第230話 女子トーーーク!!
「サヨさん、そういえば、今回はどうしてそんな姿になったんですか?」
「そうだよ! びっくりした! いきなり成長してたから、ウチもビックリした。」
私達は女性だけで集まり主催者のジュリアさんを囲んで女子会のような事をしていた。さすがに今回知り合ったばかりの子たちは集まっていないけれど、大きな盛り上がりを見せていた。
「うむ? これか? 妾も父上の後を継いで立場的に威厳がないとよくないと思ってのう。いつまでも幼女の姿で人に甘えておるわけにもいかなくなったのでな。淑女の姿を使うことにしたのじゃ。」
「でも、中身は大して変わってないんじゃない? 見た目がエロい姉さんになっただけで?」
「相変わらず口の減らぬ奴じゃのう、そなたは。中身もちゃんと成長しておるわい。それだけ竜帝としての執務は大変なんじゃぞ。」
彼女は古竜族を代表する竜帝と呼ばれる伝説の存在。多くの人々には存在が伏せられているため、伝説やおとぎ話の中だけで語られている。はるか古代には彼らが作った文明が栄えていたとも言われている。普段の仕事も大変なんだろうけれど、暴かれてしまったという里の再建と移転もあっただろうから、大変だったと思う。
「それにな、妾は自らの技の鍛錬も怠ってはいなかった。流派梁山泊、あやつらの培った技術を魔術に応用することを考えてみたのじゃ。」
「魔術に応用? 一体どんな事を?」
「ふふ、魔術の体系に武術の概念を盛り込んでみたんじゃ。ある意味では6つ目の”覇”とも呼べる存在とも言えるのう。いずれは”八相撃”も再現できるはずじゃ。いずれ、機会があれば見せてやろう。」
魔術に武術の概念を取り入れるだなんて考えてもみなかった発想だわ。逆だと精神集中の方法や闘気のコントロール方法などが考えられるけれど、逆だとどうなるんだろう? かつて邪竜と戦い窮地に陥ったときに、戦技一❍八計の技法を応用したという話をしていたけれど、それの延長線上の事なのかもしれない。
「果たしてその様な機会があるかどうか……。つい先程も鬼に対して使い損ねたばかりじゃ。あの鬼め、意外と根性なしじゃったのは想定外じゃったわ。」
あくまで鬼を引かせるための脅しだと思っていた。でも、鬼はあっさりと負けを認め、その場を去っていった。例え傷付き命の危険があったとしても鬼気迫る勢いで立ち向かって来るとおもっていたけど、あの時の鬼はその鬼迫がなかった。まるで毒気を抜かれたみたいになっていた。
「あれは脅しじゃなかったんですか? でも、使わないほうが平和だったと思うのでそれで良かったと思います。それだけ、ロアが鬼を消耗させていたということですから。」
「まあ、そうかもしれんのう。あやつの一撃が鬼の気迫を削いでしまったのは間違いなかろう。あやつの活人の奥義も進歩したものだとしておこうか。」
相手の命を奪うこと無く、戦いの決着をつけてしまう活人の奥義。彼の持つ慈悲の精神が辿り着いた究極の技だ。今回は鬼の暗黒の気迫を削ぎ落として、本人すらも想定していなかった”逃げる”という選択を与えるまでに至った。
「ウン、まあ、賢者さんまで進歩してらっしゃるのはよく分った! ところでアンタ自身はどうなんだい、エルちゃん?」
「妾も気になるのう。そなた、あやつとの関係は進展しておるのかえ?」
突如、ジュリアさんが話の方向転換をして、その矛先を私の所に! 今回の集まりの趣旨がジュリアさんの結婚が発端となっているだけに、そういう話題は避けられなかったみたい……。どうしよう……。
「え、と、まあ、彼とは仲良くしていますよ、あはは……。」
「いや、仲良くするのは当然じゃない? で? いつ、式を上げるの? もう、なんかしちゃってるのも同然みたいな雰囲気になってるけどさ。」
「それはちょっと、色々と問題がありますから、私の場合は特に……。」
「問題じゃと? そんなのものは気にせんでも良い。ひっそりとプライベートで仲間内で済ませればよいのじゃ。妾が取り仕切って場を設けてやってもよいのじゃぞ?」
困ったな……。そんな事を言われても困ってしまう。私としては式を挙げたいけれど、表立ってそういう事をしていないのは、彼に迷惑をかけてしまうからだと思っているので、実行していないだけ。今でもたたでさえ影響があるのに、本当にそうしてしまったらと思うと……。もう少し落ち着いてからの方がいいような気がする。
「別にさ、式は挙げなくても、子供が欲しいとか思ったりしないの?」
「うう……、それはもっと無理ですよぅ。色々危険が尽きない旅をしているのでそこまではちょっと……。」
「まあ、それは私達夫婦にもいえることだし、エドんとこにも言える事だけどね。」
「さり気なく、私のところにまで飛び火させようとするのは止めてくださいまし。」
「あーら、ごめんあそばせ。いやあ、もっと長いことそのままになっているカップルの事をおもいだしましたもんでしてねぇ?」
「あなたにその様な心配をされる筋合いはありません!」
まさか子供の話まで振られるとは思っていなかった……。でも、それはご本人にも言える話だったので、それ以上追求はされずに済んだ。でも話はあらぬ方向へ飛び火し、話題の火種になりつつあった。話は逸れたけれど、なんだか罪悪感を感じてしまう……。