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【第3部】勇者参上!!~究極奥義で異次元移動まで出来るようになった俺は色んな勢力から狙われる!!~  作者: Bonzaebon
第4章 はぐれ梁山泊極端派Ⅱ【沈黙の魔王と白い巨塔】 第1幕 異界塔士Ro・Ar
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第248話 ああは言ったものの……、


「あんまり気を落とさないで。あなたの責任ではないから。」



 なんとか塔に入り、本格的に作戦が始動したわけだが、雰囲気が重い。いや、まあ、羊の魔王っていう難敵の本拠地に踏み入っているんだから当然なんだが、原因は明らかにそれではない。入る前に感じた、他のパーティーメンバーからの気まずそうな視線が忘れられない。



「いや、俺が悪いんだよ。あの時みたいに話をしに行くべきだったのかもしれない。」


「でも、あの娘の気持ちを優先させてあげたんでしょう? あなたが説得してたとしても、あの娘の決心は変わらなかったと思うわ。」


「そうかもしれない。でも、この結果をロッヒェンが納得しているワケがない。この結果の最大の被害者はアイツだ。俺はアイツの心に大きな傷を負わせてしまったんだ。」



 アイツとは言葉を交わしたワケではないが、その面持ちには悲壮感が漂っていたのは事実だ。自分の思い人が敵勢力に渡ってしまったのだ。身を切り裂かれるような思いだったに違いない。俺の立場に置き換えたら、エルが完全に魔族と成り果ててしまったようなものだ。そう考えると辛いものがある。



「もういいだろ。お前は被害者、いや加害者妄想が過ぎるんだ。何でもかんでも自分の責任なんて考えるのはやりすぎだ。全ての事柄は一人の人間だけで解決できるようなもんじゃねえよ。」


「俺は到底そんな風には考えられないよ。どうしても、俺の感情がそれを許さない。許しては行けないような気がする。だって、そうじゃなければ、全ての行動が無責任になっちゃうじゃないか。」



 色々見ておかないと、全て関わり合いが出来たのではないかと可能性を考えておかないと、俺が見捨ててしまったのではないかと、罪悪感を感じてしまう。ある程度そういう事柄が、救いきれないものが発生してしまう事に納得がいかない。


 そう感じるからこそ、もっと強く、早く、賢くなる努力をしなければならないと思っている。何か手落ちがあれば罪悪感を感じてしまうのはそういう思いが根底にあるからだ。



「止めとけよ。そんな風に考えてたら心が擦り切れるだけだぜ? そのうち、不幸な事が重なっちまったら、心が壊れちまうぞ。」


「止められないんだよ。せいぜい俺の行動ではどうにもならなかった、俺の人望の無さが引き起こした必然みたいに考えるしかないよ。だから、今回はミヤコだけでなく、タニシも他の所に行ってしまった。」


「そんなことない! タニシさんの場合は何か事情があったのよ。人望がないからなんて理由ではないと思う。」


「そうかな? 俺は犬の魔王に会ったことがあるから言えることなんだけど、あいつは気の良いやつだ。ある程度のカリスマ性みたいなのを雰囲気から感じた。タニシはそれに惹かれたのかもしれない。」



 タニシについてはわからないことが多い。ジムから聞いた話くらいしか情報がない。どういうキッカケで犬の魔王と再会したのかがわからない。ジムがタニシを発見したときにはすでに彼らと一緒にいたそうだ。


 とはいえタニシには特に囚われているというような感じではなかったという。ということは犬の魔王に脅されていたとか誘拐されたとかではないだろう。となるとやっぱり、彼もしくは、それ以外の誰かに共感したりして行動を共にする結果になったのだろう。



「もう止めとけ。ここでそんな事を考えている暇なんてない。それこそ、他の誰かが犠牲になる結果を生むかもしれないからな。」


「ああ、そうだな……。」



 一旦、議論を打ち切る。ここはまさしく敵陣の真っ只中だ。いつまでも考えていたら、魔王が付け入る隙を与えてしまう。気を引き締めないと……と思っていたら、一枚の紙切れが目の前に落ちてきた。例の魔王の奸計だろう。拾って内容を確認してみた。



『どうやらお悩みのようですね? ですが、安心して下さい! 私はちゃんと見ていますよ! アナタのお悩みサクッと解決しちゃいますよ!』


「ハハ、魔王め、早速俺の痛い所を突いてきやがった!」



 そう口にした瞬間、目の前の光景が白と黒のつぶつぶが無数に存在する光景に切り替わった。言い換えれば、砂嵐の中に入った見たな感じだ。光景と言うよりも目がおかしくなってそれしか見えないみたいな感じでもある。何が起きたのかはハッキリしないが、魔王が何かやらかしたことだけはわかる。しばらくすると光景が変わった。その場所は以外にも屋外だった。



「何だここは?」



 屋外……しかも、塔の外側とよく似た草原が広がる平坦な土地だった。周囲を見渡せば、少し離れた所に塔があるのが見える。羊の巨塔とは外見は違うが、果てしなく高い塔だ。てっぺんがどこまで続いているのかさっぱりわからない。空高く雲でさえ貫き聳えている。まるで天から塔が生えているみたいだ。



「というか……みんなはいないのか? 俺だけがこの場所に転送されてきた?」



 あの紙切れを読んだのは俺だけ。読んでしまった者だけに現れる効果なのかもしれない。と考えれば、街中に現れた紙切れを見た後、この塔に侵入すれば何らかの罠が発動する仕掛けになっていたのかもしれない。もしかしたら、ティンロンやプリメーラの身にも同じ様な現象が発生しているのかもしれない!


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