第251話 見た目が地味だからって、ねぇ?
「パチッ!」
ハッ! ワはは? ここはどこ? あっしは誰? ……じゃなくてあっしは世界刑事ギョバーンこと、タニシ・オガワでヤンス。魔王の塔に入ったと思ったら、急に目の前が暗転して気がついたら別の場所にいたでやんす。しかもみんながいないでヤンス! なんかあっしは知らぬ間に迷子になってしまったでヤンしゅ!
「む? なんか、服を着た狐がいる! なんなんだ、ここは?」
後ろから聞き覚えのない声が……? 振り向いて見たら、なんかジミーな感じの眼鏡少年がいたでヤンス! ブサイクでもなく美形でもなく、中肉中背で何も特徴がないというか、特徴がないのが特徴、みたいな容姿でヤンス。
しかも、なんだか襟の詰まったピシッとした黒服を着てるでヤンス。ボタンが金色で刻印が入っていてちょっとおしゃれな感じにも見えなくはないでヤンしゅ! ハッ! 気付いたら、あっしもいつの間にか同じ様な服を着せられているでヤンしゅ!
「き、キツネではないでヤンしゅよ! あっしはれっきとした犬……じゃなくて、コボルトでヤンスよ!」
「しゃ、しゃべった!? キツネではなく犬? しかも、こぼると、とはなんだ? 知らん単語だ。オレに説明しろ。」
「あーっ! そんなことも知らないんでヤンしゅかぁ? 常識でヤンスよ? じょ・う・し・き!」
「知るか、そんなもの! ええい、オレを侮辱するとはけしからん物の怪め! わが流派梁山泊の技でたたっ斬ってくれようぞ!」
「え!? 梁山泊!?」
なんだか予想外の単語が飛び出てきたでヤンス! でも、よく見てみれば、このジミ少年の顔はどことなくアニキみたいに東洋風な感じがしなくもないでヤンス? 同じ流派のおトモダチとかなんかでヤンスかね? とにかく、カマをかけて確かめてみるでヤンス。
「なんで、その流派を知ってるんでヤンスか?」
「ハッ! 知っているも何もオレは梁山泊五覇の一人、刀覇のジン・ティンロンである! そんなことも知らんのか? これは世界の常識だぞ? じょ・う・し・き!」
五覇? なんかアニキやキツネのお面のお姐さんが言ってたアレでヤンスかね? なんか、四天王とか三人衆とか十ケツ、トリオとかコンビ、カップルとかみたいな? そんなセット品みたいな括りの集団みたいなの? ホントでヤンしゅかね? なんか、強そうなオーラがなくて弱そうなクソザコなめくじみたいにしか見えないでヤンスな?
「それはホントウでヤンしゅ? ファイナル・アンサー?」
「ふぁいなる? 何を言っているんだ? オレはウソなどついていない! その証拠に……!?」
なんか腰に手をかけようとして、本来あるはずの物が見当たらないみたいな感じでテンパり始めたでヤンス。斬る、とか言ってたので、剣でも忘れてきたんじゃないんでヤンスかね? せっかくの証明は出来そうにないので、ここでドロップ・アウトでヤンスな。
「お、おのれ! 罠だ! 罠に違いない! この意味不明な黒服といい、オレを全力で罠にはめようとしているヤツがいるらしい!」
「多分、それは魔王でヤンしゅね。」
「何!? コレも魔王の罠か!? このオレを騙そうなど、大胆不敵な輩め、成敗してくれるわ!」
「だから、そのための剣がないでヤンスよ?」
「お、おのれーっ!? どこからどこまでも、オレをバカにしおって〜っ! 絶対に許るさんぞーっ!!」
ジミ少年はますます怒りがヒートアップしておかしくなってしまったでヤンス! 何もない空間に拳をブンブンして八つ当たりをしているでヤンしゅ。なんか、犬が自分の尻尾を別の生き物と勘違いして追っかけ回している光景によく似てるでヤンス。あっしよりもむしろ、この人のほうが犬に似ているような気がするでヤンス!
「あっ!? 思い出したでヤンしゅけど、さっきのチンロンってのは本名でヤンスか? もしかして、リング・ネーム? もしくは通り名? もしくは源氏名?」
「チンロン言うなーっ! 失礼な! 発音が違う! ティンロンだ!」
「え? チンロンとしか聞こえないでヤンス。」
「言うな! こっちが恥ずかしくなるような発音で語るな! ❍ン❍ンみたいに聞こえるだろうが!」
こういう事を自分で言うあたり、そういう自覚はあるんでヤンしゅな。ということはこれはガチの本名で間違いなさそうでヤンス。なんか面白くなってきたでヤンしゅな! いじれるだけイジってみるでヤンしゅ!
「またまた〜? それ狙いの卑猥ネームなんでヤンしょ? 見た目がジミだからって、卑猥な単語を芸名に取り入れるのは上策とは思えないでヤンしゅよ?」
「芸名ちゃうわ! どこまで失礼なんだ、このクソ犬め!」
もうね、ここまできたらそういう風にしか聞こえなくなってキタでヤンしゅ! なんかジミだけど、イジり甲斐のありそうな少年でヤンス。またまた大型新人が登場して、あっしは嬉しいでヤンスよ!
「そもそもだ、オレの名は”青龍”という意味がある。我が国では東方の方角を守る守護聖獣なのだ! 由緒ある名前だと憶えておけ!」
「なるほど! ソッチで龍は❍ン❍ンの象徴でもあるんでヤンスな! 勉強になったでヤンしゅ!」
「だから❍ン❍ンとは切って考えろ! 変な発音をするからそんな過ちを犯すんだ! 正しい発音は、ティ、」
「ティ?」
「ン、」
「ン?」
「ロ、」
「ロ?」
「ン!」
「ン?」
なんか正しい発音を教授させられたでヤンしゅ。でも面白いから付き合うでヤンしゅ。
「では今の発音で続けて言ってみろ! ティンロン!!」
「チンロン!!!」
「ちがーーーう!!!!」
そんな事言われてもそういうふうにしか発音出来ないでヤンしゅ! 何はともあれ、異国の言葉はムツカシイでヤンスな。一歩間違えれば、下ネタ一直線でヤンス。罠にはご用心でヤンしゅ!