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第228話 正直、シンドイ!


「エラい久しぶりやな? 儲かりまっか?」


「いやぁ、ボチボチっすよ。相変わらず、強敵ばっかりが目の前に現れるんで……。」


「ほなら、儲かっとるんやないか。完売御礼、商売繁盛、大儲けやがな。」


「う〜ん……。」



 ジュリアの披露宴パーティーは始まった。俺らの登場以降も様々な招待客が続々と現れ、しばらくご無沙汰になっていた人たちとの再会を果たすことになった。サヨちゃんもその一人だったが、今目の前にいるゲンコツ社長もそうである。ダンジョン攻略以降の顔合わせだ。



「シャッチョさんは大丈夫なんすか? タニシがいなくなってだいぶ経つけど、仕事が忙しいんじゃないの?」


「そんなんは大丈夫や。アイツは別におってもおらんでも同じようなもんや。人手が増えることのメリットと同じくらいトラブル起こしとったんやで、アイツは。せやから、外で色々経験させたった方がええと思たさかいにアンタに同行させたんや。」


「ハハ、そういう理由だったんすね。まあ、確かに旅してる間に商売の事とか勉強したり、実際に出店したりして、挑戦するようになったみたいだけど……だいたい失敗しちゃってるな……。」


「かまへん、かまへん。若いんやさかい、失敗はいっぱいしといた方がええねん。それにな、あの手のヤツはいっぺん成功したら調子に乗りよんねん。痛い目散々見てから成功するほうが大成するんやで。それはアンタが身にしみてよう知っとるはずや。」


「うう、なんかそういうのバレてたんすね。」


「人のことよう見とったら、それくらいはわかるもんやで。ダンジョンと一緒や。」



 俺の生き方、人生の履歴とかは完全にバレていたようだ。ダンジョンの性質を見定めるのと同じくらいに把握できるものであるらしい。トラップとかの探り方とかトラップの仕掛け方やフロアの間取りの傾向とかをよく見てると観察力が磨かれるのかもしれない。



「そんなん言うてて気付いたけど、アイツがおらへんやんけ? どこで油売ってるんや?」


「アイツはある意味魔王に人質に取られてまして……、今頃、何かしらの拷問を受けているかもしれなんすよ。」


「アイツが人質!? そんなん人質になるようなタマかいな? しかも男やさかい、救出するモチベーションも上がらへんで? 人質て偽った裏切りとかとちゃうやろな?」


「ハハ、そんな事ないっすよ。遊び相手がいなくなって寂しいし。それに裏切るなんてありえるかな?」


「わからへんで? なんか金でも積まれたり、女に誘惑されたら、魔が差すかもしれへんで? いわゆるハニートラップ言うヤツや。」



 魔王がどういう理由でタニシを引き入れたのかはハッキリしていないが、タニシ側にも離れられない理由が出来たのかもしれない。オッチャンが言うのも一理あるかも。タニシは種族問わず可愛い子には目がないので、気に入った娘がいればホイホイ言って付いていく可能性もある。


 魔王側に非魔族の仲間がいることはハッキリしているし、ジムが言うには非戦闘員もいたとのことなので、それが関係してるのかもしれない。全部憶測の域を出ないけど……。



「まあ、トラップにかかってたとしてもやで、女に惚れたっちゅうんなら、大きな一歩やで。アイツ、色恋の一つもしてへんかったしな。成長できるチャンスやで。」


「ハニトラ説があってたらの話だけどね。」



 アイツは他種族の女の子には割と評判はいいが、同じコボルト族の女の子にはモテないと言っていたような気がする。そもそも俺はアイツがコボルト族の女の子と絡んでいる姿を見たことがないのでなんとも言えない。


 他種族にモテるというのもちょっと疑問。ミヤコやプリメーラからぞんざいな扱いを受けているのでそんなふうには見えない。惚れた女の子がいるんだとしたら、よっぽどの人格者なんだろうなぁ。可愛くてなおかつ、いじめてこない様な娘でないと成り立たなそう。



「色恋とか披露宴の話で思い出したけど、アンタはどないやねん?」


「え? いや、それはその……。」


「もう正式に付き合うてんのに、そっから進んでへんのとちゃうか? ワシの耳にはそういう話も届いてるから知ってるんやで?」


「いやぁ、俺らお互いの立場的にどっかに家持って生活するわけにもいかないんで……。」



 まあ、付き合ってたら、普通はジュリアみたいに身を固めるという流れになるはずだよな。だけど俺達は安易にそういう立場をとるわけには行かない。俺は勇者の使命があるし、エルは処刑隊を始めとする法王庁勢力から目をつけられているので定住するという選択をとるのが難しい。



「別に定住する必要はあらへんで? それにアレや、子供とかはどないやねん?」


「ブッ!?」



 ちょっとしたハプニング的な質問に動揺していた俺は、飲み物を飲んで気持ちを落ち着かせようとしたら、盛大に吹いてしまうことになった! ちょ! それは飛躍しすぎ! それは定住よりも大きな困難が伴うから……。エルの方は特に……。



「アンタらやることはやってんねんやろ? その延長線上のことやないかい。そういうのは若いうちにしとかなあかんで。歳食うたら、シンドなるさかいにな。」


「ハハ、それはまた色々落ち着いてからということで……。」



 付き合って、結婚して、家構えたら、次はそれっすよね。でも、正直、戦いながら子育て出来る自信はないな。特に旅しながらだと難易度は跳ね上がる。無理難題過ぎてな。期待されてるのはわかるが。正直、シンドイ……。

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