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第24話 解かれた理由


「やあ、諸君! 良く集まってくれた。」



 R学長が対策本部に現れ、集合した人々に労いの言葉をかけた。集まっているのは私達を含めて十数人。すでに見知った人達ばかり。グランツァ君や力士さん、ラヴァン先生、トープス先生、そしてフォグナーさんまでいた。



「諸君も知っての通り、再び学院に災いが巻き起こった。悪名高いD・L・Cが蘇ってしまったのだ。是非とも諸君の力を借りたい。」



 学長の願いにみんな賛同している。ここに来たということはある程度覚悟が決まっているはず。ただ事情を聞きに来るだけの人は多分いないはず。声がかかったのも、それだけの能力、実績があるはずだから。



「しかし、どうしてなんでしょう? 前学長が施した封印ならば簡単には解けないはず。何故、今のようなタイミングで彼らが解き放たれたのですか?」



 グランツァ君が率直な疑問を学長にぶつけた。今回の事件に関わるのは承諾済みだからこそ、彼も積極的に詳細を知りたいんだと思う。私も同じ疑問を考えていた。



「うむ。皆も同じ疑問が頭をよぎったと思う。用意周到なあの男だ。当然、ミスなどするはずがない。あったとすれば死の間際だけであったろう。」



 学長は私に目配せをしてきた。理由は多分、このメンバーの中で、実際に前学長が命を落とす様を目の当たりにしたからだと思う。あの出来事がほぼ唯一の彼の失敗だった。そういう確信を与えるぐらい、日常的にミスを見せていなかった人なんだろう。付き合いの長いR学長はそう感じているんだと思う。



「今回の事件が起きたのは偶然ではない。必然だったのでは、と思う。これはあの男が仕組んだ最後の罠なのだろうと私は考えている。」


「罠? 前学長が仕組んだ物だと言うのですか?」


「ウム。あの男は自らの死をトリガーにした罠を仕込んでいた。本人が何らかの理由で倒れたとき、学院に災いが降りかかるようにしていたのだろう。往生際の悪い男だよ、全く。」



 それなら封印が解けたのも納得がいきそう。封印はたいていの場合、かけた本人でなければ解除は難しい。後から前学長の封印を解くにはそれ以上の実力を持った人でなければいけないはず。事実上、彼以上の魔術師はいないはずなので、本人が解けるように細工していたと考える方が自然だと思う。



「よりにもよって魔神の迷宮に立てこもった。あれは古代の戦役で魔族側が建造した迷宮だ。戦役の末期、要塞化していた迷宮に、階層ごとで魔神を封じたのだ。その最奥には破滅の魔神が封印されていると聞く。」


「それほど古い迷宮なのですか?」


「左様。あの迷宮は秘密裏に監視を続けてきた。この学院の前身とも言える王立アカデミーが設立されたのは、あの迷宮を監視する為だったと言われている。一級の魔術師が集い、後継者を育成するための機関でもあったのだ。」


「その様な由来があったのですね……。」



 グランツァ君だけでなく、私も含めてほとんどの人がこの話を知って驚いている。迷宮の存在すら今回の事件を機に知った人も多いはず。知っていたのはトープス先生やフォグナーさんくらいだと思う。



「件の首謀者達は要求に応じなければ、それの封印を解くと脅迫してきているのですね?」


「ウム。通常ならば最奥に到達するだけでも至難の業とも言えるが、彼奴らとて相応に悪名高い。何しろ、あの男、フェルディナンドが認めた実力者ばかりなのだからな。」


「D・L・Cという連中の実力はそれほどの物なのですか!」


「ある意味、あの男の弟子筋だ。それだけでも特筆すべきだというのに、彼奴らはあの男に反旗を翻した。あの男でも手を焼く連中だよ。神を名乗るほどの男が殺害せずに封印に留めた理由がそれだ。奴とて倒せなかった実力者ばかりなのだよ。」



 あえて封印したのではなく、彼らを封印するしかなかった? 私は相手が弟子だったから温情をかけたのかもしれないとも思ったけれど、ただ倒せなかったからなのかな? あの人は冷酷な人だったけれど、時折、人間らしさを見せていた。本当は熱い心を持っていたのだと、ロアとの戦いの中で垣間見た。でも、本当のところはわからない。本人達の事情を聞いてみるまでは。



「彼らや迷宮の事も気になりますが、彼らの要求してきている“賢者の石”とは如何なる物なのですか?」



 今度はラヴァン先生から質問が出た。教員である彼でさえ知らない物、“賢者の石”とは一体……?



「それは……学院最大の禁忌ともいえる存在だ。皆も初めて耳にしたはずだ。それもそのはず。学院では学長と一部の人間のみが知り得る情報だ。極秘中の極秘事項なのだ。」


「まさか、彼らはこの情報を晒すことによって混乱をもたらそうとしているのでは……?」


「そうであろうな。知り得ぬ情報をもたらすことにより新たな混乱を起こし、彼ら自身だけではなく、他にも注意を向けさせる目的があると見ていいだろう。」


「只の石ではないと?」


「あれは無限の心臓。不老不死とも関係がある。あれはあの男の研究の成果の結晶ともいえる物質なのだよ。」



 賢者の石……。極秘扱いの謎の魔道器。それをD・L・Cが求める理由とは一体? もしかしたら彼らもかつて研究に関わっていたのかも?

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