝手にそういう選択にしたんだろ。」


「私は今、この怒りを勇者に叩きつけて初めて真のウップンを晴らすことが出来る! 立てよ、ソード・ダン!! 今こそ大地に立つのだ!! ソーーード・ダン!!!」



 最早、ソード・ダンは話など聞いていなかった。よくわからん理由で、というか明らかに自分自身の恨みを、ホエールの死の失態に託つけて俺達にぶつけようとしているのは明らかだった。奴は剣を抜き一目散に俺へと襲いかかってきた。



「きぇぇぇぇえぃ! ホエールの敵ぃ!!」


「くそっ! やめろ! 恨んでいるのはわかるが俺達が争っても無益だろう? 今からでもいいからホエールの代わりに仲間になったっていいじゃないか!」


「この戦いこそ、私の正義の証である! いかほどのメンバーの空きがあろうとそれは既に形骸化している!!」



 ソード・ダンは一心不乱に信じられない力で剣をブン回してくる。技も何もないでたらめな攻撃の割には受け流すだけで精一杯になってしまう。何か人智を超えた異様な気配を発している。目が血走り、口元には泡が吹くくらいにまで狂乱の様相を見せている。言っていることも意味不明だ。



「いい加減にしろ! お前、なんかおかしいぞ! なにがあったんだ?」


「無能なる勇者に思い知らせてやらねばならん! 敢えて言おう! 勇者ロアはカスであると!!」



 カスだと……。今の俺には深く刺さる言葉なのは間違いなかった。俺が気に病んでいるところをうまく突いてきている。まるで俺の心を覗き見られているみたいな感じがする……。


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