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第226話 かつて衰退した勢力が勃興し始めている……?


「よく動くね。ゴーレムにしちゃあ動きが速い。もっと鈍重な動きしかできないっていうイメージがあるのにね。噂に聞いていた通りだ。」


「どこでそんな情報を? まだ一部の界隈でしか知られていない話なのに!」



 犬の魔王による攻撃、体躯を超す巨大な黒い棍棒が振るわれるのを躱しつつ、魔王が言う所感を聞く。新型ゴーレムの性能に感心しているようだ。見るのは初めてでも、情報としては知っていたようだ。だけど、その情報源が気になる。あの事件には魔族は関わっていなかったはずなのに。



「オレたちだって、世界の情勢くらいは探るようにしているのさ。人間たちは当然だけど、他の魔王たちの動向も知っていないと出し抜かれるのは必然だからね。」


「クルセイダーズ関連の事を知っているのなら、まだわかる。どうして魔術師勢力の動向まで知っているんだ?」



 彼ら魔王の宿敵はクルセイダーズだから、自らの進退に関わることだし、それらの動向は知っている必要がある。特に僕の所属する黒の部隊、異端審問会に関して知っているというのならわからなくもない。


 しかし、魔術師達、今回の場合は魔術学院のことだが、それを知る必要がどこにあったのだろう? 魔術師協会の人間たちは前魔王戦役以降は魔族の関わる事象には不干渉を決め込んでいるので、魔王たちとはほぼ交わらないはず? それがどうして……?



「アンタはその体を普通に使っているけど、その技術の出所については知らないんだろう? もし、それが学院の古参のゴーレム達が独自に作ったとでも思っているのだとしたら、大きな間違いだよ。」


「しょえっ!? アレは別の所で開発されたって言うんでヤンスか?」



 僕だけでなくタニシさんまで反応するほどの驚くべき言動だった。タルカスさんが独自に開発を進めていたわけではないんだ? 学院を影から支配していたというフェルディナンドが手を貸していたという話もあるけど、彼の残した物からはそういった機材などの痕跡は残っていなかったという。


 あったのは人造のデーモン・コアに関する技術くらいだったらしい。それにしたって大きなスキャンダルに違いないとは思うけど……。



「違うよ。近年、何やら実業家達の間で技術革新を進行させている者達がいるらしんだ。既存の人間たちの勢力や魔族達を出し抜こうとしている、第三勢力の様な連中がね。」


「第三の勢力!? それは一体……!?」


「元は錬金術師達の間で起こったムーブメントが発端だと言われているね。彼らはかつて魔術師たちや教団に匹敵する勢力になりかけたんだけど、異端審問会に潰されたから、一旦は消滅するような形になった。」



 確かに……錬金術が神に弓引く行為だと糾弾されて迫害や処刑が横行したと言う事件があったと言われている。”錬金術狩り”、歴史上ではその様な表現になっている。彼らの技術は魔術とは少し異なり、元素や物質その物の性質を利用する体系で、新たな物質を作り出したり、魔術に似た現象を魔力をほぼ使わずに再現したり出来るのだという。


 その点が教団、当時の法王の逆鱗に触れる形となって駆逐される事に繋がった。現在は復興してきているようだけど、一部の技術体系は魔術師協会に奪われる結果になってしまっている。そういう事もあって糾弾される以前と違い、世間への影響力は決して大きいとは言えない。そんな彼らが力を持ちつつあると?



「ハッキリ言って、学院で起きた事件はあくまで彼らが表舞台に進出するためのデモンストレーションに過ぎないんだ。既に各業界に彼らは侵食し始めている。フェルディナンドだけじゃなく、異端審問会、クルセイダーズにまで既に足掛かりを作っているんだ。いずれ彼らの復讐劇が開始されると思っていたほうがいいよ。」


「くっ、そんな馬鹿な!?」


「信じるか、信じないかはアンタ次第だよ。彼らの技術の恩恵にあやかっているんなら、それがウソじゃないことが他の連中よりは実感しやすいだろ?」



 僕を試すかの様な様子見の攻撃はピタリと止んだ。僕に対して考える時間を与えている様だ。正直、話の信憑性は高いと感じている。かと言って僕一人ではどうにもならない問題なので、帰還後にイグレス隊長と話し合う必要がある。それよりも今は……タニシさんと共にこの場を脱出することを優先しなければ!



「とにかく、僕はタニシさんを救出しないといけない! 魔王であるあなたを倒せなくとも必ずそれは達成してみせる!」


「別に、タニやんを取って食おうって言うわけじゃない。友達にしたいだけさ。そして、タニやんの力を借りたいと思っているから接触を図ったんだよ。」


「それ以前にタニシさんは勇者さんの大切な友達なんだ!」



 相手は魔王、生半可な攻撃は通じない。せめて全力の一撃で逃げるためのキッカケを作るしかない。近くの壁に向かって跳び、それを足場にして全力の横っ飛びの準備を図る。これが今出来る最大の威力の技だ!



「アイシクル・スピン・スクレイバー!!」


「全力の捨て身攻撃か! いいね、真正面から受けて立ってやるよ!」



 両手の氷の爪を前に突き出し横回転をつけながら冷気を全身に纏わせながら、相手へと巨大な氷の矢となって突撃する! これがアイシクル・スピン・スクレイバー! 打撃と氷の魔術を組み合わせたとっておきの技だ!



「うおおおおおおおっ!!!!」


「なんのこれしき!!!!!」



 僕たちは激突した。魔王も宣言通り、真正面から攻撃を受け止めている! これは普通に止めることは困難なはず。受けようとすれば纏った冷気が動きを鈍らせるからだ。これはある意味、我慢勝負だ。相手の体力が尽きるか、僕の体力・魔力が尽きるか。そう簡単に負けるわけにはいかないんだ……。

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