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第232話 謎の食材、謎の人物、謎の……!?


「しっかし、色んな人がいるなぁ。」



 俺はエルと会場内を歩き回りつつ、様々な場所で料理を物色していた。割と色んな料理が食べられて嬉しい。参加している人々は種族、国籍、地域も様々なため多種多様な物が用意されている。


 この国でよく見かける塩漬け肉の料理とか、豪快な塊肉焼いたようなヤツとかもやたらクオリティが高くておいしいのだ。いい料理人を雇ったのだろう。



「ねえねえ、知ってる? イースト・ウッドの冒険者ギルドのギルド長さんも来てたよ。あなたが冒険者ライセンスをとるときにお世話になった方……。」


「え? あの人も来てんの? 懐かしいな! ということは例の話も……、」


「ダメでしょう。あの話はこういう場には向いてないから! それにかわいそうでしょ。」



 まあ、あのギルド長といえば例の若い頃の話、恐怖のあまり〇〇❍を漏らした話で有名である。といかそれしか印象に残っていない。ここに呼ばれたのもお下品ネタ話要員として呼ばれたんではないかとういう疑いもある。サヨちゃんもこの会場にいることだしな。



「ねえ、アレってフェイロンさんのところが提供してくれた料理かな? あなたの祖国の料理があるみたいよ。」



 エルが指差したテーブルには俺には馴染み深い料理が並んでいた。山岳地方の激辛料理とか、それとは対象的な淡白な味の肉・魚料理が特徴の南方料理とか、それ以外にもいっぱいある。見たことないようなのもある。



「おお! アレな! ”龍遊迴”提供の本格料理だな。料理人まで連れてくるほどこだわってたみたいだな。さっき少しだけ食べたけどうまかったな!」



 ミスター珍が実は戟覇の関係者だったことを後から知らされた。なんか梁山泊を資金面で支えるために設立された商会があるという話は聞いたことがあったが、海外にまで手を伸ばしているとは知らなかった。


 今回は珍のお礼という面もあったが、俺らに迷惑をかけたという理由で、シャンリンが口利きをして更に豪華な物を出してくれることになった。おかげでチラホラと滅多に見ない高級食材がテーブルに並んでいる。ツバメの巣とかライチとか、それ、国を傾かせるヤツやないかい、というツッコミを入れたくなるほどだった。



「こ、コレは何かしら? 黒い……卵?」


「ああ、それか。それはピータンってヤツだよ。」



 エルは初めて見る不気味な物体に戦々恐々としている。まるで、コレ食べていいものなの?とでも言いたげな感じだ。たしかに黒いし、まわりに黒く透き通った物体がまとわり付いているから不気味さを更に加速させている。 



「ぴーたん? なんだか可愛らしい名前ね? コレは何から作られたものなの?」


「見た目通り卵だよ。アヒルの卵。でも作り方を知ったらビックリするぜ?」


「ど、どうやって作るの?」


「なんと……泥の中に埋めるんだ! 正確には灰とか炭とかを混ぜた泥を塗って瓶とかに入れて熟成させるんだ。」


「えぇ……。埋めるの? 泥の中に?」



 確かに前代未聞の調理法だろうな。誰が埋めるなんていう選択肢を選ぶというのか? それ、食材を捨ててるようなものじゃないか、と俺も思う。でもまあ発端も、埋めて保存したはいいがそのまま忘れ、しばらく経って思い出して掘り起こして食べてみたら、熟成が進んでいて美味しかったから定番の食べ物になったらしいし。



「でも、おいしいの、これ?」


「おいしいよ〜! 食べてご覧よ、ホレホレ!」


「うわっ!? ちょ、ちょっと、心の準備が……、」



 やっぱり初見の反応からも予測できたが、エルはこのピータンを拒絶したいようだ。やっぱ黒いし、不気味だし、さっきの作り方の説明まで聞いちゃったから、余計食欲は失せてると思う。それでも食べさせたい。絶対にクセになるから!



「私もお一つ頂いてもよろしいですかな?」


「ん? あ、どうぞ、どうぞ!」



 俺達がピータンのことで攻防を繰り広げていると、中年の聖職者らしき男性がピータンを取りに来ていた。ちょいと邪魔をしてしまったことにお詫びしつつ、場所を明け渡した。でも、誰だろう? 教団関係者かな? ジュリアやガンツとは話していたところは見たので関係者なのは間違いないが、今回、法王庁関係者は抜きなんじゃなかったっけ?



「うむ。噂には聞いておりましたが、大変美味なモノですな。酒と共に召しあがればさらに食が進みましょう。」


「ああ、たしかに。酒のつまみとしては定番っすね。俺は酒を飲みませんけど。」


「ハハ、私も聖職者ですので飲むわけにはいかないののですが、こういう物を食べるとついのみたくなってしまいますな。」



 どうやらちゃんとした聖職者のようだ。そして見るからに名のある人間みたいなオーラを醸し出している。纏ってる気配が只者じゃない。なんだか数多くの修羅場を潜った感を感じる。でも聖職者だろ? なにか不似合いな気配のような気がするが……。



「あなたが勇者殿ですね? お会いできて光栄です。私は法王庁に務める聖職者、司教のレオポルド・ダ・ヴィッチと申します。」


「司教さんなんですか? これはどうも。こちらこそお会いできて光栄です。」



 司教さんと握手をかわす。司教って言えば、たしか地区を総括する役職の聖職者なんじゃなかったっけ? 他の職業で言えばある意味、ギルド長とか支部長、支店長みたいなもん? 結構なエライサンじゃないか。



「私はこの街を含めた周辺地域の統括をしているものです。ジュリア殿がご成婚なされたということでご挨拶に伺ったのです。ジュリア殿の母上とは面識がありましてな。」


「は、はあ。やっぱジュリアの知り合いなんですね。」



 会話上では納得しつつも、俺はこの人の顔が気になっていた。金髪をオールバックにまとめ、髭も完全に剃った状態で、清潔感を醸し出している。こういう上品な顔立ちには何か見覚えというか何か妙な既視感を覚えた。前にどこか出会ったことがある? でもあの人とは年齢が違うしな……。



「前にどこかで会いましたっけ?」


「いえ、今回が初めてのはずですが? 他人の空似で御座いましょう。」



 俺が不思議がっていると、なにか空からヒラヒラした物が舞い降りてきた。地面に落ちたそれを見てみると、それは文字の書かれた紙切れだった。正体を確かめるため、それを手にとって内容を確認した……。



《レディース、アーンド、ジェントルメン! おめでたいようで何よりです! せっかくなので私からも盛大なプレゼント、アトラクション、ハプニングをご用意させてもらいました! たっぷりとお楽しみあれ!》


(ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!!!!!!!!!!!)



 大きな地鳴り、地響きが地面を揺らす! 当然のことながら会場は大パニックなった。いや、ここだけじゃない。街全体を揺るがす事態が発生したのだ! 揺れだけじゃない、街の外側に見える風景が一変しているのだ! 今まで存在していなかったものがそびえている! 巨大な塔だ!



「何だアレは!?」



 周囲も同じように驚愕の声を上げている。そりゃそうだ。あんな建物がいきなり現れたら誰だって驚く! ありえない事が起きたんだから! でも……一人だけそういう反応を示していない人物がいることに気付いた。さっきまで話していた司教さんだ。冷静といか、何か余裕の笑みを浮かべてさえいるような……。

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